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第4章 聖なる乙女の覇者
第3話 地団駄を踏んで、責め立てられる女王さま
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「女王陛下、わたしたちは誰一人として『聖なる乙女の覇者』というゲームのことを知りません。まず、そちらから説明してくれませんか」
女王はリリーの言葉をうまく飲み込めなかったようだ。
不思議そうな顔で首をかしげた。そして、冗談を笑い飛ばすように破顔した。
「おいおい、何を言っているんだ? プリムから聞いていないのか? まさか主人公が知らされていないとはな! プリムもなかなか罪作りな――」
「いえ、彼女が把握しているのは『聖なる乙女の学園』というゲームですよ」
「おいおい、いくら私がモブキャラだからって――」
「いえ、冗談ではなく本当に。ちなみにシスルは『聖なる乙女の騎士』という漫画作品で、デイジーさんは『聖なる乙女の英雄』というRPGだと最初は思っていましたよ」
リリーは淡々と告げた。
「わたしはなんの作品か知らないまま、途中でシスルから漫画だと言われて『そうなのか……』と納得していました」
女王は感情を消した表情で私を見た。私はうなずいた。彼女は、夢かどうか確かめるように自分の頬を引っ張った。それから腕組みをして目を閉じ、考え込む様子を見せた。
彼女はカッと目を見開くと、叫んだ。
「つまり、どういうことだ!?」
「そのままですよ、陛下。複数の作品がまとまったような、奇妙な世界だということです。あるいはこの世界出身の誰かが、それぞれの地球に転生して、ゲームや漫画にしたのかもしれませんね」
リリーは吐息をした。
「で、『聖なる乙女の覇者』というのは、どういうゲームなんですか? 話しぶりからすると、世界を征服する系のストーリーみたいですが」
「いや、ちょっと待ってくれ! もう少し説明してくれ! 圧倒的に情報が足りない!」
女王は混乱した様子だった。なので、私たちは一から説明した。
『学園』『騎士』『英雄』といった作品の内容から、これまでの経緯といったものを一通り。女王は黙って聞いていた。彼女は話が終わると、おもむろに口を開いた。
「じゃあ、なんで迎えに来てくれなかったんだ!? 隠しキャラなんだろう!?」
「面倒なイベントこなさないといけなかったので」
デイジーが答えた。
「それに陛下だけじゃなくて、彼女たちも加入しませんでしたからね」
ウェデリアたちを見ながら、デイジーは言った。
「ゲームの『英雄』と違う点が多々あります。それに現実的に考えて、マーガレット陛下が仲間になる状況でもありませんでしたからね」
「私には一言も言ってくれなかったじゃないか!」
女王は地団駄を踏み、ダリアとアイリスを指さした。
「この二人には地球出身かどうか訊いたんだろう!? なぜ私を無視したんだ!」
「仕方ないでしょう。気軽に会える人じゃないんですから」
デイジーは無慈悲だった。
「それに、気になるなら直接会いに来て確かめればよかったじゃないですか。お嬢さまは陛下のいとこなんですよ? おまけに輝かしい武勲を打ち立てた傑物です。会いに来る口実はいくらでもあったでしょう?」
「そ、それは――! そのとおりだが……!」
女王はいかにも悔しそうだ。
「しかしだな! 私なりにゲームのストーリーを崩さないようにと――!」
「陛下は死ぬんじゃないんですか? 死なないように立ち回っている時点で、すでにストーリーが崩れていると思うんですが」
デイジーは責め立てるように言い募った。
「そもそもゲームどおりなら、ここにいるのは私たちだけじゃなくて、ダリア先生たちも一緒なんですよね? そして、陛下はいないんですよね? なんで陛下が三人を連れ回してるんですか? なによりラオカさまはいなかったんですよね? 私たちに同行しないよう、ちゃんと誘導すべきだったのでは?」
「それだと私が死ぬぅ!」
女王は悲痛に言った。泣きそうだった。というか涙目になっていた。
「私は死にたくなかったんだ! 許してくれ!」
「許しますから、『聖なる乙女の覇者』について説明してください」
「わかった!」
と言い出して、ようやく女王は『覇者』というゲームについて教えてくれた。
「難易度以外はオーソドックスなシミュレーションRPGだな。ユニットを動かして敵を撃破し、マップを一つ一つクリアしていくゲームだ。さらに序章が『魔王城での決戦』というのも特徴だ。最初からクライマックスというか」
「魔王と戦うところからゲームスタートなんですね?」
デイジーの言葉に女王はうなずいた。
「そうだ。『覇者』は世界を征服する話だ。無事に魔王を討伐したものの、あまりにも強大な力を持っていること、さらに魔王をはじめとした魔族たちを皆殺しにしなかったことから、人類の裏切り者と言われるんだ」
彼女は人差し指を立てて言った。
「そして、それまで味方だった聖王国とヒュスタトン大陸の諸王国連合軍から、猛攻撃を受ける」
「完全に今の流れですね」
デイジーが私を見ながら言った。
女王はリリーの言葉をうまく飲み込めなかったようだ。
不思議そうな顔で首をかしげた。そして、冗談を笑い飛ばすように破顔した。
「おいおい、何を言っているんだ? プリムから聞いていないのか? まさか主人公が知らされていないとはな! プリムもなかなか罪作りな――」
「いえ、彼女が把握しているのは『聖なる乙女の学園』というゲームですよ」
「おいおい、いくら私がモブキャラだからって――」
「いえ、冗談ではなく本当に。ちなみにシスルは『聖なる乙女の騎士』という漫画作品で、デイジーさんは『聖なる乙女の英雄』というRPGだと最初は思っていましたよ」
リリーは淡々と告げた。
「わたしはなんの作品か知らないまま、途中でシスルから漫画だと言われて『そうなのか……』と納得していました」
女王は感情を消した表情で私を見た。私はうなずいた。彼女は、夢かどうか確かめるように自分の頬を引っ張った。それから腕組みをして目を閉じ、考え込む様子を見せた。
彼女はカッと目を見開くと、叫んだ。
「つまり、どういうことだ!?」
「そのままですよ、陛下。複数の作品がまとまったような、奇妙な世界だということです。あるいはこの世界出身の誰かが、それぞれの地球に転生して、ゲームや漫画にしたのかもしれませんね」
リリーは吐息をした。
「で、『聖なる乙女の覇者』というのは、どういうゲームなんですか? 話しぶりからすると、世界を征服する系のストーリーみたいですが」
「いや、ちょっと待ってくれ! もう少し説明してくれ! 圧倒的に情報が足りない!」
女王は混乱した様子だった。なので、私たちは一から説明した。
『学園』『騎士』『英雄』といった作品の内容から、これまでの経緯といったものを一通り。女王は黙って聞いていた。彼女は話が終わると、おもむろに口を開いた。
「じゃあ、なんで迎えに来てくれなかったんだ!? 隠しキャラなんだろう!?」
「面倒なイベントこなさないといけなかったので」
デイジーが答えた。
「それに陛下だけじゃなくて、彼女たちも加入しませんでしたからね」
ウェデリアたちを見ながら、デイジーは言った。
「ゲームの『英雄』と違う点が多々あります。それに現実的に考えて、マーガレット陛下が仲間になる状況でもありませんでしたからね」
「私には一言も言ってくれなかったじゃないか!」
女王は地団駄を踏み、ダリアとアイリスを指さした。
「この二人には地球出身かどうか訊いたんだろう!? なぜ私を無視したんだ!」
「仕方ないでしょう。気軽に会える人じゃないんですから」
デイジーは無慈悲だった。
「それに、気になるなら直接会いに来て確かめればよかったじゃないですか。お嬢さまは陛下のいとこなんですよ? おまけに輝かしい武勲を打ち立てた傑物です。会いに来る口実はいくらでもあったでしょう?」
「そ、それは――! そのとおりだが……!」
女王はいかにも悔しそうだ。
「しかしだな! 私なりにゲームのストーリーを崩さないようにと――!」
「陛下は死ぬんじゃないんですか? 死なないように立ち回っている時点で、すでにストーリーが崩れていると思うんですが」
デイジーは責め立てるように言い募った。
「そもそもゲームどおりなら、ここにいるのは私たちだけじゃなくて、ダリア先生たちも一緒なんですよね? そして、陛下はいないんですよね? なんで陛下が三人を連れ回してるんですか? なによりラオカさまはいなかったんですよね? 私たちに同行しないよう、ちゃんと誘導すべきだったのでは?」
「それだと私が死ぬぅ!」
女王は悲痛に言った。泣きそうだった。というか涙目になっていた。
「私は死にたくなかったんだ! 許してくれ!」
「許しますから、『聖なる乙女の覇者』について説明してください」
「わかった!」
と言い出して、ようやく女王は『覇者』というゲームについて教えてくれた。
「難易度以外はオーソドックスなシミュレーションRPGだな。ユニットを動かして敵を撃破し、マップを一つ一つクリアしていくゲームだ。さらに序章が『魔王城での決戦』というのも特徴だ。最初からクライマックスというか」
「魔王と戦うところからゲームスタートなんですね?」
デイジーの言葉に女王はうなずいた。
「そうだ。『覇者』は世界を征服する話だ。無事に魔王を討伐したものの、あまりにも強大な力を持っていること、さらに魔王をはじめとした魔族たちを皆殺しにしなかったことから、人類の裏切り者と言われるんだ」
彼女は人差し指を立てて言った。
「そして、それまで味方だった聖王国とヒュスタトン大陸の諸王国連合軍から、猛攻撃を受ける」
「完全に今の流れですね」
デイジーが私を見ながら言った。
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