元･宿屋の娘は美人冒険者の恋路を応援したい

宿屋の娘は美男美女に付き合ってほしい

8 鑑定結果

「じゃあまず能力ね。腕力とかの身体能力は殆ど星2つから3つ、胆力だけ星4つだけど他は平均とあまり変わらないわね」
「普通ですね……」

　人物鑑定は、相手の能力を星の数で表す。星の数は大体、平均的な値で3つになるように設定されているため、リリーさんの鑑定結果だと私は『ちょっと度胸のある普通の人』になる。

「そんなことないわよ？確かに、冒険者だったら高くない値だけど、鍛えてもいない一般NPCだったら全体的にもう少し低いもの」
「そうなんですか？それなら良かったです」
「じゃあ、スキルなんだけど、家事Ⅳ、接待Ⅳ、交渉Ⅲ、ストレス耐性Ⅴ、状態異常耐性Ⅰ、体術Ⅳ、鑑定Ⅱ、気配察知Ⅱ、逃走Ⅱ、並列思考Ⅰだね」
「……多いですね」

　練度は低いけど、思ったより多くのスキルを所持していたようで驚いた。

「多いわねー。家事とか交渉は分かるけど、体術Ⅳってかなりの練度よ」
「身についているみたいで良かったです」



　カランカラン

「すみません、少し待っていてください」

　宿の扉が開く音が聞こえたので、リリーさんに断ってから対応しに行く。時計を見れば昼近くで、そろそろ人が増えてくる頃だった。
　スキル関係の話が長引いてしまい、魔法適正の話はまだできていない。


「もうこんな時間でしたか。もう仕事に戻らないといけないですね……」
「話し込んでしまったわね。私、今日は一日休むつもりだったから時間はいくらでもあるわ。続きはまた後で話しましょう」
「そうですね」

　お客様を案内してリリーさんの所に戻ると、少し会話をして仕事に戻ったのだった。




「さて、マリアちゃんの魔法適正なんだけど、書き出したから見てちょうだい」

　昼の混雑する時間が過ぎるとすぐに休憩を取り、リリーさんとの話を再開した。
　机に置かれた紙を見ると、書いてあったのは以下の通り。


･回復魔法 ･補助魔法 ･結界魔法 ･呪い


「ぅわぉ……」

　これを見せられると、リリーさんが私の前世を回復職ヒーラーだと思ったのも頷ける。
　〇〇魔法というのは、同系統の魔法がセットでまとめられた表記なので、できることは多い。

「聖職者っぽい感じですかね……あ、でも呪のろいっていうのはなんか違うか……」
「あら？呪まじないじゃないの？状態異常無効化とかの」
「ああ、そっちでしたか。そうなると本当にサポート系しかないですね……」


「そう。そこなのよ」

　リリーさんは適性が書かれた紙を燃やしてから、真剣な顔で語った。
　曰く、貴重な魔法の適性が高いにもかかわらず攻撃系の魔法の適性がないので、その力を悪用したい人に狙われやすくなるかもしれないのだそうだ。


「そうだったんですか。はぁ……ちょっと『冒険者できるようになる』って思ったのに……」
「え？なりたかったの？」
「……え？」

　リリーさんはなぜかキョトンとしている。
　あれ？冒険者になると面倒という話ではなかったのかな？

「適性も調べなかったなら興味が無かったのかと思ってた」
「ああ、それは属性魔法が全く使えなかったから他もできないと思い込んでたんですよ。一応、ゲームはしてたんですよ？当然冒険者になることには惹かれます」

　私の説明を聞いたリリーさんの表情がぱっと明るくなる。

「それなら一番簡単な方法があるじゃない！」

　リリーさんは私の手を取って言うのだった。

「私とパーティー組まない？」