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第1章 聖なる乙女の学園
第13話 風呂上がりに逮捕される
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「お前たちの実力ならば、魔王ぐらい一蹴できるであろうに」
「いえ、向こうも度重なる失敗で策を講じているはず……。まず間違いなく魔王軍、そして魔王の実力は上がっていることでしょう」
「あやつらに、そんな学習能力はないと思うぞ?」
「ダメです! 常に最悪の事態を想定して動くべきです! 歴代の魔王が何度も散っている以上、今代魔王は己を鍛えに鍛えているはず! というか、聖剣みたいな超強力な武器があるんですよ? それと対になる魔剣が実在してもおかしくないじゃないですか!? 追いつめられた魔王が『ストームブリンガー! おまえのあるじが危ない』とか言い出して、いきなり超強力な魔剣が出現する可能性だって……!」
「あるわけなかろう」
ラオカは呆れた表情だ。
「学習能力があったら、普通は一度目の失敗であきらめる。いや、それ以前に最初の時点で実力差を考慮するわ。侵略しようなどという発想にはならん。五回も攻めてくる以上、あやつらに深い考えなどあるまい」
「五回……ということは、やはり数年後に?」
デイジーが言った。彼女は湯に浮かぶ私の胸に顔をうずめ、乳房をもてあそぶようにさわっていた。
「仲いいのぅ、お主ら。オスがおらずとも困らなくて何よりだな」
「殿方も大好きですよ。私もお嬢さまも」
「ほう? まぁ人のメスなら当然か」
「それより、魔王の話です。ねぇお嬢さま?」
デイジーは私の肩に頭を載せて、首に抱きついてきた。私たちはラオカに目を向けた。
「詳しくは知らぬ。だが、近いうちに侵攻してくるのではないか? 少し前、メソン大陸にある竜の巣から来訪者があってな」
「竜ですか?」
「むろん」
私の言葉にラオカはうなずいた。
「そやつから『魔王が攻めてくるので、撃退するのを手伝ってほしい』と頼まれてな。断ったが」
「えぇー……倒してくれないんですか?」
「露骨にがっかりするな。というか、お主らで倒せばよかろうに」
ラオカは呆れたように私を見た。
「まぁ竜たちからしても、魔獣や魔物が繁殖するのは迷惑なのだろうな。奴らが来るたびに魔界から新しい魔獣や魔物がやってきて地上に定着する。生まれて間もない幼竜や、一〇〇年二〇〇年しか生きとらん子竜にとってはそれなりに脅威だ。竜の巣の主としてはいい加減、見過ごせんのだろう」
「ラオカさまは気になさらないのですか?」
「我にとってはどうでもよい話だ」
ラオカは興味なさそうに息をついた。
「幸か不幸か、子はおらぬ。それに、魔物や魔獣風情に敗れるような軟弱な子ならば死んで当然だ」
「谷底に突き落として、這い上がってきた子だけ育てる方針なんですね」
くっく、とラオカは喉の奥を鳴らした。
「実際はどうかわからぬがな。――昔、言われたことがある。勇ましいことを口にしているやつに限って、いざ子が生まれると蝶よ花よと育てたがる、と」
「では、今すぐ子を……」
「あいにくと相手がおらぬ。というか、そこまで我に魔王を消してほしいのか」
「もちろんです」
「本当に変わった女だな。自分でやったほうが手っ取り早いであろうに、わざわざ回り道しようとするとは」
ラオカは物珍しげに私を見た。
「魔王を倒す気はないが、避難所としてここに来るのならかまわぬぞ? 魔王も我に喧嘩を売るほど愚かではなかろうし」
「もし喧嘩を売ってきたら?」
「買うに決まっとろう。今回のようにな」
ラオカは白い歯を見せて笑い、私の頭をなでた。デイジーが不満そうな目を向けると、くすくすと笑ってラオカは手をどけた。それから彼女は屋敷をじっと見た。
「どうされました?」
「客だ。珍しいこともあるものだ」
風呂から上がると、私たちは風魔法でさっと体についた水滴を飛ばし、髪を乾かした。デイジーの髪からいい匂いがした。
私の服は荷物と一緒に消し飛んでいたので、ラオカのドレスを借りた。
そうこうするうちに来客がやってきた。騎士団だった。彼女たちは花園を取り囲み、深刻な表情を浮かべて何事か話し合っていた。
私たちが姿を現すと、顔をこわばらせて後じさる。
すぐに隊長格とおぼしい女性が出てきて、私の前に立った。彼女は、ゆっくりと深呼吸をした。それから、一言一言を噛みしめるようにこう言った。
「プリムローズ・フリティラリア公爵令嬢とお見受けします。今すぐ王宮に来てください。事情聴取を行ないます。その後、場合によっては裁判になりますので……」
こうして、私とデイジーは王宮に連行された。ラオカも面白そうだからとついて来た。
「いえ、向こうも度重なる失敗で策を講じているはず……。まず間違いなく魔王軍、そして魔王の実力は上がっていることでしょう」
「あやつらに、そんな学習能力はないと思うぞ?」
「ダメです! 常に最悪の事態を想定して動くべきです! 歴代の魔王が何度も散っている以上、今代魔王は己を鍛えに鍛えているはず! というか、聖剣みたいな超強力な武器があるんですよ? それと対になる魔剣が実在してもおかしくないじゃないですか!? 追いつめられた魔王が『ストームブリンガー! おまえのあるじが危ない』とか言い出して、いきなり超強力な魔剣が出現する可能性だって……!」
「あるわけなかろう」
ラオカは呆れた表情だ。
「学習能力があったら、普通は一度目の失敗であきらめる。いや、それ以前に最初の時点で実力差を考慮するわ。侵略しようなどという発想にはならん。五回も攻めてくる以上、あやつらに深い考えなどあるまい」
「五回……ということは、やはり数年後に?」
デイジーが言った。彼女は湯に浮かぶ私の胸に顔をうずめ、乳房をもてあそぶようにさわっていた。
「仲いいのぅ、お主ら。オスがおらずとも困らなくて何よりだな」
「殿方も大好きですよ。私もお嬢さまも」
「ほう? まぁ人のメスなら当然か」
「それより、魔王の話です。ねぇお嬢さま?」
デイジーは私の肩に頭を載せて、首に抱きついてきた。私たちはラオカに目を向けた。
「詳しくは知らぬ。だが、近いうちに侵攻してくるのではないか? 少し前、メソン大陸にある竜の巣から来訪者があってな」
「竜ですか?」
「むろん」
私の言葉にラオカはうなずいた。
「そやつから『魔王が攻めてくるので、撃退するのを手伝ってほしい』と頼まれてな。断ったが」
「えぇー……倒してくれないんですか?」
「露骨にがっかりするな。というか、お主らで倒せばよかろうに」
ラオカは呆れたように私を見た。
「まぁ竜たちからしても、魔獣や魔物が繁殖するのは迷惑なのだろうな。奴らが来るたびに魔界から新しい魔獣や魔物がやってきて地上に定着する。生まれて間もない幼竜や、一〇〇年二〇〇年しか生きとらん子竜にとってはそれなりに脅威だ。竜の巣の主としてはいい加減、見過ごせんのだろう」
「ラオカさまは気になさらないのですか?」
「我にとってはどうでもよい話だ」
ラオカは興味なさそうに息をついた。
「幸か不幸か、子はおらぬ。それに、魔物や魔獣風情に敗れるような軟弱な子ならば死んで当然だ」
「谷底に突き落として、這い上がってきた子だけ育てる方針なんですね」
くっく、とラオカは喉の奥を鳴らした。
「実際はどうかわからぬがな。――昔、言われたことがある。勇ましいことを口にしているやつに限って、いざ子が生まれると蝶よ花よと育てたがる、と」
「では、今すぐ子を……」
「あいにくと相手がおらぬ。というか、そこまで我に魔王を消してほしいのか」
「もちろんです」
「本当に変わった女だな。自分でやったほうが手っ取り早いであろうに、わざわざ回り道しようとするとは」
ラオカは物珍しげに私を見た。
「魔王を倒す気はないが、避難所としてここに来るのならかまわぬぞ? 魔王も我に喧嘩を売るほど愚かではなかろうし」
「もし喧嘩を売ってきたら?」
「買うに決まっとろう。今回のようにな」
ラオカは白い歯を見せて笑い、私の頭をなでた。デイジーが不満そうな目を向けると、くすくすと笑ってラオカは手をどけた。それから彼女は屋敷をじっと見た。
「どうされました?」
「客だ。珍しいこともあるものだ」
風呂から上がると、私たちは風魔法でさっと体についた水滴を飛ばし、髪を乾かした。デイジーの髪からいい匂いがした。
私の服は荷物と一緒に消し飛んでいたので、ラオカのドレスを借りた。
そうこうするうちに来客がやってきた。騎士団だった。彼女たちは花園を取り囲み、深刻な表情を浮かべて何事か話し合っていた。
私たちが姿を現すと、顔をこわばらせて後じさる。
すぐに隊長格とおぼしい女性が出てきて、私の前に立った。彼女は、ゆっくりと深呼吸をした。それから、一言一言を噛みしめるようにこう言った。
「プリムローズ・フリティラリア公爵令嬢とお見受けします。今すぐ王宮に来てください。事情聴取を行ないます。その後、場合によっては裁判になりますので……」
こうして、私とデイジーは王宮に連行された。ラオカも面白そうだからとついて来た。
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