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エピソード1:デッド・ハイツの日常
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大汗をかきながら、大学からデッド・ハイツまで直帰した和茶は、嶺想寺の待つ管理人室を訪ねた。リィン、リィン、と、管理人室のチャイムを鳴らすと、中からはエプロン姿の嶺想寺が現れた。管理人室の中からは甘い匂いがする。嶺想寺の頬には生クリーム。手にはホイッパー。口はモゴモゴと動いている。喋りにくそうに、嶺想寺が言う。
「ん、おはへり、和茶ふん」
「ただまっす、嶺想寺さん。なーに食ってんですか」
嶺想寺のこういうところにも慣れた。嶺想寺が和茶の口に何かを押し込む。それを噛んでみると、甘酸っぱい味が口の中に広がった。苺、だ。季節外れの苺はさぞかし高かったことだろう。嶺想寺のこの苺は、デッド・ハイツで毎年行っているという、夏のイベントで使われるらしい。和茶はそのイベントの手伝いを頼まれたのだ。いわゆる、試食。
住人たちに振る舞うアイス・スイーツの試作品の試食という美味しい手伝いには、もう一つ美味しい点があった。完成品も食べ放題なのだ。和茶は特別、甘い物が好きというわけではないが、嶺想寺の作る甘い物は外れたことが無い。なので、今回の嶺想寺からのお願いを引き受けたわけだ。和茶が管理人室に上がると、スイーツが並んでいた。
「嶺想寺さん、これ、完成品ですか」
「いや、全部、試作品だけど。だって、試作品を食べてもらいたいんだけどーが、僕からの和茶君へのお願いだったでしょ」
「……俺、これ、全部食うんですか」
「アイスが溶けないうちに、グビッと」
ビールじゃねぇんですよ……。和茶の心の声はそう言っていた。いや、嶺想寺なら和茶が未成年であろうとアルコールの試飲をお願いしてきそうだ。大体、謎が多いのだ、この嶺想寺という大家は。素性を進んで知ろうと思わない理由は、なんか恐ろしいから、という一言に尽きる。怖い物には手を出さない。それが、和茶という男だった。
和茶はとりあえず、片っ端からアイスのスイーツを平らげていった。学食のライスを小盛りにしておいて良かった。アイスが溶けないうちにスイーツを食べ切れたのは奇跡だった。俺の血糖値、爆上がりしてねぇ?和茶は胃袋の辺りをさする。そんな和茶に、嶺想寺が温かいお茶を出してくれた。これで胃が癒えることを願う。
「ん、おはへり、和茶ふん」
「ただまっす、嶺想寺さん。なーに食ってんですか」
嶺想寺のこういうところにも慣れた。嶺想寺が和茶の口に何かを押し込む。それを噛んでみると、甘酸っぱい味が口の中に広がった。苺、だ。季節外れの苺はさぞかし高かったことだろう。嶺想寺のこの苺は、デッド・ハイツで毎年行っているという、夏のイベントで使われるらしい。和茶はそのイベントの手伝いを頼まれたのだ。いわゆる、試食。
住人たちに振る舞うアイス・スイーツの試作品の試食という美味しい手伝いには、もう一つ美味しい点があった。完成品も食べ放題なのだ。和茶は特別、甘い物が好きというわけではないが、嶺想寺の作る甘い物は外れたことが無い。なので、今回の嶺想寺からのお願いを引き受けたわけだ。和茶が管理人室に上がると、スイーツが並んでいた。
「嶺想寺さん、これ、完成品ですか」
「いや、全部、試作品だけど。だって、試作品を食べてもらいたいんだけどーが、僕からの和茶君へのお願いだったでしょ」
「……俺、これ、全部食うんですか」
「アイスが溶けないうちに、グビッと」
ビールじゃねぇんですよ……。和茶の心の声はそう言っていた。いや、嶺想寺なら和茶が未成年であろうとアルコールの試飲をお願いしてきそうだ。大体、謎が多いのだ、この嶺想寺という大家は。素性を進んで知ろうと思わない理由は、なんか恐ろしいから、という一言に尽きる。怖い物には手を出さない。それが、和茶という男だった。
和茶はとりあえず、片っ端からアイスのスイーツを平らげていった。学食のライスを小盛りにしておいて良かった。アイスが溶けないうちにスイーツを食べ切れたのは奇跡だった。俺の血糖値、爆上がりしてねぇ?和茶は胃袋の辺りをさする。そんな和茶に、嶺想寺が温かいお茶を出してくれた。これで胃が癒えることを願う。
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