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国軍少佐期
12 帰還です
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「ところで私たちの方は華ノ国に行かなくてよかったのかな?」
「いいのよ。あの国はいろいろと面倒臭すぎるもの」
公表もなく内密な話ではあるが、アリアは豪ノ国、地ノ国、和ノ国の全てで国の代表とのつながりを得た。それは異世界から召喚されることになる少女のためでもあり、世界の崩壊を望む黒幕から自分達を守るためでもある。
協力者のそれぞれにはアリア特製だという特殊魔道通信機を渡しており、密な連絡を取ることが可能だ。
表向きは他国遊覧の旅をしてきたアリアとは、ユナを送り届けた地ノ国で分かれることになる。本当は護衛である私が華ノ国まで送るべきだが、アリアに止められたのだ。
「ユナとアカネは論外として、あなただってあの脳筋国の人間でしょう? 貴族社会をなめない方が良いわ。謀略系の韓流ドラマ並みにドロドロしてるから」
韓流ドラマはまともに見たことがないが、実感のこもった彼女の様子からかなり酷いのだろうと思われた。
「そうだね。そこまで言うなら遠慮しておくよ。わがまま言って迷惑を掛けたくないし」
「そうしてくれるとありがたいわ」
素直に引き下がると、アリアは満足したように頷く。
そしてどこからか小さなイヤリングを出して、それを私に差し出した。派手さはなく、使いやすいデザインのものだ。
「それじゃあ、これを持っていてちょうだい」
「これは?」
私が聞くと、アリアは自分の耳元をこちらに見せた。するとそこには、差し出されたものと似たようなデザインのイヤリングが付けられていた。
「あなた専用の通信機よ。あとはアカネとユナしか持っていないわ。情報はどこから漏れるか分からないし、味方であってもどこに致命的な認識の違いがあるか分からないもの」
説明された使い方は簡単で、ただイヤリングに魔力を送るだけで念話が可能になるのだ。
やりとりができるのはイヤリングを持っている4人だけ。念話のみのやりとりであり、外部からの盗み聞きは不可能。
「他の2人にも言ったけれど、念話の概念がこの世界にはないから、この通信機の存在自体誰にも知られないことがベストね」
発想だけあっても、実現するのは困難である。アリアにはこれを作るだけの技術力があるということで、これもまた彼女の強みなのだろう。
一番始めに他国との協力を呼びかけたのはアリアだし、同じことを考えた人は他にいなかった。
私はゲーム通りの自分になることしか考えていなかったし、他の2人も世界のことにまで頭が回っていなかった。他のキャラクターは“ゲームの中の存在”である分、論外と言ってもいい。
客観的に全てが良くなる方法を考えついた彼女は、実はもの凄い功労者だったのだ。
「こう言ったら不謹慎かもしれないけど、あなたがアリアで良かったよ」
「あら、それはお互い様ね」
しみじみと言うと、アリアから即答された。予想外の反応だったので驚いたが、すぐに温かい気持ちになる。
「あなたには人たらしの才能がありますね」
「それこそこちらの台詞だわ」
そう言ってクスクスと笑い合った後、思いの外軽い気持ちで自分の国に帰っていったのだった。
「いいのよ。あの国はいろいろと面倒臭すぎるもの」
公表もなく内密な話ではあるが、アリアは豪ノ国、地ノ国、和ノ国の全てで国の代表とのつながりを得た。それは異世界から召喚されることになる少女のためでもあり、世界の崩壊を望む黒幕から自分達を守るためでもある。
協力者のそれぞれにはアリア特製だという特殊魔道通信機を渡しており、密な連絡を取ることが可能だ。
表向きは他国遊覧の旅をしてきたアリアとは、ユナを送り届けた地ノ国で分かれることになる。本当は護衛である私が華ノ国まで送るべきだが、アリアに止められたのだ。
「ユナとアカネは論外として、あなただってあの脳筋国の人間でしょう? 貴族社会をなめない方が良いわ。謀略系の韓流ドラマ並みにドロドロしてるから」
韓流ドラマはまともに見たことがないが、実感のこもった彼女の様子からかなり酷いのだろうと思われた。
「そうだね。そこまで言うなら遠慮しておくよ。わがまま言って迷惑を掛けたくないし」
「そうしてくれるとありがたいわ」
素直に引き下がると、アリアは満足したように頷く。
そしてどこからか小さなイヤリングを出して、それを私に差し出した。派手さはなく、使いやすいデザインのものだ。
「それじゃあ、これを持っていてちょうだい」
「これは?」
私が聞くと、アリアは自分の耳元をこちらに見せた。するとそこには、差し出されたものと似たようなデザインのイヤリングが付けられていた。
「あなた専用の通信機よ。あとはアカネとユナしか持っていないわ。情報はどこから漏れるか分からないし、味方であってもどこに致命的な認識の違いがあるか分からないもの」
説明された使い方は簡単で、ただイヤリングに魔力を送るだけで念話が可能になるのだ。
やりとりができるのはイヤリングを持っている4人だけ。念話のみのやりとりであり、外部からの盗み聞きは不可能。
「他の2人にも言ったけれど、念話の概念がこの世界にはないから、この通信機の存在自体誰にも知られないことがベストね」
発想だけあっても、実現するのは困難である。アリアにはこれを作るだけの技術力があるということで、これもまた彼女の強みなのだろう。
一番始めに他国との協力を呼びかけたのはアリアだし、同じことを考えた人は他にいなかった。
私はゲーム通りの自分になることしか考えていなかったし、他の2人も世界のことにまで頭が回っていなかった。他のキャラクターは“ゲームの中の存在”である分、論外と言ってもいい。
客観的に全てが良くなる方法を考えついた彼女は、実はもの凄い功労者だったのだ。
「こう言ったら不謹慎かもしれないけど、あなたがアリアで良かったよ」
「あら、それはお互い様ね」
しみじみと言うと、アリアから即答された。予想外の反応だったので驚いたが、すぐに温かい気持ちになる。
「あなたには人たらしの才能がありますね」
「それこそこちらの台詞だわ」
そう言ってクスクスと笑い合った後、思いの外軽い気持ちで自分の国に帰っていったのだった。
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