灰色に夕焼けを

柊 来飛

文字の大きさ
125 / 128
アフターストーリー

学園祭

しおりを挟む
 今日は学園祭だ。

 私は大学の前でとっても可愛い大学の友人を待っている。その友人は、昨日電話で怒られた子猫みたいな震えた声で尋ねてきた。

〈あ、あのね、明日の学園祭の事なんだけど…。そ、そのね、ぼ、僕の恋人も一緒で大丈夫?〉

「え!?全然良いよ!?むしろ会いたいし!」

 私が言うと、友人は「ありがとう」と可愛らしい声で感謝を述べる。そして、今に至るわけだ。

「夕の恋人初めて会うなー」

 写真では見たことがあるが、世間一般的に言う「イケメン」の枠を超えている。普通に芸能界の中にいてもかなり上位に来る程顔が整っていて、夕曰く「背が198あってガタイも良い」らしい。だから最初は圧があるかもしれないけど優しい人だから怖らがないで欲しいとのことだった。

 スマホーゲームをしていると、ピコンと夕から連絡が入る。

〈もう直ぐだよ!周り見渡してみれば直ぐ分かると思う〉

 おー、まぁ私が夕を見つけられないわけがないよね。大学で一番最初の友達だし、同じサークルだし、メイクも教えた訳だし。
 そんな軽ーい思いで周りを見渡すと、私は目を見張ってスマホを落としそうになる。

 まさか、

「あっ、居た!」

 今日はいつもよりも気合が入った服を着た夕はパタパタとこちらに来るが、その後ろにはとっても大きい、灰色の人がいた。

「ゆ、夕、その人、」

「あっ、えっと、ぼ、僕の恋人の、」

「灰月 鷹翔だ。今日は急な申し出にも関わらずありがとう」

 その人はニコリと笑ってお礼を述べ、私もあわあわと返す。

 灰月さんは白のワイシャツに青のジーパン、そして黒の上着という簡素な格好なのに、顔の圧と身体の圧が相まってヤバい。足なっが、股下1メートルとか本当に実在したんだ。鎖骨あたりにはシルバーの指輪が通されたネックレスと、色の系統から外れてキラリと目立つオレンジのピアスを両耳に付けている。
 そんな灰月さんだが、それに負けていないのが夕なのだ。
 唇はルージュ色に色づき、それは夕の美人な顔をより大人っぽく引き立てる。身長は平均よりもほんのちょっと高いくらいだから灰月さんと並ぶとかなりの身長差になる。けど、夕自身もかなりスタイルがいい。スッと綺麗な姿勢に細い体、スラリと伸びたモデル顔負けの長い足。そして、女性がよく憧れる砂時計体型ではないが、胸が大きくてくびれがあって、そして腰は折れてしまいそうなほど細い、言うなればモデル体型だ。いくらオーバーな上着を着ているからとはいえ、今日はニットを着ているから胸の大きさが余計に目立つ。そして視線が集まるその胸元にはいつも付けているゴールドの控えめなネックレスが揺れていた。

 そんなこんなで話していてもザワザワとかなり人がコチラを見てくる。それはいつものことで慣れているのか、2人は気にせずに大学内に足を踏み入れる。

「灰月さんはお仕事されてるんですか?それとも大学生?」

 すると、灰月さんは「ハハハ」と声を上げて笑う。

「ハハッ、すまない。俺が大学生に見えるか?」

「え?は、はい…」

 失礼だが、留年してしまえば誰だって大学生となりうる。でも鷹翔さんはどう多く見積もっても20代後半だ。

「俺は34だ」

「…………え?」

「ハハッ、何だ、そんな気を使わなくてもいいのに」

「えっ?いやいやいやいやいや、え?34…?んな訳、え?いや、20代後半…え?」

「俺は大学教授をやらせてもらっている。夕から俺は若く見られていると言われていたが、嘘ではないようだな」

 え、いや、見られてるっていうか、その年齢にしか見えないのだ。どこの誰が貴方を30代中盤だと分かるんだ。どう見たって20代後半だ。しかも大学教授なのか。30代で大学教授ってかなり早い人じゃないか?確かに高校のときから少し勉強を教えてもらっていたとは聞いていたが、まさか大学教授だとは思いもしなかった。

「あ!見て下さい!焼きそば売ってます!」

 衝撃的事実をようやく咀嚼し始めた私を置いて、夕は目の前の焼きそば店に走っていって注文をしている。

「みんな食べる?」

「食べたーい」

「ああ頼む」

 夕は直ぐに3つの焼きそばパックを器用に積んでこちらに来ると、みんなに手渡す。

「ふふ、青のり沢山サービスしてくれたんだー」

 夕は少し幼く笑い、私もそれに頬が緩む。夕は美人だから店員が男性だとこういうサービスを受けることが多い。本人は気づいていないが、男はみんな夕に釘付けなのだ。
 しかし、今その隣には正真正銘のハイスペック彼氏が立ってその横を独占している。そんな中じゃいつもしつこく話しかけてくる輩は今日はいない。

「はっ、ふっ、」

「…夕って猫舌だよね。可愛い」

「なっ!!僕は…」

「だとよ、猫ちゃん」

 灰月さんはニヤリと笑い、夕はキッと猫の威嚇ように睨みつける。灰月さんが夕の頭を撫でると夕は満更でもないような顔をして、グッと口を紡ぐ。

「夕、猫嫌いだった?犬の方がいい?」

「ち、違う、猫も犬も可愛くて好きだけど、」

「夕は犬派で、俺は猫派だからな」

「へぇー!」

 どちらかといえば反対のイメージだが、現実は反対らしい。

「そうだろ?夕は、が好きだもんな」

「…………ね、猫も、好きだし…」

「ほぅ、なら良かったな」

「ぐぎぎ、」

 そんな会話を交わしながら私たちは焼きそばを食べ終わってパックをゴミ箱に捨てる。一番遅かったのは夕で、一番早かったのは灰月さんだった。灰月さんは私がまだ2、3口しか食べていない頃にはもう食べ終わっていて、私は目を見張ったが、灰月さんはゆっくりと待ってくれていた。

 大学内に足を踏み入れて展示物を見ていると、私と夕が取っている授業の先生がこちらに駆け寄ってくる。

「灰月先生!?」

「ん?ああ、ご無沙汰してます」

 灰月さんはくるりと振り向くと先生と握手を交わし、私たちは話しかけられる。

「何だお前たち、灰月先生と知り合いだったのか?」

「ええ。こちらの彼女は初対面ですが、烏坂は彼女が高校生の頃からの顔馴染みです」

「高校生…ああ!もしかして、風の噂であったあの例の高校生が烏坂ですか?灰月先生が引き取ったっていうあの」

「…ええ、まぁ」

 私も初耳だ。同棲しているのは知っていたが、まさか引き取られたとはいえ高校生から同棲してた関係だったとは。確かに、夕は不意に「施設」という言葉を口にする。そこから元々施設にいたことは推測していたが、まさかこんなルーツがあったなんて。

「そうだったのか烏坂!2人とも、灰月先生は若くして大学教授になって数多くの成果を上げている、大学教授の中でも素晴らしい人なんだぞ」

 夕も初耳だったらしく、私と夕は感嘆の声を上げるが当人の鷹翔さんは無表情と言うか、むしろあまり気が乗らない顔をする。

「いや、烏坂は特待生の名に恥じぬよう真面目に頑張っていますよ。これも全部灰月先生のおかげだな、烏坂!」

「いえ、俺は引き取っただけで勉強を教えたのは本当にほんの少しです。それも俺のお節介だ。特待生になったのは俺の力でも何でもない、烏坂自身の努力です。そこは、履き違えないで貰いたい」

 灰月さんは睨みつける行為とほぼ同等な鋭い目で先生を見て直ぐに訂正の言葉を入れると、先生グッとたじろいで急いで謝罪の一言を言う。
 楽しんでいるところを邪魔するのも悪いと言って先生は去っていき、私は夕に話しかける。

「夕も知らなかったんだね」

「うん」

「言ってなかったし、言う必要も無かったからな。………にしても、俺アイツ嫌いなんだよな」

 「媚び売ってるの丸見えで」と一言付け加えた後、灰月さんは眉を顰めて今にも舌打ちをしそうな顔をする。
 まぁ確かに、あの先生は人によって態度をガラリと変えると有名な先生だ。目上には腰を低くしてゴマを擦り、気に入らない生徒にはとても厳しい。特待生の夕や比較的真面目な方の私はまずまずだが、これから夕の対応は蝶よ花よと崇め讃えるようなものになるのだろう。

「何かあったら言えよ。ここだけの話、アイツ、前に生徒への性的暴行未遂で問題起こしてんだ」

「「え」」

「気に入った女子生徒を話しがあると言う体で個室に引き込んで事に及ぼうとした事があってな。その女子生徒が彼氏持ちと分かったら逆ギレして大変だったそうだ。まぁ、その件は未遂だったし個室で証人も当人しかいなく、何しろ金で揉み消されたが」

「灰月さん、何で知ってるんですか…?」

「同業柄、こういう話は舞い込んで来るんだ。それこそ、ニュースになっていないような話からこんな裏話まで」

「「へぇー…気をつけます…」」

 私と夕はそれを心に留めたところでまた校内を回っていく。灰月さんは私たちが撮った写真も褒めてくれ、良い気分のまま校舎を後にして校門前に来る。

「じゃあ俺はこれで」

「はい!夕は一緒に帰らないの?」

「え、帰って良いの?」

「だってもうやる事ないし、片付けは明日だもん」

「そっか。じゃあ私も帰っちゃうね」

「うん!また明日ー!」

 ヒラヒラと手を振ってから私は戻ろうとすると、灰月さんは自然な手つきで夕の手を取って恋人繋ぎをする。夕の顔はここからでも分かるくらいに真っ赤になって、何かを灰月さんに言うが灰月さんは笑ってそのまま手を離さず2人で歩く。



 私は胸が甘ったるいものに押し潰されながら、辛めの食べ物を探しに敷地内へと戻った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

「君はいらない」と捨てられた夜、天敵の冷徹社長に「なら、俺が貰う」と拾われました。――手を出さない約束でしたが、彼の理性が限界のようです

葉山 乃愛
恋愛
【婚約破棄から始まる、不器用なライオン(冷徹社長)の猛烈な求愛!】 「俺の妻になるなら覚悟しろ。……もう、指一本逃がすつもりはない」 ★あらすじ★ 「美月は完璧すぎて、可愛げがないんだよ」 28歳の誕生日。 一流ホテルのウエディングプランナーである相沢美月(あいざわ みつき)は、婚約者の裏切りにより、結婚目前ですべてを失った。 雨の降る路地裏。 ヒールも折れ、心も折れてうずくまっていた美月の前に現れたのは、かつての高校時代の天敵であり、現在は勤務先の冷徹な社長 一条蓮(いちじょう れん)だった。 「捨て猫以下だな」 そう憎まれ口を叩きながらも、彼は泥だらけの美月を躊躇なく抱き上げ、最高級ペントハウスへと連れ帰る。 そして、彼が突きつけたのは、あまりにも強引な提案だった。 「住む場所がないなら、俺の家に来い。その代わり――俺の『婚約者』役を演じろ」 利害の一致した契約関係。 条件は「お互いに干渉しないこと」、そして「決して手を出さないこと」。 ……のはずだったのに。 「髪、濡れたままだと風邪を引く」 「あんな男のために泣くな。顔が台無しだ」 同居生活で見えてきたのは、冷徹な仮面の下に隠された、不器用すぎるほどの優しさと独占欲。 美月が作った手料理を誰よりも美味しそうに食べ、元婚約者が復縁を迫ってくれば「俺の女に触れるな」と徹底的に排除する。 天敵だったはずの彼に守られ、凍っていた美月の心は次第に溶かされていく。 しかし、ある雷雨の夜。 美月が不用意に彼に触れた瞬間、一条の理性のタガが外れてしまい――。 「……手を出さない約束? 撤回だ」 「そんな無防備な顔で見つめて、何もしないでいられるほど、俺は聖人君子じゃない」 10年越しの片思いをこじらせたハイスペック社長 × 仕事熱心で恋愛に臆病なプランナー。 契約から始まった二人の関係が、本物の愛(溺愛)に変わるまで。 元婚約者への痛快な「ざまぁ」も収録した、極上の大人のシンデレラストーリー! 【登場人物】 ◆相沢 美月(28) ホテルの敏腕ウエディングプランナー。真面目でお人好しな性格が災いし、「つまらない女」と婚約破棄される。実は家事万能で、酔うと少しだけ甘えん坊になる(本人は無自覚)。 ◆一条 蓮(28) ホテルグループの社長。美貌と才覚を併せ持つが、他人に興味を示さないため「氷の貴公子」と呼ばれる。実は高校時代から美月を一途に想い続けており、彼女のこととなると冷静さを失う。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...