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元・宿屋の娘は推しカプを守りたい
8 おやぁ?
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ワームの頭を持ってギルドに戻り、早速依頼達成の手続きをする。
パーティーリーダーを請け負ってくれるテオさんの報告が終わり、いつもは軽い反省会をして大したことが無ければすぐに「それじゃあ宿に戻ろうか」となるところだが、今日はそれで終わらなかった。
「テオ様。私の……いえ、ブラック家の護衛騎士になりませんこと?」
突然、ナユユちゃんがキラキラの笑顔でテオさんの勧誘を始めた。
「テオ様はとっても強いし、何よりも素晴らしい索敵能力がありますもの!きっとお父様も認めてくださるわ!立ち振る舞いもしっかりしていて、きっと誰もが憧れるような騎士になりますわね!」
予想外のわがままに、テオさんは眉尻を下げて反論した。
「申し訳ありません、俺は冒険者としてやっていきたいんです。学のない平民なので騎士は向いていないでしょうし、冒険者として生きると決めたので」
しかしナユユちゃんはかなりポジティブだったらしい。テオさんのはっきりとした拒否にもめげることはなかった。
「それなら、わたくしとパーティーを組みませんこと?ええ、それが良いわ!わたくしは回復魔法を使えるし、攻撃魔法も使えますのよ!前衛が心許なかったらラスターも入れて3人で、王都を拠点に活動するの!」
「補助という点ではマリアちゃんの実力の方が上ですよ。そもそも、」
「今回の任務では、マリアは一回も回復魔法を使っていませんでしたわ!」
私とリリーを放り出すようなことを言ったナユユちゃんにテオさんは少し呆れたように返した。
そしてテオさんの反論の途中で言葉を返したナユユちゃんに、ラスターさんがもはや敬う体もなく反論した。
「気付かなかったのか?メンバーに怪我がなかったのは、それだけお嬢の補助が上手かったからだ」
「そんなこと───」
「イビルファルコンに襲われたとき、補助役がお嬢じゃなかったらあんたは無事じゃなかっただろうな」
「なんですって?」
「魔法で出すことができる障壁は一枚であっても遠れた場所に固定することが難しく、二枚が限界だと言われているわ。マリアはその障壁を二枚ともあなたを護るために使い、その上自分の身まで守ったのよ」
「その間あんたは何をしてた?襲われる状況を作っておきながら怯えて動けてもいなかっただろ」
ラスターさんの口撃にリリーまで加わって、言葉による集団攻撃の様相を呈してきた。
ナユユちゃんの急な勧誘には私だってムッとなった。しかしここまで皆が怒っているのを見ると冷静になると同時に、ナユユちゃんが少しかわいそうに思えてくる。
まあ、同情よりも皆がパーティーを大事にしてくれていることへの嬉しさが勝る間は止めるつもりはありませんけど。怒ってくれる存在って貴重ですよ。今回はわざと必要以上に責めているようだけど、ナユユちゃんはまだ諦めていないみたいなので。
「だ、だって、元々はマリアとリリーの二人でパーティーを組む予定だったのでしょう!?」
ナユユちゃんの言葉に、一瞬、なぜそれを!?と思ったのだが、魅了されたときにいろいろ聞かれて答えてしまったのを思い出す。うわああまた私のせいでした!
焦ったように言い放ったナユユちゃんは、私たちが黙ったところでさらに続ける。
「テオ様とラスターはわたくしが面倒を見てあげるから、二人は予定通りに旅を続けて……」
ナユユちゃんが言葉の途中で黙ったのは、そのときになってやっと、テオさんの雰囲気がガラリと変わったことに気付いたからだった。
そりゃあもう爽やかな笑顔なんです、顔は。ただね、雰囲気が真っ黒なんです。どす黒いオーラを背負って、終いには武器に手をかけそうになっているんです。
爽やか王子様の称号すら裸足で逃げ出しそうな様子に、目の前にいるナユユちゃんだけでなく私たちまでピシッと固まった。
「ああ、ナユユ様には申し上げておりませんでしたね。俺があなたの申し出を断る断る一番の理由は、愛する人と同じ時を過ごせなくなることが耐えられないからですよ」
…………ん?
………………んん!?
今テオさん何て言いましたか!?
パーティーリーダーを請け負ってくれるテオさんの報告が終わり、いつもは軽い反省会をして大したことが無ければすぐに「それじゃあ宿に戻ろうか」となるところだが、今日はそれで終わらなかった。
「テオ様。私の……いえ、ブラック家の護衛騎士になりませんこと?」
突然、ナユユちゃんがキラキラの笑顔でテオさんの勧誘を始めた。
「テオ様はとっても強いし、何よりも素晴らしい索敵能力がありますもの!きっとお父様も認めてくださるわ!立ち振る舞いもしっかりしていて、きっと誰もが憧れるような騎士になりますわね!」
予想外のわがままに、テオさんは眉尻を下げて反論した。
「申し訳ありません、俺は冒険者としてやっていきたいんです。学のない平民なので騎士は向いていないでしょうし、冒険者として生きると決めたので」
しかしナユユちゃんはかなりポジティブだったらしい。テオさんのはっきりとした拒否にもめげることはなかった。
「それなら、わたくしとパーティーを組みませんこと?ええ、それが良いわ!わたくしは回復魔法を使えるし、攻撃魔法も使えますのよ!前衛が心許なかったらラスターも入れて3人で、王都を拠点に活動するの!」
「補助という点ではマリアちゃんの実力の方が上ですよ。そもそも、」
「今回の任務では、マリアは一回も回復魔法を使っていませんでしたわ!」
私とリリーを放り出すようなことを言ったナユユちゃんにテオさんは少し呆れたように返した。
そしてテオさんの反論の途中で言葉を返したナユユちゃんに、ラスターさんがもはや敬う体もなく反論した。
「気付かなかったのか?メンバーに怪我がなかったのは、それだけお嬢の補助が上手かったからだ」
「そんなこと───」
「イビルファルコンに襲われたとき、補助役がお嬢じゃなかったらあんたは無事じゃなかっただろうな」
「なんですって?」
「魔法で出すことができる障壁は一枚であっても遠れた場所に固定することが難しく、二枚が限界だと言われているわ。マリアはその障壁を二枚ともあなたを護るために使い、その上自分の身まで守ったのよ」
「その間あんたは何をしてた?襲われる状況を作っておきながら怯えて動けてもいなかっただろ」
ラスターさんの口撃にリリーまで加わって、言葉による集団攻撃の様相を呈してきた。
ナユユちゃんの急な勧誘には私だってムッとなった。しかしここまで皆が怒っているのを見ると冷静になると同時に、ナユユちゃんが少しかわいそうに思えてくる。
まあ、同情よりも皆がパーティーを大事にしてくれていることへの嬉しさが勝る間は止めるつもりはありませんけど。怒ってくれる存在って貴重ですよ。今回はわざと必要以上に責めているようだけど、ナユユちゃんはまだ諦めていないみたいなので。
「だ、だって、元々はマリアとリリーの二人でパーティーを組む予定だったのでしょう!?」
ナユユちゃんの言葉に、一瞬、なぜそれを!?と思ったのだが、魅了されたときにいろいろ聞かれて答えてしまったのを思い出す。うわああまた私のせいでした!
焦ったように言い放ったナユユちゃんは、私たちが黙ったところでさらに続ける。
「テオ様とラスターはわたくしが面倒を見てあげるから、二人は予定通りに旅を続けて……」
ナユユちゃんが言葉の途中で黙ったのは、そのときになってやっと、テオさんの雰囲気がガラリと変わったことに気付いたからだった。
そりゃあもう爽やかな笑顔なんです、顔は。ただね、雰囲気が真っ黒なんです。どす黒いオーラを背負って、終いには武器に手をかけそうになっているんです。
爽やか王子様の称号すら裸足で逃げ出しそうな様子に、目の前にいるナユユちゃんだけでなく私たちまでピシッと固まった。
「ああ、ナユユ様には申し上げておりませんでしたね。俺があなたの申し出を断る断る一番の理由は、愛する人と同じ時を過ごせなくなることが耐えられないからですよ」
…………ん?
………………んん!?
今テオさん何て言いましたか!?
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