Fランク【竜化】もできない俺は無能と罵られて帝国を追放されたが、SSSランク【竜化】ならできることが判明し、聖女たちとともに最強へ。

ざらざら

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1 二度の追放を経て、SSS級ドラゴンマスターへ!

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「ジン。おまえのような刀が扱えん無能な息子は必要ない。どこへでも行くがいい」

 十二歳の冬。俺は実の父からそう告げられた。そこに続いて兄たちが罵りを重ねていく。

「ひゃっはー! ようやく無能なお前ともおさらばだな!」
「恥ずかしいんだよ。お前みたいなスキル無しが弟だなんて」
「これから君の不快な顔を見なくて済むなんて、夢のようです」

 長兄が俺の首根っこを掴んで豪雪の夜に投げ飛ばす。続けて次兄が残飯を口へと突っ込んでくる。最後に三男が肥溜めの中身を頭からかけてきた。

 三人の笑い声が温かい家の中へと消えていく。ドアが大きな音を立てて閉ざされる。その扉が開かれることは――もう二度とない。猛吹雪の中、俺は無限に続く闇を意味もなく見つめた。

 俺の生家であるカミクラ家は極東に位置する剣豪の一族だ。剣聖や剣帝などと呼ばれるほどの家である。

 だが、俺には刀を扱う才能が全くなかった。

 もちろん努力した。死ぬほど努力した。――だが俺に凡人以上の剣技は生まれなかった。

 手にできたマメがつぶれでも、刀を振り続けた。

 真夏日だろうが、雨だろうが、雪だろうが、刀を振り続けた。

 風邪を引いても、怪我をしても、刀を振り続けた。

 でも、だめだった。自分の非力さと、剣豪の一家に生まれたことに、毎日泣いた。

 親子の縁を切られた理由はそれだけだ。父も、母も、兄たちも、まるで汚物でも見るような目で、いつも俺を見ていた。あいつらは刀ができない子供に用はないのだ。

 雪の吹き荒れる中。俺はただ一人、絶望の夜へと旅立った。


 ――それから、五年の月日が流れる。


「ジン・カミクラ! てめえみたいなFランク竜化もできない無能はクビだ。クビ!」

 SSS級ドラゴンの洞窟で、そう告げられた俺は心の中で「また追放かよ」と舌打ちをした。それにしても何故、ダンジョン攻略中に言うのだ。

 俺に解雇を宣告したのは、帝国竜騎士第七小隊長であるラウダ・ゴードン。

 正直、こいつは嫌いだ。

 それでもラウダはAランク竜化が可能な竜騎士であり、俺の遥か上をいく存在なのは間違いない。そして俺は、確かに最低ランクの竜化もできないただの荷物持ちだ。

 俺がカミクラの家を追い出されてから流れ着いたのは、大陸最強と名高い東欧の帝国竜騎士団である。

 大陸には「竜化」と呼ばれる秘術が存在していた。

 極東ではほとんど使い手のいない技で、騎士と竜とが一体化し、爆発的な力を得るというものだ。

 このことを知った時、俺の胸は高鳴った!

 竜化であればできるかもしれない。刀の才はなくとも、竜の才能ならあるかもしれない。そう思った。

 ――しかし。その希望もあっさりと打ち砕かれる。

 俺は最低ランクであるF級ドラゴンとさえ、契約することができなかったのだ。竜化に関しては努力する術すらない。Fランク以下の俺に、付き合ってくれる竜など存在しないのだから。

 それでも小隊のために必死に働いてきた。竜化できない分、他の人間たちよりも何倍も動き、睡眠を限界まで削ってがんばった。

 こんなところ辞めてしまいたいと思ったことも何度もある。

 だが竜化のできない俺に務まる仕事は少ない。どうにかありつけた荷物持ちですら、貴重なのだ。それだけに身を粉にして尽くしてきたのだが……。

 二度目の――追放か。 

「おいジン・カミクラ。てめえみたいなクズに特別な役目をくれてやる。ありがたく思え」

「な、なんでしょうか?」

 小隊長とその取り巻き達は、さっと卑屈な笑みを浮かべた。

「囮だよ。崖下にいると言われているランクSSSのドラゴンであるデュランダル。そいつの情報が欲しい。お前が食われている間に敵の能力を見極めてやる」

「それは……勘弁してもらえないですかね」

 崖下なんぞに落とされてしまえば、運良く生き残ったとしてもドラゴンやモンスターあたりの餌食になるのが関の山である。冗談ではない。

「お前の意見はどうでもいいんだよ! わざわざSSS級ダンジョンまで連れてきてやったんだ。ありがたく下に降りて役目を全うしろや!」

 ラウダはそう言い放つと、いきなり俺の腹を蹴り飛ばした。

 こいつ、マジかよ!

 苦悶の声が漏れ、俺はヨロヨロと後退する。これがまずかった。

「あ」

 気がついた時には、右足が宙に踊り、底の見えない崖下へと落下していた。

「はははははーっ!」

 小隊長たちの笑い声が遠くに去っていく。

 ああ……儚い人生だったな。何も残せず、何も達することもできなかった。

 その時だった。

 ――汝は、誰なのだ。

 薄れていく意識の中に、少女の声がした。

 そっちこそ、誰だ……?

 ――我はデュランダル。SSS級ドラゴンである竜人姫なのだ。

 デュランダル!

 SSS級ドラゴン、デュランダルか! 本当にここにいたのか。 

 ああ……こいつに喰われてお終いか。せめて痛くないと、いいなあ。

 ――ふーん。ジン・カミクラか。

 SSS級ドラゴンマスターの資格を確認。

 んじゃ盟約を結ぶのだ。

 え? は? 

 SSS級ドラゴンマスターの資格? 盟約?

 このドラゴンは、何を言っているのだ。

 そんな疑問を一切無視して、俺の体は突然炎に包まれた。

 熱い! 熱い! 熱……くない?

「おい。マイマスター。いつまでそうしてるわけなのだ?」

 少女の声がした。

 その声音に導かれるように、俺はゆっくりと瞳を開ける。

 眩しい。

 目が明るさに慣れてくると、俺の前に紅蓮の女の子が立っていた。

 赤いローブとプリーツスカートがとても似合っている。

 その容姿とは反比例するように凄まじいオーラが、少女から放たれていた。

 間違いない。

 こいつはSSS級ドラゴンだ。

 陽光が目を差し、ふと気がつく。ダンジョンであったはずの場所は、いつの間にか窪地のように崩れ落ち、青空が覗いていた。洞窟がまるごと吹き飛んでいる。

「これからよろしくなのだ。マイマスター」

 少女がひまわりのような笑顔を浮かべ、右手を差し出してた。俺は反射的にその手に触れる。

「あ、ああ。えーと状況がいまいちわかってないんだけど……」

「ん? そうなのか?」

 彼女は愛らしく小首を傾げると、すごい力で俺を引き起こす。

「では改めて。我はSSS級ドラゴンのデュランダルちゃん。で、マスターはSSS級ドラゴンマスター。だから我らは盟約を結んだのだ。OKか?」

 え? ええ?

 俺がSSS級ドラゴンマスター?

「そんなわけがない。俺はFランクのドラゴンとすら契約できない劣等生だ」

「その通りなのだ。SSS級マスターは世界で唯一人。そのため雑魚ドラゴンたちと契約できないように聖痕が刻まれているのだ」

 そう言って、デュランダルは俺の胸を指差した。

「マスターの胸に刻まれた十字の痣。それこそが聖痕なのだ」

 この娘、何故それを。

 確かに俺には十字の痣が生まれたときからずっとある。これが聖痕?

「よいかマスター。汝が盟約を結べるのは世界を統べる十三のSSS級ドラゴンのみ。それ以下のドラゴンどもは逃げるか、従属する」

 うそ、だろ? 俺が? SSS級ドラゴンマスター?

 そこではっとした。ダンジョンが崩壊してしまっている!

 小隊長たちは無事だろうか。どんなに憎い相手でも人が死ぬところは見たくない。

「嫌いな相手の心配をするなんて、マスターはとんだお人好しなのだ。大丈夫。あいつら、逃げ足だけはSSS級だった。無事に逃げているのだ」

 そうか……。それはよかった。って、今、こいつ俺の心を読んだのか? 今後は気をつけたほうがいいかもな。

「それにしてもあの小隊長は本当に馬鹿なのだ。マスターが抜けてしまってはドラゴンはもちろん、他のモンスターたちへの牽制力が失われてしまう。まさか自分たちだけでやっていけるとでも、本気で思っているのだろうか……」

 牽制力? 彼女が何か呟いているが、俺には差しあたって重大な問題があった。職を失った。失業してしまったのだ。これからどうするべきか。

「大丈夫なのだ」

 デュランダルがひらりと回ってから、笑顔で言う。

「心配ないのだマイマスター。今やSSS級ドラゴンマスターなのだから、仕事なんて向こうから寄ってくるのだ」

「そ、そういうものなのか? それより俺なんかと契約して、おまえはいいのかよ」

「無論なのだ。我らSSSクラスのドラゴンたちは盟約を結ばなければ、ダンジョンの外に出られないのだ。ようやく出られた。SSS級ランカーがくるのを千年も待ったのだ!」

 そうか……。それならば共生関係ということのようだ。

 だったら、まあいいか。

 俺がSSS級ドラゴンマスター。

 俺がついに竜化できるようになったのか。竜化。憧れの竜化。

 腕に鳥肌が立っていた。

「さあ行くのだマスター。他のSSS級ドラゴンたちも解放してやってほしいのだ!」

「あ、ああ。だがどうやって見つける?」

 彼女はうんうんと、二度うなずいてから言葉を続ける。

「大丈夫! SSS級ドラゴンは全て我の姉妹。全員、テレパシーで繋がっているのだ」

 デュランダルはスカートを翻しながら、丘の向こうへと駆けていく。

「さあ! 行くのだマスター!」

「お、おい。待ってくれよ!」

 こうして二度の追放を経て、デュランダルと俺のSSS級ドラゴン集めの旅が唐突に幕を開けた。

 一方、この日から――俺を追放した小隊長ラウダと、その母国である帝国竜騎士団は崩壊への道を突き進む。
 まあ俺がそのことを知るのは、もっとずっと後のことであるが。
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