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第2章 聖なる乙女の騎士
第10話 人工進化した怪物たち
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「妊娠状態でも普通に戦えるのがまずおかしくねーかな!? いやそれ以前に妊娠期間が三ヶ月とか、そもそも生理自体なかったりとか生物として色々不自然すぎだろ!?」
「そこに疑問持つんですか? 犬猫なんて二ヶ月で出産ですよ? 交尾排卵の生き物だって普通にいますし……まぁ私たちの場合は卵子や精子の製造を自分で完璧にコントロールできるわけですけど。逆に地球人はなんで制御できないんですかね……。せめて着床遅延とか、熊でさえできる機能すらないのさすがにバグでは?」
「言うに事欠いてバグ呼ばわりかよ!?」
「でも実際、地球人ってわりとバグまみれっていうか……魔法が使えないのは――まぁ、百歩譲ってよしとしましょう。でも肉体のあまりの貧弱さは言いわけできないのでは? 前世の『私』とか、腕立て一回もできないほどの脆弱っぷりですよ?」
「それは前世のお前が貧弱すぎただけだろ!?」
「弱いなら強靭な生物として進化していけばいいじゃないですか。魔法がなくても向こうは科学が発展してたんですから。遺伝子改造とか方法あったでしょ?」
「それ倫理に引っかかるやつだろ!?」
「そうは言いますけど、私たちだってそうやって進化してきたじゃないですか。あなたの言う倫理を無視して。使ったのは科学じゃなくて魔法ですけど」
え? とシスルはぽかんと口を開けた。
「気づいてなかったんですか?」
「ど、どういうことだよ!?」
シスルは身を乗り出して、デイジーにつめよった。
「シスルさんだって日常的に何気なく使ってるじゃないですか。美容魔法」
「び……え?」
シスルは呆けた顔をした。猫耳としっぽが固まっている。
「美容魔法は、明らかに人体に作用する魔法です。月単位、年単位で、少しずつ肉体を変化させていく……。おそらく昔の人たちも、魔法で人体をあれこれといじったんじゃないですか。より効率的な生物になるために」
「人工進化したわけだね?」
リリーが口をはさんだ。デイジーがうなずく。
「今みたいに人類が繁栄している時代ならともかく、ほかの生物と生存競争していた太古の時代なら、なりふりかまっていられないはずですよ。より強靭な肉体、より効率的な仲間の増やし方……自分たちが滅びない方法を必死で考え、実践していったはずです」
シスルが自分を指さした。
「その末裔が、あたしたちだってのか?」
「断言はできませんけどね。実は神さまが実在していて、こういう世界になるようデザインしたのかもしれませんし」
デイジーは微苦笑して首を振った。
「どっちにせよ、そうなっているんですから、文句を言ってもしょうがないでしょう? そういうふうにできているんですよ」
「いや、でもさ……」
「まだなにかあるんですか?」
デイジーは呆れた様子だった。シスルは言いわけするように言った。
「その、男女比とか妊娠とか……まぁ、それはそういうものだったとして……この世界のハーレムもおかしくね?」
「というと?」
「いや、だってさ! 女が多いから一夫多妻になるのはわかるぜ!? でもなんか形がおかしいじゃん! 明らかに! 普通、ハーレムっていうと!」
シスルは立ち上がって、棚からペンと紙を取り出した。
自分のカップをどかすと、シスルは紙の真ん中に「男」と書き、そのまわりに「女」という字をいくつも書いた。そして、「男」と「女」をそれぞれ双方向の矢印で結んだ。
「こうだろ!? でもこの世界のハーレムってこうじゃん!」
シスルはさっきと同じように、「男」という文字のまわりに「女」の文字を書いた。そして、今度は「男」だけでなく、「女」同士も双方向の矢印でそれぞれ結んだ。
「大して変わらなくない?」
私の言葉に、シスルは叫んだ。
「ぜんっぜん違うだろうが! こっちは!」
とシスルはペンで最初のハーレムを指した。
「女同士のつながりがないから、男がいなくなったらハーレムじゃなくなるだろ!? でも、こっちのほうはあれじゃん! 男いなくなってもハーレムじゃねぇか! 女同士の時点ですでにハーレム化してるし!」
「効率化の結果ですね」
「どこがぁ!? どのへんがぁ!?」
「グループ分けしたほうが効率的じゃないですか。殿方が少ないんですよ? ばらばらに狙ってたら色々と問題が起きます。仲の悪い人と一緒になってしまったり、そのせいでギスギスしたり、そもそも殿方がいなくなったらグループ自体が消えちゃうじゃないですか」
「そこに疑問持つんですか? 犬猫なんて二ヶ月で出産ですよ? 交尾排卵の生き物だって普通にいますし……まぁ私たちの場合は卵子や精子の製造を自分で完璧にコントロールできるわけですけど。逆に地球人はなんで制御できないんですかね……。せめて着床遅延とか、熊でさえできる機能すらないのさすがにバグでは?」
「言うに事欠いてバグ呼ばわりかよ!?」
「でも実際、地球人ってわりとバグまみれっていうか……魔法が使えないのは――まぁ、百歩譲ってよしとしましょう。でも肉体のあまりの貧弱さは言いわけできないのでは? 前世の『私』とか、腕立て一回もできないほどの脆弱っぷりですよ?」
「それは前世のお前が貧弱すぎただけだろ!?」
「弱いなら強靭な生物として進化していけばいいじゃないですか。魔法がなくても向こうは科学が発展してたんですから。遺伝子改造とか方法あったでしょ?」
「それ倫理に引っかかるやつだろ!?」
「そうは言いますけど、私たちだってそうやって進化してきたじゃないですか。あなたの言う倫理を無視して。使ったのは科学じゃなくて魔法ですけど」
え? とシスルはぽかんと口を開けた。
「気づいてなかったんですか?」
「ど、どういうことだよ!?」
シスルは身を乗り出して、デイジーにつめよった。
「シスルさんだって日常的に何気なく使ってるじゃないですか。美容魔法」
「び……え?」
シスルは呆けた顔をした。猫耳としっぽが固まっている。
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「人工進化したわけだね?」
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「今みたいに人類が繁栄している時代ならともかく、ほかの生物と生存競争していた太古の時代なら、なりふりかまっていられないはずですよ。より強靭な肉体、より効率的な仲間の増やし方……自分たちが滅びない方法を必死で考え、実践していったはずです」
シスルが自分を指さした。
「その末裔が、あたしたちだってのか?」
「断言はできませんけどね。実は神さまが実在していて、こういう世界になるようデザインしたのかもしれませんし」
デイジーは微苦笑して首を振った。
「どっちにせよ、そうなっているんですから、文句を言ってもしょうがないでしょう? そういうふうにできているんですよ」
「いや、でもさ……」
「まだなにかあるんですか?」
デイジーは呆れた様子だった。シスルは言いわけするように言った。
「その、男女比とか妊娠とか……まぁ、それはそういうものだったとして……この世界のハーレムもおかしくね?」
「というと?」
「いや、だってさ! 女が多いから一夫多妻になるのはわかるぜ!? でもなんか形がおかしいじゃん! 明らかに! 普通、ハーレムっていうと!」
シスルは立ち上がって、棚からペンと紙を取り出した。
自分のカップをどかすと、シスルは紙の真ん中に「男」と書き、そのまわりに「女」という字をいくつも書いた。そして、「男」と「女」をそれぞれ双方向の矢印で結んだ。
「こうだろ!? でもこの世界のハーレムってこうじゃん!」
シスルはさっきと同じように、「男」という文字のまわりに「女」の文字を書いた。そして、今度は「男」だけでなく、「女」同士も双方向の矢印でそれぞれ結んだ。
「大して変わらなくない?」
私の言葉に、シスルは叫んだ。
「ぜんっぜん違うだろうが! こっちは!」
とシスルはペンで最初のハーレムを指した。
「女同士のつながりがないから、男がいなくなったらハーレムじゃなくなるだろ!? でも、こっちのほうはあれじゃん! 男いなくなってもハーレムじゃねぇか! 女同士の時点ですでにハーレム化してるし!」
「効率化の結果ですね」
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