超魔人C'NEミュージアン -CHOUJIN CODENAME MUSIAN-

黒鉄ライドウ

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第二話 オーケストラの夜に

君は何も悪くない

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『本当ですか!?……や、安人がそんな目に…』

アルトがミュージアンフォンで父親の渡辺に電話をかけ、事の経緯を全て話した。最初は子供のイタズラ電話かと思われたが、安人の特徴や口調を話すと本当だと分かってくれて幸いだった。

「えぇ、今のお母さんの交際相手の男に暴力を受けています、こちらで治療しておきましたが心のケアまでは、お母さんもその男に心酔してるらしくて」

『なんて事だ…….そんな事が…』

電話越しにも感じる、父親の怒りのこもった声が伝わってくる。息子を守れなかった悔しさもあるのだろう。

「現在は先程メールで指定した住所のホテルの四階にいます。申し訳ありませんが今から迎えに来ていただいても大丈夫でしょうか?」

『もちろんです!すぐに車を出します!そこまでだと1時間過ぎくらいかかりますが』

「分かりました、ですが可能な限り早く来てください、もし奴らに見つかりでもしたら厄介です、こっちも全力で匿っておきますので」

『分かりました』

アルトは(あっそうだ言い忘れる所だった)と思わんばかりに、あるデータを父親の携帯に送った。

「さきほど、お父さんの携帯に安人君が虐待を受けている映像のデータの全てを送りました、もし警察や児相が動いたとしてもそれを証拠として提示すればどうにかなるはずです」

『本当ですか!なっ、なんとお礼を言っていいやら、…けど、どうしてそんな映像を?」

「理由は後で説明します、まずは安人君を無事に安全な所へ送ってからにしましょう」

『はい、それではそちらで落ち合いましょう』

「分かりました、それでは後ほど」とアルトは電話を切った。

あと二時間まで持つかどうか。まぁ、ひとまず問題は一つクリアだ。が、

「ひくっ…えぐっ……」

「ニャ~?」

今の問題はこっちだ、泣き疲れたせいか声は治ったが、どうしたものか、

「大丈夫?少しは落ち着いたかな?」

ベッドで啜り泣く安人を大人に化けたクロマルが背中を優しく撫でながら泣き止むまで落ち着かせる隣で、アルトは安人の隣に座った。

「ママに……ママにおこられる……また…カズトくんにたたかれる…えぐっ」

安人は啜り泣くのを止める事ができないでいた。アルトはそんな安人の頭を優しく撫でる。

「大丈夫、そんな事は絶対にさせないから、今君の本当のパパが迎えに来てくれる、そうしたら何にも心配いらないから」

「うわぁ~ん……ごめんなさい!ごめんなさい!!」

安人は泣き止ませるどころか、更に泣き喚いてしまう。はてさて、どうしたもか、アルトが困っていた時に。

「ねぇ、安人くん……いつも叩かれる時って、なんて言われるの?…」

「……えぐっ……」

安人は少し泣き止み、しばらく黙り込んだ後、言ったのだ。

「ぼくがわるいんだって……ぼくがいうこときかないからって…」

「それは違うよ」

アルトはベッドから降りて安人に顔を合わせて、同じ視線に立った。

「例え君に失敗や間違えがあったとしても、それは口で説明して教えるべき事なんだ、絶対に叩いたり、殴ったりして良い理由にはならないんだよ」

「えっ?」

「体罰や暴言で子供を支配してしまったら……それはもう教育でも躾でも何でもない……人を傷つける……ただの悪質な暴力なんだ」

「………」

「だからね」

アルトは笑いながら安人を撫でた。

「君はそんな大人には絶対になっちゃいけない、本当の教育や躾というのは、心からその子の為を思って、とことん何度でも説明して、教えてあげる事なんだ」

「…….よくわかんない…」

「ハハ、ごめんね、まだ分からないよね、詳しい事はこれから本当のパパに聞いてみると良いよ、つまりね」

アルトは安人を優しく抱きしめる。力をなるべくこめず、包み込むように、

「……君は……何も悪くない…」

「……おにぃちゃん…」

安人もアルトをギュっと抱きしめる。必死に抱きつく、誰にも甘えられず、頼る事もできない絶望の中で、ようやく救いの手を差し出してくれた光を離さないように。

「ニャ~」

クロマルも二人を包み込むように抱きしめる。暖かい、心から落ち着く。

(きっと、お母さんも、こう言っただろうな)

アルトの記憶に微かに残る母親の記憶を思い出した。懐かしい。

でもそんな時だった。

『おっ、お客様!困ります!!勝手に入られては…』

『うるせぇんだよ!!殴られてぇか!!』

「!?」

アルトは「ごめんね」っと安人から離れて扉の近くに立つ。ミュージアンフォンを119のコマンドを入力する

『スコープモード』

アルトはミュージアンフォンを双眼鏡のように持ちスクリーンを間に合わせる。カメラを透視モードで覗いてみたら、

『ここにウチのガキが誘拐されたって言ったんだよ!!さっさと合鍵だせってんだよ!!』

両腕に刺青を入れたガラの悪い男が数名の仲間を引き連れて扉の近くに立っていた。

『ですから!そういうのはまずは警察に言っていただかないと!お客様のプライバシーもありますし!』

『うるせぇ!!渡さねぇなら無理やりこじ開けっぞ!!』

おそらく安人の言っていたカズトだろう、何でここがバレたんだ!?いや、今はそんな事言っている場合じゃない。

安人も先程の声を聞いて怯え始めた。

「ここがバレた!クロマル!安人君を連れて逃げるよ!」

「ニャ!!」

クロマルは安人を抱き抱える。でもどうする?逃げようにも出口はそこの扉しかない、だが、扉のすぐそこには奴らが。

アルトは辺りを見回した。そしてバルコニーに視線を向けた。

『ようやく鍵よこしやがって!』

ドアの鍵が開いた、だがまだチェーンがあるが、長くは持たないだろう。

「仕方ない!!クロマル!安人君を絶対に離さないでね!!」

「ニャ!!」

アルトと安人を抱き抱えたクロマルはバルコニーへと出る。外までの高さは20m以上ある。

「安人君!今から良いっていうまで目を瞑ってね!絶対に開けちゃダメだよ!」

「えっ?……うん」

安人は目を瞑った。アルトはクロマルの背中に捕まると。

「良いよクロマル!飛んで!」

「ニャー!!」

ドアのチェーンが壊れ、扉が開いた瞬間、クロマルは大きくジャンプし、地上に向かって飛び降りた。

そして、地面に着地する瞬間、アルトはミュージアンフォンでクロマルの変身を解除して本来の姿の車輪猫カーキャットの姿に戻す。

車輪が肉球となっているクロマルは着地した瞬間、ポヨンと飛び跳ねた。安人はクロマルの背中にしがみついている。

「よく頑張ったね安人君!」

再びクロマルを人間態にさせ、安人を抱っこさせる。

「走るよクロマル!!」

「ニャ!!」

全速力で走り出した。部屋のバルコニーではカズトが逃げるアルト達を睨みつけながら、

「あのクソガキが……何処までも俺をコケにしやがって……」

額に血管を浮かばせた一人はすぐさま部屋を出て、仲間に言った

「おい!!全員集めろ!!金は幾らでもやる!!安人を俺の元に連れてこい!!」

仲間は外に走り出した。

(もう容赦しねぇ!あいつら……特に安人は俺を手こずらせたら分、みっちり躾てやらねぇとなぁ)

その笑みには邪悪さが滲み出ていた。
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