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第35話、お色気おねえさんは探索魔術が得意。※本に限る
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「しっかし戦関連の本だって相当あるじゃんかよ」
自分では探しもせずに書棚を見上げる俺。地道な単純作業は苦手である。
「樹葵ちゃんはまだ玲萌しゃんのために奈楠さんの言うことを聞く気があるかにゃ?」
「おうよ。なんでも言ってくんねえ」
威勢よく答える。髪を結ぶだけとかこんな簡単なことならいくらでも受けて立つ。ま、この髪型で通りを歩けと言われたらつらいけど。
「それじゃあ―― せっかくかわいい猫耳髪型なのに、その言葉遣いじゃ似合わないのにゃ。というわけでいまから語尾に『にゃ』をつけてしゃべるのにゃ!」
「『にゃ』!?」
「奈楠さんとしゃべるときずっと猫語でしゃべってくれたら、資料探し手伝ってやるニャ」
それは嫌かも……
「樹葵、がんばって!」
ひとごとだと思って、玲萌は笑顔で応援しやがる。
「どうしたのにゃ? なにかしゃべるニャ」
ンなこと言ったって――
「こ、ことばが出てこない、ニャ」
とってつけたようなニャに笑いをこらえる玲萌。
「かわいいにゃー! その調子にゃーっ」
「…………」
盛大に沈黙する俺。
「しゃべりたいことがないにゃら、奈楠さんの質問に答えるにゃ」
「はい…… じゃなくて、分かったにゃ」
ぷっと吹き出す玲萌。くそーっ
「樹葵にゃん、初恋はいつにゃ?」
なんだよ樹葵にゃんって…… しかも質問内容おかしいだろ? 助けを求めるように玲萌を見ると、古文書を読んでいるかと思いきや、緊張した面持ちで俺の答えを待ってるし。
俺はしぶしぶ、
「十四歳のときかな、あ。かにゃ」
ぶっきらぼうに答える。
「え、樹葵にゃんっていま十四くらいじゃにゃいの!?」
まじで驚いた顔しやがって。
「俺、あと二ヶ月で十七ですよ? ニャ?」
思わず真顔で答えてニャを忘れたわ……
「へ~。それで初恋のお相手は魔道学院の学生にゃの?」
まだ聞いてくんのかよ。しかししゃべる内容がなくても詰むしな……
「違うにゃ」
しぶしぶ答える俺。「五つか六つ年上のひとだったから、ニャ」
「いまもそのひとのこと、好きにゃの?」
いい加減にしてくれよ、と思って振り返ったら玲萌が謎に真剣なまなざしで凝視してるし……
「えっと半年くらい前までは愛してたんだけど、いまは俺の世界が広がったから視野も――ってこんなこと話す義理ないですにゃ!」
ちょっと猫語に慣れてきたぞ、俺も。
「樹葵にゃん、上達がはやいにゃ! 優秀優秀」
こんなことほめられても全然うれしくないにゃ、じゃねえっ 感染ってる! 怖い!
「じゃあ樹葵にゃん、好きな女の子の系統は?」
「いまは―― かわいくて明るくて元気な子、かにゃ?」
どんなに美人でも能力が高くても、病気質彼女はこっちまで病むことを学んだからな。
「ほかには?」
「ほかって―― 前向きで頭のいいひとかにゃあって、なんでこんなこと言わせるにゃ!」
「きゃぁ樹葵にゃん顔まっ赤! 照れる少年ごちそうにゃあっ 最高にゃーっ!」
「もういいだろ!? いや、いいにゃろ! 玲萌に文献の場所、ちゃんと教えてやってくれよ! てか、くれにゃ!?」
えーい、もうやけくそだぁ!
「樹葵にゃん、涙目になってるにゃ! 奈楠さんがなぐさめてあげるにゃーっ」
爆乳おしつけるにゃあああっ って、またうつってるぅぅうううっ!!
「いにしえの書に宿りし霊たちよ」
俺の頭の上でへーぜんと呪文を唱えだす奈楠さん。まじで? 男の頭に胸押し付けたまま精神統一できるの!?
「我がゆかしきことを教え給え」
奈楠さんが魔力を解放するため両手を天井へ向かって差し出したので、俺はようやく自由の身となった。呪文にしたがって、本棚におさめられた書物がざわっと目を覚ましたような雰囲気がある。
「そはすなわち、この地における土蜘蛛退治に縁ありし言の葉なり」
棚の上の方から一冊の本が勝手に抜けて、ふわふわと浮かびながら奈楠さんの手もとに落ちてきた。
「すげぇ便利な術があるもんだな」
感嘆の言葉をもらす俺に玲萌が、
「奈楠さんは書物を愛しているから、本に宿った霊魂とつながれるのよ。樹葵があの三味線を弾きこなせるようなもんじゃないかしら?」
と説明してくれる。
「この本の中には、確実に土蜘蛛退治関連のことが書いてあるはずにゃ。該当の書物が一冊で良かったニャ」
奈楠さんから『白草國魔獣討伐記』と題された古文書を受け取った玲萌が、俺に向かってうれしそうに笑った。
「ふふっ、樹葵が奮闘してくれたおかげよ。ありがとニャ! なーんちゃって」
玲萌が猫語でしゃべるとかわいい! むしろ二つ結びも玲萌にしてほしかった……
自分では探しもせずに書棚を見上げる俺。地道な単純作業は苦手である。
「樹葵ちゃんはまだ玲萌しゃんのために奈楠さんの言うことを聞く気があるかにゃ?」
「おうよ。なんでも言ってくんねえ」
威勢よく答える。髪を結ぶだけとかこんな簡単なことならいくらでも受けて立つ。ま、この髪型で通りを歩けと言われたらつらいけど。
「それじゃあ―― せっかくかわいい猫耳髪型なのに、その言葉遣いじゃ似合わないのにゃ。というわけでいまから語尾に『にゃ』をつけてしゃべるのにゃ!」
「『にゃ』!?」
「奈楠さんとしゃべるときずっと猫語でしゃべってくれたら、資料探し手伝ってやるニャ」
それは嫌かも……
「樹葵、がんばって!」
ひとごとだと思って、玲萌は笑顔で応援しやがる。
「どうしたのにゃ? なにかしゃべるニャ」
ンなこと言ったって――
「こ、ことばが出てこない、ニャ」
とってつけたようなニャに笑いをこらえる玲萌。
「かわいいにゃー! その調子にゃーっ」
「…………」
盛大に沈黙する俺。
「しゃべりたいことがないにゃら、奈楠さんの質問に答えるにゃ」
「はい…… じゃなくて、分かったにゃ」
ぷっと吹き出す玲萌。くそーっ
「樹葵にゃん、初恋はいつにゃ?」
なんだよ樹葵にゃんって…… しかも質問内容おかしいだろ? 助けを求めるように玲萌を見ると、古文書を読んでいるかと思いきや、緊張した面持ちで俺の答えを待ってるし。
俺はしぶしぶ、
「十四歳のときかな、あ。かにゃ」
ぶっきらぼうに答える。
「え、樹葵にゃんっていま十四くらいじゃにゃいの!?」
まじで驚いた顔しやがって。
「俺、あと二ヶ月で十七ですよ? ニャ?」
思わず真顔で答えてニャを忘れたわ……
「へ~。それで初恋のお相手は魔道学院の学生にゃの?」
まだ聞いてくんのかよ。しかししゃべる内容がなくても詰むしな……
「違うにゃ」
しぶしぶ答える俺。「五つか六つ年上のひとだったから、ニャ」
「いまもそのひとのこと、好きにゃの?」
いい加減にしてくれよ、と思って振り返ったら玲萌が謎に真剣なまなざしで凝視してるし……
「えっと半年くらい前までは愛してたんだけど、いまは俺の世界が広がったから視野も――ってこんなこと話す義理ないですにゃ!」
ちょっと猫語に慣れてきたぞ、俺も。
「樹葵にゃん、上達がはやいにゃ! 優秀優秀」
こんなことほめられても全然うれしくないにゃ、じゃねえっ 感染ってる! 怖い!
「じゃあ樹葵にゃん、好きな女の子の系統は?」
「いまは―― かわいくて明るくて元気な子、かにゃ?」
どんなに美人でも能力が高くても、病気質彼女はこっちまで病むことを学んだからな。
「ほかには?」
「ほかって―― 前向きで頭のいいひとかにゃあって、なんでこんなこと言わせるにゃ!」
「きゃぁ樹葵にゃん顔まっ赤! 照れる少年ごちそうにゃあっ 最高にゃーっ!」
「もういいだろ!? いや、いいにゃろ! 玲萌に文献の場所、ちゃんと教えてやってくれよ! てか、くれにゃ!?」
えーい、もうやけくそだぁ!
「樹葵にゃん、涙目になってるにゃ! 奈楠さんがなぐさめてあげるにゃーっ」
爆乳おしつけるにゃあああっ って、またうつってるぅぅうううっ!!
「いにしえの書に宿りし霊たちよ」
俺の頭の上でへーぜんと呪文を唱えだす奈楠さん。まじで? 男の頭に胸押し付けたまま精神統一できるの!?
「我がゆかしきことを教え給え」
奈楠さんが魔力を解放するため両手を天井へ向かって差し出したので、俺はようやく自由の身となった。呪文にしたがって、本棚におさめられた書物がざわっと目を覚ましたような雰囲気がある。
「そはすなわち、この地における土蜘蛛退治に縁ありし言の葉なり」
棚の上の方から一冊の本が勝手に抜けて、ふわふわと浮かびながら奈楠さんの手もとに落ちてきた。
「すげぇ便利な術があるもんだな」
感嘆の言葉をもらす俺に玲萌が、
「奈楠さんは書物を愛しているから、本に宿った霊魂とつながれるのよ。樹葵があの三味線を弾きこなせるようなもんじゃないかしら?」
と説明してくれる。
「この本の中には、確実に土蜘蛛退治関連のことが書いてあるはずにゃ。該当の書物が一冊で良かったニャ」
奈楠さんから『白草國魔獣討伐記』と題された古文書を受け取った玲萌が、俺に向かってうれしそうに笑った。
「ふふっ、樹葵が奮闘してくれたおかげよ。ありがとニャ! なーんちゃって」
玲萌が猫語でしゃべるとかわいい! むしろ二つ結びも玲萌にしてほしかった……
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