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事情聴取
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エヴェレットは後ろの棚からペンと紙を取り出してから質疑問答に移る。
「レイア・ルーナマリア・リリー。16歳でアルヴェリア学園に通っている。間違いないな?」
「はい」
「その日のことを話してもらう。まず、何故街に出たんだ?あんな時間に」
「お母様に手紙を出してきてほしいと頼まれました」
「その手紙の内容は?」
「ノア家との取り立てのお話です」
「取り立て?まだそんな時期じゃ無いぞ、早すぎる。ついこの間終わったばっかりだ」
「え?いえ、私の家に取り立てに来た日がありましたよね?そのとき中止された取り立ての日程を…」
「だから、もうそれは終わっている」
「えっ……」
「……お前は、その手紙の内容を直接見たのか?」
「い、いえ…もう、封をされていたので……」
エヴェレットはそれを聞いて眉を顰める。
「分かった。続けるぞ。街には1人だったのか?他に使用人などは?」
「1人です」
「何で1人で行くんだ、夜だぞ。普通使用人の1人や2人連れていくだろう。そもそも、何故手紙をあんな夜に出しに行く」
はあと大きなため息をついて、呆れたようにエヴェレットが質問する。
「……その、両親が、ノア家の関係を見直してくれると、言ってくれたのです。それが嬉しくて…。そのまま1人で……」
エヴェレットは額に手を当て項垂れる。こんなことで舞いあがり危険な目に遭うなんて。まだ小さい子の方が利口だ。
「まぁいい、続ける。で、手紙出しに行ってどうした。奴らとどこで会った?」
「街のポストの前です。宿舎の道のりにあるところで会い、宿舎に案内してほしいと言われ、あの道を通りました」
「あの道よりも大通りの方が良い気がするが…」
「あの道の方が近かったので…」
「まぁ…いい。で、あの道を通って裏路地に連れ込まれたと」
「………はい、」
エヴェレットは紙にサラサラと私が言ったことを書いていく。
そして、筆を止めると、真っ直ぐに私の瞳を見る。
「アイツらは前払金を貰っていると言った。それは、アイツらが依頼されたということになる」
ー「依頼人に心当たりは?」
ドグリと心臓が大きな嫌な音を立てる。
私は喉をゴクリと鳴らす。
冷や汗が出てくる。目を逸らしてしまいたい。ここから逃げてしまいたい。
認めたくない。言いたくない。信じたくない。
私は爪が食い込むほど手を握りしめる。
ー逃げては駄目だ。ちゃんと、私はー
「あります」
「ー誰だ?」
私は目を瞑り深呼吸をする。
そして、エヴェレットの目を見据えて静かにその言葉を口にする。
「私の、両親です」
エヴェレットは表情を変えない。ただ、私と見つめ合っている。私は瞬き一つせずに続ける。
「あの人たちが言っていました。実の親に殺されるなんて、可哀想だと」
「……それは、事実か?」
「事実です」
「………そうか」
エヴェレットは下を向き、紙にそのことを書き、筆を置く。
「分かった」
「……終わり、ですか?」
「………ああ」
エヴェレットは席を立ち、私の隣に来る。
私が目を向けると、頭にエヴェレットの手が回り優しく抱きしめられる。
「ー辛かったな」
その言葉を聞き、私は堪えていた涙が溢れる。涙腺が決壊し、もう止められない。嗚咽を漏らしながらエヴェレットの胸に顔を埋め、エヴェレットの腕を力一杯掴む。
「辛かった、辛かったんです、ずっと、……!!信じたくなかった、でも!こんなの、信じるしかないじゃないですか……!!!」
「………ああ」
「お父様、お母様………!!!」
エヴェレットは優しく私の頭を撫でるだけだ。
私は心の奥にしまっていた本心を曝け出す。いや、溢れ出した。
「嬉しかった、認めてくれたと思って。それで目の前のことに気づかなくて、こんなことになって。私、私は…!!」
「……レイア」
「嫌いです、大嫌い。お父様も、お母様も。でも、私を抱きしめてくれたあの温かさは、作り物でも、温かかったから…!!」
現実世界の私は、親からの温かさを感じた事がなかった。だから、この世界で初めて両親に抱きしめられたとき、その温かさを知った。それが、偽物でも。
「レイア」
「エヴェレット様、私は、これからどうすれば、」
「………それが本当なら、お前をあの家に返すわけにはいかない」
「………」
「リリー夫妻も罪に問われると思うが、貴族だ。世間には出回らず、闇に葬りられるだろう。ただ、噂の尾鰭は必ずつく。ここには居られないだろうな」
ここには居られない。事情は違うが、私が迎えるendと同じだ。
結局、人が変わらないと行き着く先は同じなのだと思い知った。
「レイア・ルーナマリア・リリー。16歳でアルヴェリア学園に通っている。間違いないな?」
「はい」
「その日のことを話してもらう。まず、何故街に出たんだ?あんな時間に」
「お母様に手紙を出してきてほしいと頼まれました」
「その手紙の内容は?」
「ノア家との取り立てのお話です」
「取り立て?まだそんな時期じゃ無いぞ、早すぎる。ついこの間終わったばっかりだ」
「え?いえ、私の家に取り立てに来た日がありましたよね?そのとき中止された取り立ての日程を…」
「だから、もうそれは終わっている」
「えっ……」
「……お前は、その手紙の内容を直接見たのか?」
「い、いえ…もう、封をされていたので……」
エヴェレットはそれを聞いて眉を顰める。
「分かった。続けるぞ。街には1人だったのか?他に使用人などは?」
「1人です」
「何で1人で行くんだ、夜だぞ。普通使用人の1人や2人連れていくだろう。そもそも、何故手紙をあんな夜に出しに行く」
はあと大きなため息をついて、呆れたようにエヴェレットが質問する。
「……その、両親が、ノア家の関係を見直してくれると、言ってくれたのです。それが嬉しくて…。そのまま1人で……」
エヴェレットは額に手を当て項垂れる。こんなことで舞いあがり危険な目に遭うなんて。まだ小さい子の方が利口だ。
「まぁいい、続ける。で、手紙出しに行ってどうした。奴らとどこで会った?」
「街のポストの前です。宿舎の道のりにあるところで会い、宿舎に案内してほしいと言われ、あの道を通りました」
「あの道よりも大通りの方が良い気がするが…」
「あの道の方が近かったので…」
「まぁ…いい。で、あの道を通って裏路地に連れ込まれたと」
「………はい、」
エヴェレットは紙にサラサラと私が言ったことを書いていく。
そして、筆を止めると、真っ直ぐに私の瞳を見る。
「アイツらは前払金を貰っていると言った。それは、アイツらが依頼されたということになる」
ー「依頼人に心当たりは?」
ドグリと心臓が大きな嫌な音を立てる。
私は喉をゴクリと鳴らす。
冷や汗が出てくる。目を逸らしてしまいたい。ここから逃げてしまいたい。
認めたくない。言いたくない。信じたくない。
私は爪が食い込むほど手を握りしめる。
ー逃げては駄目だ。ちゃんと、私はー
「あります」
「ー誰だ?」
私は目を瞑り深呼吸をする。
そして、エヴェレットの目を見据えて静かにその言葉を口にする。
「私の、両親です」
エヴェレットは表情を変えない。ただ、私と見つめ合っている。私は瞬き一つせずに続ける。
「あの人たちが言っていました。実の親に殺されるなんて、可哀想だと」
「……それは、事実か?」
「事実です」
「………そうか」
エヴェレットは下を向き、紙にそのことを書き、筆を置く。
「分かった」
「……終わり、ですか?」
「………ああ」
エヴェレットは席を立ち、私の隣に来る。
私が目を向けると、頭にエヴェレットの手が回り優しく抱きしめられる。
「ー辛かったな」
その言葉を聞き、私は堪えていた涙が溢れる。涙腺が決壊し、もう止められない。嗚咽を漏らしながらエヴェレットの胸に顔を埋め、エヴェレットの腕を力一杯掴む。
「辛かった、辛かったんです、ずっと、……!!信じたくなかった、でも!こんなの、信じるしかないじゃないですか……!!!」
「………ああ」
「お父様、お母様………!!!」
エヴェレットは優しく私の頭を撫でるだけだ。
私は心の奥にしまっていた本心を曝け出す。いや、溢れ出した。
「嬉しかった、認めてくれたと思って。それで目の前のことに気づかなくて、こんなことになって。私、私は…!!」
「……レイア」
「嫌いです、大嫌い。お父様も、お母様も。でも、私を抱きしめてくれたあの温かさは、作り物でも、温かかったから…!!」
現実世界の私は、親からの温かさを感じた事がなかった。だから、この世界で初めて両親に抱きしめられたとき、その温かさを知った。それが、偽物でも。
「レイア」
「エヴェレット様、私は、これからどうすれば、」
「………それが本当なら、お前をあの家に返すわけにはいかない」
「………」
「リリー夫妻も罪に問われると思うが、貴族だ。世間には出回らず、闇に葬りられるだろう。ただ、噂の尾鰭は必ずつく。ここには居られないだろうな」
ここには居られない。事情は違うが、私が迎えるendと同じだ。
結局、人が変わらないと行き着く先は同じなのだと思い知った。
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