悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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息抜きは大切

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「「あ」」

 私とエヴェレットの声が被る。
 お風呂から上がると、丁度エヴェレットと鉢合わせした。ペガサスも一緒だ。

「何だ!2人も入ってたんだ!どうです?ユニコーンのこと、男だと思っていたでしょ」

「は、はい…」

「ペガサス、私の事などどうでも良い。リリー嬢、このまま真っ直ぐお部屋にお戻りになりますか?」

 どうしようか。私は保護されている身だ。すぐ戻ったほうがいいと思うが、それでは少し寂しい。

「今は俺らが付いている。レイア、どこか行きたいなら遠慮なく言ってくれ」

「えっと…」

 行きたい場所は無い。ただ、一人が嫌なのだ。現実世界ではずっと1人だったのに、何でこんなに寂しがり屋になってしまったのだろう。
 そんなことを口に出せるわけもなく、困っているとペガサスが手を挙げる。

「はい!じゃあレイアお嬢さん!遊べるところがあるんですよ!そこ行きましょ!」

「お前が行きたいだけじゃないのか?」

「分かってないなー、ユニコーン。こういうときは、息抜きも必要なんだよっ!」

 ガシリとペガサスはユニコーンの肩を組む。ユニコーンは眉を顰めたが、その腕を振り払うことはしない。

「色んなことができるんです。サーベルも振れたり、ボードゲームとかも!どうですか?」

「楽しそうです!行ってもいいですか?」

「よし!じゃあ決まりです!リーダー、良いですよね!」

「ああ。そうだな」

 エヴェレットに案内されること数分。運動施設のようなところに入ると、そこには色々なものがあった。

「す、凄い……!!」

 私は辺りを見回すと、サーベルが何本か置いてあった。

「あれはレプリカだ。ただ、忠実に作ってあるから練習に使われる。試しに持ってみるか?」

 エヴェレットが説明する。私はこくりと頷き、エヴェレットがサーベルを持ってきてくれる。
 持ってみると、ずしりと重い。エリーから前に聞いてはいたが、これほどまでに重いのか。試しに軽く振ってみたが、それだけでも腕が筋肉痛になりそうだ。
 エヴェレットはこれを軽々と振っていた。チラリとエヴェレットを見ると、エヴェレットは私の後ろに回る。

「持ち方が違う。こう持つんだ。足腰をちゃんとして、重心をずらさずに…」

 グッとエヴェレットとの距離が縮まる。ほぼゼロ距離だし、エヴェレットが屈んでいるせいで耳に息が当たる。私は意識をサーベルに向けようとするが、中々移行出来ない。

「聞いているのか?」

「へっ!?ひゃ、ひゃい…、」

「緊張しすぎだ。レプリカだと言ったろ。ほら、振ってみろ」

 言われた通り振ってみると、ヒュンと空気を切る音がする。さっきよりも軽い力で振ることが出来るし、腕もそれほど痛くない。

「変に力みすぎだ。力を抜いて…。そう、上手だ」

 エヴェレットが私のそばでそんなことを言うものだから、私は全身が熱くなる。さっきお風呂に入ったばっかりなのに、その時よりも熱い。エヴェレットが私の手に触れ、エヴェレットの熱が私の手に移っていく。

「お前は小さいからな。大変だろ」

「ちっ…、小さくても、出来ます!」

「そうだな、頑張れ」 

 なんか凄い適当に流された気がする。
 すると、ペガサスもサーベルを持ってこちらに話しかける。
 
「レイアお嬢さん、見てて下さい、俺も使えますよ!ユニコーン、手合わせいい?」

「…一戦だけだぞ」

 そう言うと、ユニコーンもサーベルを握る。そして、近くにある空きスペースに移動すると、両者が構えの姿勢をする。
 以前、私の方にサーベルが飛んできたことがあった。そのせいか、私は数本下がってエヴェレットの腕を掴む。
 エヴェレットもそれに気づき、私の前に腕を出す。

「2人は強い。サーベルがこちらに飛んでくることはまず無いし、何より俺がいる」

「…心強いです」

 2人に視線を戻すと、2人は少し睨み合った後、ユニコーンから先に動く。

 ガキィンと強い音が響く。以前聞いた音とは違う、一撃の重みがある。
 ペガサスはそれを流すと反対側からサーベルを振るが、ユニコーンもそれに素早く対応する。
 サーベルがぶつかる音がいくつか響いた後、ペガサスの一振りがユニコーンの首近くにくる。
 しかし、ユニコーンはグンと地面スレスレに背中を逸らす。

「ひっく…っ!」

 ペガサスは驚きの目でユニコーンを見る。ユニコーンはその体制のままペガサスの足元にサーベルを振る。
 ペガサスはそれをジャンプして回避すると、そのまま空中で一回転してユニコーンの背後に回る。
 ユニコーンは後ろにサーベルを回そうとするが、それよりも早くペガサスがサーベルを振る。
 強い力でぶつかり合ったサーベルは、重く高い音を出す。
 その勢いのまま、ユニコーンのサーベルが押さえ込まれる。
 ペガサスはユニコーンの低くなったサーベルを足で踏みつけ、ユニコーンの喉元にペガサスのサーベルが立てられる。

「俺の勝ち」

「っ…、次は勝つ…!」

 弧を描くペガサスの口元と反対に、ユニコーンの口元はキュッと結ばれている。
 ペガサスは倒れているユニコーンに手を差し出して起き上がらせると、2人はサーベルを仕舞ってこちらに来る。
 
「お二人とも、凄かったです!」

 私が興奮気味に話すと、2人は目を合わせてから微笑む

「そうですか!?嬉しいです!」

「リリー嬢に褒めて頂けるとは光栄です」

「でも、これよりもリーダーの方が凄いですよ。この騎士団の中でもトップレベルですもん」

「そうなのですか!?エヴェレット様っ!」
  
 私が勢いよく振り返ると、エヴェレットは淡々と答える。

「そんな誇ることでは無い」

「いえ、日々努力していることを、エリーから聞きました。エヴェレット様は素晴らしいです!もっと誇って良いと思います!」

 私がエヴェレットの近くに行って近距離で話すと、エヴェレットは口元を手で隠して目を逸らす。

「そんなに言うな…」

 よく見ると、耳が少し赤くなっている。
 もしかして、褒められ慣れていないのだろうか。これは良い弱点を見つけられた気がする。

「ほら、サーベルだけじゃなくて、他にもあるぞ」

 エヴェレットは分かりやすく話を逸らす。


 私の息抜きは、まだまだ始まったばかりだ。




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