元・宿屋の娘は美人冒険者の恋路を応援したい

紫野

文字の大きさ
18 / 30
宿屋の娘は美男美女に付き合ってほしい

18 共闘

しおりを挟む
「レティ!?」

 私たちの前に降り立った女性に真っ先に反応したのはドーマさんだった。

「父上!?なぜこのような場所に!」

 騎士服の女性は、凛々しい顔を驚きに染めてドーマさんに駆け寄る。

「フォレストイーグルの爪を取りに来たのだ。この人達は護衛の冒険者だ」
「そうか。ここまで無傷だったところを見ると、相当腕が立つと見える。父上を頼みます!」
「いいえ、私たちも戦うわ」

 逃げるように促す騎士の女性に言い返したのはリリーだった。

「これでも上級冒険者なんだ。そんな姿の人を置いて逃げる訳にはいかないよ」
「このままだと依頼人も逃げてくれなさそうだしな」

 女性はすでに傷だらけで、そのまま地竜を倒せるとは思えない。リリー達の言葉に明らかにほっとした様子になったドーマさんは、確かに彼女を置いていきたくはなさそうだった。

「話はまとまったようなので、傷の治療をしても良いですか?」

 面倒事を避けるために関係者以外にはできるだけ回復魔法を使わないようにしていたけれど、共闘となると話は別だ。

「すまない。私はレティツィアだ。レティと呼んでくれ」
スキャン解析。私はマリアです……ああ、腕が折れてるじゃないですか!こんな状態で戦う気だったんですか!?範囲指定完了、テンポス・リトロースム時間遡行!」


 ちょうど治療が終わったあたりで地竜の咆哮が響き渡り、麻痺が治りかけていることが分かる。

「怪我は治ったな?戦闘開始だ!」

 地竜の目の前に向かって投げナイフを放ったラスターさんは、上手く気を引く動きで攻撃を引きつけた。
 まだ麻痺が残っている地竜の動きは鈍く、その攻撃を軽々と受け流すラスターさん。

「トニートゥラ!」

 おそらく使える中で最も強い魔法なのだろう、始めに地竜を麻痺させた魔法を唱えたレティ。

 しかし地竜は、今度は雷撃を振り払い、魔法を放ったレティに狙いを定めた。

「まずい避けろ!」

 レティに視線を向けて攻撃の態勢に入った地竜の気をそらそうと駆け出すラスターさん。

 瞬間。グルリと振り返った地竜は振り上げていた爪をラスターさんに向かって下ろした。

「ラスターさん!」

 ガンッと音がして、受け身を取ったことは理解できても、攻撃が直撃して勢いよく飛んでいったラスターさんが無事だとは思えない。

 皆戦っていて、回復ができるのは私だけ。急いで走り出す。


スキャン解析!……へ?」

 ラスターさんの元にたどり着いて状態を見てみれば、ちょっとした切り傷と打撲だけしかなかった。

ヒール回復……どんだけ丈夫なんですか……」

 この世界の人たちは。

「いや、ちゃんとガードしたんだから当然だろ」

 そりゃあゲームの中だったらね!

「はぁ。分かりました。さっさと戦線復帰しましょう」


「レティ!地竜に電撃は効きにくいから、氷魔法にして!使えるでしょ!」

 できるだけ地竜の視界に入らないように、背後からの攻撃を繰り返していたリリーはレティに叫ぶ。

「わ、分かった!アブソリュート・ゼロ絶対零度!」

 リリーの助言に従ったレティが氷魔法で地竜の周囲を凍らせると、体温を奪われた地竜の動きは目に見えて遅くなる。


ウィークニング・ウェッジ弱体化の楔!」

 キュンッ

 だめ押しで唱えた魔法で動けなくなった地竜に止めを刺したのは、テオさんの魔法で強化された弓矢だった。

 矢は眉間に当たり、叫ぶこともままならなかった地竜は音を立てて倒れる。


「あの地竜を、こんなにあっさりと……」

 倒れた地竜を目の前に呆然とした様子で呟いたのは、レイピアを収めたレティだった。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...