元・宿屋の娘は美人冒険者の恋路を応援したい

紫野

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宿屋の娘は美男美女に付き合ってほしい

4 紅の女帝

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 カランカラン

「いらっしゃいませっ!」
「嬢ちゃん!昼飯二人な!」
「りょーかいです!」

 席への案内?そんなものありません。皆勝手に入ってきて好きな席に座る。知らない人同士の相席だってざらだ。


 さて、昼になりました。

 うちの食堂(と宿)はギルド街の中、それも冒険者ギルドの目の前にあるということもあって、地元の冒険者やギルド職員達のたまり場(?)になっている。大体いつでも何人かはいるし、ご飯時は人口密度が凄い。
 今日も、寮住まいの夜勤の職員や商談とか納品でギルドに用があった商人がご飯を食べていて、休息日の冒険者に至っては昼間から酒を飲んでいるのもいる。私とバイトの子はざわつく食堂で、人の間を通り抜けて給仕する。
 あっでも、冒険者の中には昼食を取らない人も多いので朝と夕方に比べたら昼の仕事は少ないです。座って話すだけの人もいるため、人が多いのだ。



「今日の昼前によ、あの『紅の女帝』が納品所でキングボア出すのを見たんだよ」

 冒険者の一人が機嫌良くそう語っているのを聞いて、思わず耳を傾けた。

「ちょっと待て、俺が『女帝』を見たのは朝の鐘の後だ。受けてた依頼は魔物の森深部の討伐だぞ。そんなに早く戻ってこられるはずがねえだろ」
「俺だってんなこと分かってらあ。見間違いだと思ったが、赤髪に大剣だぞ。間違いようがあるか?」

 他のお客さんに呼ばれてそれくらいしか聞けなかったけれど、その話が本当ならリリーさんは恐ろしく強いと言うことだろうか。
 格好いいなぁ。あ、でも見間違いの可能性もあるんだったっけ?

 確証が持てない話について考えすぎるのも良くないと、給仕に集中することにした。



「お嬢ー。落ち着いてきたなら話しようぜー」

 お客さんがほとんどいなくなって昼のバイトの子が帰ったくらいに、ラスターさんに呼び止められた。席にいたのはラスターさんとテオさんの二人だ。今日はこの宿に屯する気らしい。

「分かりましたー」

 宿の掃除等はバイトのおばちゃん達がしてくれるし、食堂も昼が過ぎるとほとんど常連しかいなくなるから余裕ができる。父さんに休憩することを伝えて、二人の所へ行った。



「それにしてもリリーさん、本当に有名人なんですね」

 昼の間、『紅の女帝』の噂はいろいろな席から聞こえてきた。

「女性冒険者がソロ活動でやっていけるのも近接武器がメインなのも珍しいからね。その上上級冒険者だから、実際にこの町に来るまではちょっとした都市伝説だったよ」
「うわぁ、なんか格好いいですねー」

 『上級冒険者』というのは国から与えられる称号で、功績を認められた冒険者に与えられる。これは『国が認めた冒険者』ということになり、名誉も信用も得られるのだ。


 私も前世ではゲームのプレイヤーだった。アクションゲームは得意ではなかったけれど、絵の綺麗さとゲームシステムの多様性に魅了されたのだ。……あっ、ガチ勢ではないですよ、チマチマまったりです!

 私はゲームの、冒険者の楽しさを知っている。
 この世界に生きている以上命ある身なのだから、比較的安全な宿屋の娘で良かったと思うこともあるのだが、それでもやっぱり、冒険者になってゲームで見たような世界を回ってみたい気持ちもあった。
 そういう意味では、リリーさんは私の理想の姿の一つともいえたのだ。



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