冒涜的な古の戦い

フェンネル

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正義の狂信者

桜吹雪と雪

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春崎文は車の助手席で寝ていた。
それを横目で見る後輩、多崎紅葉(たさきもみじ)巡査。
文の後輩で格闘術を得意とする。
昔の事件で仲間を撃ったのが原因で銃を持てなくなった。
「・・・また寝てるんですか」
「・・・」
「あなたは昔からそうだ、事件が起きてない見回りの時はいつも寝て、それでも刑事ですか」
「・・・今は刑事じゃない」
「そうでしょうね」
「・・・」
その時、文の携帯がなる。
「ん、もしもし」
『・・・文、窓を閉めてくれ』
「・・・少し待ってくれ」
文は1度電源を切るとメールを紅葉に見せる。
無線を切れ、と。
「・・・ついていません。副総監の指示です」
「・・・いいぞ、なんだ」
『文、今何処にいる』
「少しお待ちを、初台地下駅の入り口を通りすぎた所です」
『それなら少し先にあるトンネルに入れ、そこで車を乗り換えるんだ』
「署長、どうしたんですか。紅葉、そこを右だ、トンネルへ」
『落ち着いて聞いてくれ、副総監が殺された』
「・・・何を言っている、2分ほど前に別れたばかりだぞ」
『私も何がなんだかわからない、先ほど極秘として来たばかりだ。そして、衛生の映像を見ようとした所に既に映像は消されてた』
「・・・」
『さらに悪いことが、犯人はお前だ。春崎文』
「・・・私にメリットがない」
『それは分かってる。とにかく、トンネルで車を乗り換えろ、衛生に補足されてるかもしれん』
「・・・わかりました」
文は電話を切る。
「・・・」
「何があったんですか」
「・・・副総監が何者かに殺され、その犯人が私らしい。そして衛生に補足されてるかも知れないから車を乗り換えろ、と」
「・・・わかりました」
紅葉は元々の目的地とは違うトンネルへ入った。



大学病院の手前に2人は立っていた。
「・・・」
「どうしました?」
「昔の事を思い出してただけだ」
そんな2人の後ろから声がした。
「お嬢!お嬢!」
「なんだよ」
「なんだよはこっちの台詞です!ここに何しに来たんですか!」
「なにって仕事だけど」
「仕事は我々だけでやると旦那からの指示です」
「・・・ギル、モーツァルトの言葉を知っているか?」
「・・・はぁ?」
「モーツァルトは曲を作るとき曲を既に頭にある、と、言ったそうだ。そう、私の作戦も頭に入っている」
「・・・」
ギル、と呼ばれた頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでいる。
「・・・文さん、どうしますか?」
「・・・接触しよう」
文は歩き出すと2人の元にやって来た。
「すみません、私たち警察なんですが、病院になんのようが」
「!」
ギルと呼ばれた男の顔には明らかに動揺が走った。
しかし、一瞬で冷静な顔に戻った。
「えっと、私たちは」
「嘘だ!」
ギルよりも小さな女の子が叫んだ。
「?」
「!」
文は疑問の顔でその少女を、ギルは驚きの顔で少女を見た。
「警察は被害者を殺して今回の面談も断られた!だからここに警察がいるわけないんだよ!」
「・・・えぇ、その通りです。ですが、なぜ、警察でも、上層部の一部の人間しか知らない情報をあなたたちが知っているんですか?」
「!」
明らかに2人に動揺が走る。
「それは・・・」
「なんですか?」
「私たちは探偵です、副総監から直接依頼されその情報を手に入れました」
「そうですか。ならお名前をうかがっても?」
「・・・風見と申します」
「風見さんですね、よろしくお願いします」
文は手を差し出す。
それをギルは差し出された手を渋々握る。
その瞬間文はギルに組み付く。
「ぐ、うぉぉぉぉぉ!」
ギルはこれを力だけで振りほどく。
文は軽く離れる。
「なにしやがる!」
「ボロを出したな」
「!」
ギルは懐から拳銃を取り出す。
その手は少し震えていた。
「セーフティが、下がってない」
「何を、この銃にはセーフティはない!」
「あぁ、その拳銃にはセーフティはない。しかしお前の中にあるセーフティは下がってない。銃を撃つのは、始めてか?」
「ち、近づくな!」
「警察も犯罪者も、始めて撃つときは躊躇する。撃ってもいいのは、覚悟を決めた者だけだ」
「う、動くな」
文はギルの腕を捻り拳銃を奪い取ると組み付いた。
ギルはまたしても力だけで抜け出そうとした。
しかし
「!」
完全に決めが入り足に力が入らずそのまま投げ飛ばされる。
「が、ぁぁ」
「投げは力じゃない、タイミングだ」
ギルは立ち上がろうとしたところを文に顔を蹴られ昏倒した。
「ギル!」
「暴れないで下さい!」
「く!離せ!」
少女は暴れていたが突然おとなしくなった。
そして、組み付いていた紅葉はとっさに離れる。
「これは、凍傷、?」
「紅葉!」
紅葉を確認してから少女を見る。
「お前ら、拝火教は、また、罪もない、私たちを、殺すのか!」
「なんだ、こいつ」
その時、異変に気づく。
(これは、雪?馬鹿な、もう四月の後半だぞ)
先ほどまで桜が舞っていたにも関わらず今は春の後半にも関わらず雪が降っている。
「ぐっ」
少女は踏み込むと文に近づく。
「っ、すまない」
文は拳銃を取りだし少女の足めがけてトリガーを引いた。
しかし、少女の接近は止められない。
文はとっさに少女の蹴りをガードする。
そして、文は足を掴んだまま少女を持ち上げ下に叩きつけようとした。
しかし
「っ!」
文が叩きつける寸前に少女の体が鈍く光り少女が消える。
そして少女の蹴りが文の肩に当たる。
「ぐっ!」
紅葉は少女に飛び蹴りを放つがまたしても消える。
「文さん!」
「大丈夫だ!あっちに集中しろ!」
文は片手で拳銃を構えながら紅葉と背中合わせになる。
「紅葉、狙うなら次だ。タイミングをよく見ていろ」
「はい」
文は車の上に乗っている少女を見つける。
そして躊躇なく頭に3発発砲する。
しかし、またしても消える。
そして文の頭上に出現した。
しかし
「そうはさせません」
紅葉が割って入り少女の動きが少し遅れた。
その瞬間を狙い紅葉の回し蹴りが少女の横腹に命中した。
少女は車にぶつかり動かなくなった。
それと同時に雪も収まり桜が舞い始めた。
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