『スキルの素』を3つ選べって言うけど、早いもの勝ちで余りモノしか残っていませんでした。※チートスキルを生み出してバカにした奴らを見返します

ヒゲ抜き地蔵

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第2章

第54話 未来への展望

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「この秘密は親しい人にしか話さない」

 アーサーの真剣な表情が、その回答が意味する重さ伝えた。
 ゲイルが判断を仰ぐような表情でカルラを見る。
 
「……あんたを許したわけじゃないけど、信頼はしてあげるわ」
 
「カルラ様が信頼したのだ。私も信頼しよう」

『カルラ、ゲイル。俺もアーサーは信頼できると思う。人族を味方にするためにもアーサーと手を組みたいがいいか?』

『……いいわよ。王女として私怨に囚われるわけにはいかないから』

 そしてゲイルとミアも頷く。

「よしっ、同盟の成立だな。魔族と人族、俺とミアはドワーフ族の大使だ。これはエルフに対抗するための三族同盟だ」

「そうね。たった6人だけど、これ以上頼もしいメンバーもいないわ」

 カルラの言葉にアーサーとメアリーは頭を深く下げる。

「ありがとう。僕達にとってもこの同盟は大きな意味を持つ。今までは他種族と相談したくても術がなかったからね。それにしても、タクミとミアがドワーフ族の大使だったとはびっくりしたよ」

 王の剣、魔族の王女、ドワーフの大使。
 豪華なメンバーだが、まだまだエルフ族の構築した階級社会を壊すのには足りない。
 この輪を広げていかないとな。
 まずは人族をこちら側に引き入れたい。

「アーサーさん、人族からエルフ族を引き離したいんですけど、何か方法はありますか?」

「僕たちのことはアーサーとメアリーと呼んでほしい。これから一緒に戦っていく仲だからね」

「わかったよ。公の席以外ではそうさせてもらう。それでアーサーとメアリーに何か策はある?」

「エルフ族と袂を分かつには、『魔道具の入手先』と『冒険者ギルドの運営』の問題がある。これを解決しないとメルキド王の説得は難しい」

「魔道具については心配いらない。ドワーフ族が魔道具以上の技術開発に成功したから。これからはドワーフ族との取引が主になるはずだ」

 口で言っても信じられないだろうから、俺は伸縮する木のアーティファクトをアーサーとメアリーに見せる。

「こ、これはすごいね。しかも魔石がいらないとは」

「安定供給や長期的な利用方法など試行錯誤することは沢山あるけど、そのうちエルフ族の魔道具に頼らなくても暮らせるようにしたい」

「確かに素晴らしい技術ですが……それだと『罪』が消費されなくなります。あっ、『罪』と言うのはですね……」

「メアリー、大丈夫だ。俺達も『罪』や『瘴気』の話は知っている」

 ドワーフ王から他言無用と言われているので、これ以上のことは話さない。
 
「これは俺の個人的なアイデアだけど、まずは『罪』エネルギーを消費するための魔道具を魔族に作ってもらう。冒険者ギルドで余った魔石は、その魔道具で廃棄する。ただ、魔族の魔道具は魔族しか動かせない。だから魔道具の技術者として魔族をすべての冒険者ギルドで雇ってもらう」

 これは閉鎖的な魔族を外の世界と交流させる狙いもある。
 はっきり言って、魔物に対して魔族はチートだ。
 魔物警備とか魔族が活躍できることは多い。
 種族間でいろいろな心情はあるだろうから、徐々に交流できる機会を増やせればいいと思うのだ。
 
「なるほど、お父様の許可が必要だけど、それなら『罪』の問題は解決できそうね」

「冒険者ギルドの方は、新しく別組織作るのはどうだ? 今までの経験から言わせてもらうと、あの組織は腐りきってる」

「タクミもそう思うかい。僕も同じ考えだ。冒険者ギルドはエルフ族の傭兵集団となっている。特に最近では、王都の冒険者ギルドは動きが怪しい。メルキド王国軍とのいざこざも増えているしね」

 エルフ族が何か企んでいるのか。
 
「怪しい動きって言うのはいつ頃からなの?」

「3ヶ月ぐらい前かな。ちょうどタクミ達の代の異世界人が現れたぐらいだね」
 
「そういえばギブソンから聞いたことがあるわ。お兄様と同じぐらい有望な異世界人が来たって」

「ギブソンって言うのは、僕たちがこの世界に来たとき、よくしてくれた異世界人の先輩だ。今はメルキド王国軍の将軍をしている。そして僕の親友でもある。ちなみに彼は僕達のスキルのことを知っているよ。とても良い奴なんだ。今度紹介しよう」

 俺達と同じタイミングでこの世界に来た異世界人か……あの白い空間にいた誰かってことだよな。

「とりあえず、この先の展望はわかった。時間はかかるかもしれないけど、メルキド王を説得してみるよ」

 俺も交渉が一回で済むとは思っていない。
 伸縮する木のアーティファクトをアーサーに渡した。
 彼なら良いように役立ててくれるだろう。

 その後、『携帯念話機』と『移動式転送魔法陣』もアーサー達に渡した。
 
「まさかこっちの世界で携帯を持てるとは思わなかったよ。それに『移動式転送魔法陣』も素晴らしい。これを街や村に設置できたら、世界は大きく変わるね」

「『携帯念話機』はアーサーとメアリー用だ。メルキド王は、様子を見てから渡すか判断したい。『移動式転送魔法陣』は、最終的に王都メルキドに設置するつもりだけど、しばらくはアーサー達が持っていほしい。万が一のためにね」

「わかった。収納袋に入れておくよ。さてと、僕たちはそろそろ王都に戻るよ。早く王に伝えないとね」

「ここから人族の王都までどのぐらいかかるのだ?」

 ゲイルが質問した。

「メアリーが『鞘』の持ち主を馬にすることで、ここまでは8日で来られたね」

「それでは遅い。魔族と人族の戦争が始まるかもしれん。カルラ様、最寄りの村にドラゴンを2体連れてきています」

「そうね。私達だけじゃなく、あんたにも人族側を止めてもらった方がよさそうね。わかったわ。人族の王都までドラゴンで送るから付いてきなさい」

 こうしてアーサー達も一緒に最寄りの魔族の村まで行くことになった。

 ◇

 ——シラカミダンジョンを出てから、最寄りの村まで2時間ほどで着いた。

 そして、俺達は二手に分かれドラゴンに乗り、最終チェックを行っている。
 俺のいる方は魔都『ゾフ』行き。メンバーはカルラ、ゲイル、ミア、俺。
 もう1つはメルキド王都行き。メンバーはアーサーとメアリーそして魔族の従者だ。

 ここまでにBランク帯の魔物がぞろぞろ出現したが、どれもアーサーの剣から放たれる閃光で瞬殺だった。
 俺は暇だったのでメアリーと話し、スキルについて教えてもらった。

 特定の人を不死身にできるスキル『魔法のさやの加護』は、有効範囲が1000メートルほどらしい。
 これ以上離れてしまうと、鞘の持ち主は解除され不死身じゃなくなる。
 そして、鞘の持ち主は1人だけ。
 つまり、誰かを不死身にしているとき、メアリーは攻撃されると死ぬ可能性がある。
 だから、アーサーとメアリーはいつも一緒に行動していたのだ。

 一見すると無敵に見えるが、仕組みを知ってしまうといろんな攻略方法が思いつく。
 引き離したり、2人同時に攻撃したり。
 この秘密を俺達に話すって、相当な覚悟が必要だったはずだ。
 俺もその覚悟の価値に見合うだけのことはしないとな。

「そっちは準備できたか!?」

「ああ。僕たちは大丈夫だ」

 全員の顔に憂いはなく、目は希望に満ちている。

「ここから先は何かあれば『携帯念話機』で連絡してくれ!」

「ああ、わかった。では、また会えるその日まで!」

 アーサーの声が消えると同時に、2匹のドラゴンは力強く羽ばたき空高く舞い上がる。

 その姿はまるで風を纏い、空を駆け抜けるように美しかった。

  ――第2章 完 ――
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