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第2章
第45話 ドワーフの誇り
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目の前には、棟梁達が組み立てた箱状の廃棄施設がある。
箱の側面には中へ入るための扉があり、棟梁達を先頭に俺達は中に入った。
天井の構造がすり鉢状に緩やかに下っているため、どんどん天井が低くなっていく。
ドワーフの背は、おおよそ120センチぐらいか。
俺の身長は170センチ、ミアは160センチぐらいだ。
奥に行くほど屈むだけではキツくなるが、なんとか中央にある袋までたどり着けた。
「ミア様、仕上げをお願いします」
「上に誰もいないですよね?」
ミアは念のため確認する。
一人の棟梁が外に群がっている弟子達に声をかけ、誰もいないことを確認してくれた。
「では、いきますね」
ミアは袋の外側に両手を添えた。
そしてスキル『デフォルメ』を使う。
少しすると袋が淡く光った。
「はい。できました。これで大丈夫だと思いますが、とても危険なので気をつけてくださいね」
「「「「「「おおおおおっ!!」」」」」」
俺達は外に出て、箱の上に移動した。
「おい、命綱を持ってこい」
棟梁が叫ぶと、弟子達が手すりにつながっているロープを持ってきた。
俺達はそれを片手でつかみ、ゆっくりと中央の袋へと近寄る。
袋の中を覗くと、きれいな虹色模様のシャボン玉の膜のようなものができていた。
これは、ミアと出会った頃に作った『収納袋』の失敗品だ。
収納できるけど、取り出せないのだ。
「おおっ、なんと鮮やかな色か」
「綺麗だ。さすがミア様が作ったアーティファクトだ」
ミアのことを口々に褒め称えていたが、俺は火山の火口にいるよりも怖かった。
小さな石を袋の中に入れると、スッと消える。
ミアがアーティファクト化の成功を報告すると、ドワーフ王と棟梁達、そして周りの弟子達や野次馬の歓喜の声があたりに響く。
変化の無いこの街で起きた歓声。
それが呼び子となり、どんどん街中のドワーフが集まってくる。いや、波のように押し寄せる。
まずい。あの波がこの箱に殺到すると、最悪袋に落ちる危険性が……
今こそあの装置の出番だな。
「誰かそこの緊急ボタンを押してくれ!」
俺が緊急ボタンの方へ叫ぶと、近くにいたドワーフがあわててボタンを押す。
布を引きずるような音ともに、袋の口がロープで閉じられる。
おおっ、これなら安全だ。
緊急時の訓練になったな。
俺達は箱の縁まで移動して周りを見渡す。
ドワーフで周囲が埋め尽くされていた。
「おおっ、みんな集まってきておる。ちょうどいいか」
俺は嫌な予感がした。
「ゴンさん、ミアのスキルのことは秘密でお願いします」
「ああ、任せとけ。ちょっとばかり気合い入れてやるだけだ」
ドワーフ王は、一歩前に出て右手を挙げる。
集まった全員の視線がドワーフ王に集まった。
「みんな聞いてくれ! 今はまだ詳しいことは言えぬが、ワシらは新たな技術革新のときを迎えられそうだ。それは、魔道具はおろか、古代人の残したアーティファクトすら超えられる」
それは普段とは違い、威厳のこもった王の声だった。
周辺から音が消え、全員が耳を傾ける。
「ワシらはドワーフだ。職人の血が流れるドワーフ族だ。そのドワーフ族が、誰が造ったかもわからないこの街で暮らせることを誇るのか? ワシらはそんな腑抜けだったのか?」
ドワーフ王の言葉に、拳を強くぎゅっと握る者。顎が震え声を押し殺して泣く者。
誰もが現状を甘んじていたわけではない。
豊かな暮らしの裏で苦汁を嘗め続けていたのだ。
「今日よりワシらは変わる。変わらなければならぬ。その切っ掛けとなる新技術は、今はここにはおらぬククトとマルル。あの二人のマイスターから届けられたものだ!」
すすり泣く音は消えた。
「ワシらは、この新技術を使って誰にも負けないモノを作り出す。ワシらはドワーフ。ワシらこそが最高の職人だ!」
拳に込められる念いが変わる。
「全員準備を始めろ! ワシらはやれるのだ! 世界をひっくり返すぞぉぉぉぉ!」
『おおおおおぉぉぉぉぉぉ!』
割れんばかりの狂喜の声が、ゴンヒルリムの地下空間にこだまする。
その声は身体に伝わり心を揺らす。
そして心に灯がともる。
ドワーフ王によりともされた心の灯は、ドワーフ族を覆っていた暗闇をかき消していく。
……何がちょっとばかり気合いを入れるだ。
俺の目の前には、偉大な王の背中があった。
◇
あのドワーフ王の宣言の後、俺達はなんとかドワーフ王の館まで戻ってきた。
俺は、転送魔法陣の検証と試作品の作成をドワーフ王にお願いする。
ミアの『デフォルメ』スキルで作成した転送魔法陣、まだやり残した検証があるのだ。
細かく話せばいろいろとあるが、一番重要なのはシラカミダンジョンの外でも使えるかだ。
俺は、ミアがアーティファクト化した全ての転送魔法陣の紙をドワーフ王に渡す。
「これを使って、シラカミダンジョンの外でも使えるか検証するのと、魔法陣が消えず持ち運びできるモノを作ればいいんだな。任せとけ! 今のあいつらなら、喜んで協力してくれる」
俺達には時間と物作りの技術が無い。
それをドワーフ族と共同開発することで補うのだ。
何よりも、それをドワーフ王が望んでいる。
「おっと忘れるところだった。タクミとミアよ。廃棄施設の件、褒美は何が良い?」
これはチャンスだ。
この街に来たときから欲しいものがある。
ミアも俺と同じ意見らしく、顔を見ると頷いてくれた。
「壊れたり、使い方がわからない古代文明の道具はありますか? もしあれば、それらを欲しいです」
「ああ、確かにあるぞ。だが、正常に動いている物じゃなくて、使えない物がいいのか?」
「はい。ただしどれにするかは俺達に選ばせてください」
「わかった。タクミとミアに、保管庫への『出入り』と『持ち出し』の自由を褒美として与えよう」
マジか。破格すぎるんですけど!
「ただし、条件がある。タクミが何を考えているかはわかっておる。検証したことは、必ずワシに報告すること。検証の手伝いや製品化するときはワシらに依頼すること。この2つだ」
「その条件で大丈夫です。ありがとうございます。とても助かります」
WinWinの関係成立だな。
あのとき語り合った夢。
その土台の完成が見えてきた。
箱の側面には中へ入るための扉があり、棟梁達を先頭に俺達は中に入った。
天井の構造がすり鉢状に緩やかに下っているため、どんどん天井が低くなっていく。
ドワーフの背は、おおよそ120センチぐらいか。
俺の身長は170センチ、ミアは160センチぐらいだ。
奥に行くほど屈むだけではキツくなるが、なんとか中央にある袋までたどり着けた。
「ミア様、仕上げをお願いします」
「上に誰もいないですよね?」
ミアは念のため確認する。
一人の棟梁が外に群がっている弟子達に声をかけ、誰もいないことを確認してくれた。
「では、いきますね」
ミアは袋の外側に両手を添えた。
そしてスキル『デフォルメ』を使う。
少しすると袋が淡く光った。
「はい。できました。これで大丈夫だと思いますが、とても危険なので気をつけてくださいね」
「「「「「「おおおおおっ!!」」」」」」
俺達は外に出て、箱の上に移動した。
「おい、命綱を持ってこい」
棟梁が叫ぶと、弟子達が手すりにつながっているロープを持ってきた。
俺達はそれを片手でつかみ、ゆっくりと中央の袋へと近寄る。
袋の中を覗くと、きれいな虹色模様のシャボン玉の膜のようなものができていた。
これは、ミアと出会った頃に作った『収納袋』の失敗品だ。
収納できるけど、取り出せないのだ。
「おおっ、なんと鮮やかな色か」
「綺麗だ。さすがミア様が作ったアーティファクトだ」
ミアのことを口々に褒め称えていたが、俺は火山の火口にいるよりも怖かった。
小さな石を袋の中に入れると、スッと消える。
ミアがアーティファクト化の成功を報告すると、ドワーフ王と棟梁達、そして周りの弟子達や野次馬の歓喜の声があたりに響く。
変化の無いこの街で起きた歓声。
それが呼び子となり、どんどん街中のドワーフが集まってくる。いや、波のように押し寄せる。
まずい。あの波がこの箱に殺到すると、最悪袋に落ちる危険性が……
今こそあの装置の出番だな。
「誰かそこの緊急ボタンを押してくれ!」
俺が緊急ボタンの方へ叫ぶと、近くにいたドワーフがあわててボタンを押す。
布を引きずるような音ともに、袋の口がロープで閉じられる。
おおっ、これなら安全だ。
緊急時の訓練になったな。
俺達は箱の縁まで移動して周りを見渡す。
ドワーフで周囲が埋め尽くされていた。
「おおっ、みんな集まってきておる。ちょうどいいか」
俺は嫌な予感がした。
「ゴンさん、ミアのスキルのことは秘密でお願いします」
「ああ、任せとけ。ちょっとばかり気合い入れてやるだけだ」
ドワーフ王は、一歩前に出て右手を挙げる。
集まった全員の視線がドワーフ王に集まった。
「みんな聞いてくれ! 今はまだ詳しいことは言えぬが、ワシらは新たな技術革新のときを迎えられそうだ。それは、魔道具はおろか、古代人の残したアーティファクトすら超えられる」
それは普段とは違い、威厳のこもった王の声だった。
周辺から音が消え、全員が耳を傾ける。
「ワシらはドワーフだ。職人の血が流れるドワーフ族だ。そのドワーフ族が、誰が造ったかもわからないこの街で暮らせることを誇るのか? ワシらはそんな腑抜けだったのか?」
ドワーフ王の言葉に、拳を強くぎゅっと握る者。顎が震え声を押し殺して泣く者。
誰もが現状を甘んじていたわけではない。
豊かな暮らしの裏で苦汁を嘗め続けていたのだ。
「今日よりワシらは変わる。変わらなければならぬ。その切っ掛けとなる新技術は、今はここにはおらぬククトとマルル。あの二人のマイスターから届けられたものだ!」
すすり泣く音は消えた。
「ワシらは、この新技術を使って誰にも負けないモノを作り出す。ワシらはドワーフ。ワシらこそが最高の職人だ!」
拳に込められる念いが変わる。
「全員準備を始めろ! ワシらはやれるのだ! 世界をひっくり返すぞぉぉぉぉ!」
『おおおおおぉぉぉぉぉぉ!』
割れんばかりの狂喜の声が、ゴンヒルリムの地下空間にこだまする。
その声は身体に伝わり心を揺らす。
そして心に灯がともる。
ドワーフ王によりともされた心の灯は、ドワーフ族を覆っていた暗闇をかき消していく。
……何がちょっとばかり気合いを入れるだ。
俺の目の前には、偉大な王の背中があった。
◇
あのドワーフ王の宣言の後、俺達はなんとかドワーフ王の館まで戻ってきた。
俺は、転送魔法陣の検証と試作品の作成をドワーフ王にお願いする。
ミアの『デフォルメ』スキルで作成した転送魔法陣、まだやり残した検証があるのだ。
細かく話せばいろいろとあるが、一番重要なのはシラカミダンジョンの外でも使えるかだ。
俺は、ミアがアーティファクト化した全ての転送魔法陣の紙をドワーフ王に渡す。
「これを使って、シラカミダンジョンの外でも使えるか検証するのと、魔法陣が消えず持ち運びできるモノを作ればいいんだな。任せとけ! 今のあいつらなら、喜んで協力してくれる」
俺達には時間と物作りの技術が無い。
それをドワーフ族と共同開発することで補うのだ。
何よりも、それをドワーフ王が望んでいる。
「おっと忘れるところだった。タクミとミアよ。廃棄施設の件、褒美は何が良い?」
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「はい。ただしどれにするかは俺達に選ばせてください」
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「ただし、条件がある。タクミが何を考えているかはわかっておる。検証したことは、必ずワシに報告すること。検証の手伝いや製品化するときはワシらに依頼すること。この2つだ」
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