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第三話 ロックは笑顔の秘訣
美空の幸せ
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アルトは、美空の部屋で美空と一緒に同じベッドの中に入って就寝していた。
隣で横になっている美空は泣き疲れたせいなのかぐっすり就寝している。
(…….仕方ないか、散々辛い目に遭って誰にも頼らなかったんだから…)
アルトは美空の頭を撫でながら、先程浴槽で美空に聞いた話を思い返す。
美空は普段からの容姿と元々人見知りしやすく、コミュニケーションも苦手な性格故に周囲のクラスメイトと打ち解ける事ができないでいたが、いじめられるほどではなかった。
が、本格的にいじめに発展したのは2年の初めの今学期になってからだった。
修学旅行費用としてクラス全員から徴収した100万前後が入った集金袋が担任のロッカーからなくなり、全員で探した結果、何故か美空の更衣室のロッカーから見つかったのだ。
突然美空はやってないと否定しようとしたが、普段から浮いた存在である美空の言葉を信じる者も言い分を聞く者も誰もいなかった。
疑いの目は一斉に美空に向き、その日を境に、担任である里中を含めたクラス全員が美空の敵となった。
基本的にいない者としての無視は当たり前、机には罵詈雑言の落書きと生ゴミが散乱しており、酷い時には椅子には画鋲、そして机には菊の花が本人の写真と一緒に飾ってあった。
登校すれば校門前で誰かに後ろから蹴り飛ばされるし、トイレの個室に入れば雑巾の絞り水をかけられる。
その他にも聞くに耐えないいじめの数々が数え切れないほどでてきた。
耐え切れなくなり、他の教師、果ては教頭や校長にも相談しようとしたが、もし報復で実家の店に被害が出ると思うとできない。
大好きな父に迷惑がかかる、それだけは絶対に嫌だ。
そして、誰にも言えないまま、いじめられる日々が続いているとの事だ。
◇
正直言って、今のアルトはとてつもない怒りではらわたが煮えくり返りそうでとてもじゃないが、眠る気になれなかった。
むしろ怒りに怒りが貯まりまくって目が冴えてしまったくらいだ。
その話を聞いた後、アルトは美空に言った。
「いいかい、明日は絶対に学校を休むんだ、仮病でもなんでいい、絶対に学校に行ってはいけないよ」
「えっ?」
「なんだったら、明日お出掛けしたらいいよ、大丈夫、お金なら俺いっぱい持ってるから心配ないよ」
「でっ、お父さんになんて言えば……それにアルト君に迷惑をかける訳には」
「大丈夫、マスターには俺から事情を説明しておくから、美空お姉さん今までたくさん我慢してきたんだから、明日は一杯発散してきたらいいんだよ、それにね」
「それに?」
「悲しい事、辛い事、それを我慢する事なんてない、辛い時は辛い言っていいんだよ」
「えっ?」
「教師がダメならお父さん、唯一の家族のマスターに相談したっていい、それで奴らが何か起こしてきたなら訴えればいいんだから、それは恥ずかしい事でも情けない事でもない、誰もが持つ権利でそれを侵害する事はあってはならないんだ」
「…………」
「どんな理由があろうと、人が人を蔑み、傷つける事は絶対に許されない事なんだ、たとえ加害者にどんな言い分や抱えてるものがあったとしてもね」
「アルト君……」
「だからね、美空お姉さん、明日はいっぱい幸せな気持ちになるために、好きな事を思いっきりしてくるだ、誰の目も気にせずにね」
「……あっ……ありがとう……」
美空は目に涙を浮かべながらアルトを再び抱きしめた。
誰にも頼れず、学校には敵しかいなかった美空にとってアルトの言葉はまさしく救いの手であったのだ。
◇
翌日、
アルトはマスターに頼み込んで、美空に今日は学校を休ませて街を案内させてほしいと頼み込んだ。
困り果てるかと思いきや、マスターは二つ返事でOKしてくれた。
マスター曰く、普段から店の手伝いや学校の勉強を頑張っているから今日くらい骨休めしてもいいだろうという事らしい。
その日、美空は普段着に着替える、おしゃれに興味がないせいか、ちょっと地味な服装だった。
これはコーディネートのしがいがありそうだ。
アルトとクロマルは互いに親指をグッと出してにっこり笑った。
家をでて向かった先は電車が行き交う駅だ、この近くだと学校帰りにクラスメイトと鉢合わせる可能性があるからなるべくその可能性が少ない電車で三駅先の街まで出かける事になった。
だが、アルトは駅の近くまで来たところで、
「それじゃあクロマル、お姉さんのエスコートとボディーガード、よろしくね」
「ニャ!」
クロマルが元気よく片手をあげ、返事をする。が美空は、
「えっ?もしかしてクロマルさんだけ?…アルト君は?」
「俺はここで別行動するよ、ちょっと調べたい事があるしね、それにせっかくのデート気分をお姉さんには思う存分楽しんで来てほしいんだ」
「それじゃあ、俺はここで、あとは頼むよクロマル」「ニャ!!」という感じでアルトはクロマルに予備の財布を渡して走って何処かへ向かってしまった。
「あの…それじゃあ私達も行きますか?」
「ニャ~」
フンフン!と首縦に振り、クロマルと美空は電車に乗り、目的地へと向かった。
それからは、美空にとって夢のような時間だった。
まず最初は洋服店でおしゃれな服を買う、クロマルが緊急用の予備のミュージアンフォンで最近の流行のトレンドである服を探して、店員に見せ、見繕ってくれた。
次は、美容室、髪型を前髪ボサボサだったのを美しく整え、前髪を姫カットし、後ろ髪は丁寧にミディアムショートぐらいにカットしてからパーマを入れウェーブにする。
終わった頃にはまるで今朝とは別人のようなヘアスタイルになり、美空は天にも昇る気持ちだった。
そこからは色んな場所を巡りまくった。
ゲームセンターでゲームで遊んで、映画館で前から観たかった映画を見て後に、おしゃれな喫茶店で昼食、そこからカラオケだったり、趣味のCDショップ巡りだったり、様々な場所に行ったのだ。
幸せだ、今自分は心の底から幸せだと、美空は思った。
「あの、今日はありがとうございました、クロマルさん」
「ニャ!!」
美空がそう言うとクロマルは笑顔で笑って答えた。
(……ありがとう……アルト君…)
そして、心の中でもう一人の恩人であるアルトにも感謝を伝えたのだった。
隣で横になっている美空は泣き疲れたせいなのかぐっすり就寝している。
(…….仕方ないか、散々辛い目に遭って誰にも頼らなかったんだから…)
アルトは美空の頭を撫でながら、先程浴槽で美空に聞いた話を思い返す。
美空は普段からの容姿と元々人見知りしやすく、コミュニケーションも苦手な性格故に周囲のクラスメイトと打ち解ける事ができないでいたが、いじめられるほどではなかった。
が、本格的にいじめに発展したのは2年の初めの今学期になってからだった。
修学旅行費用としてクラス全員から徴収した100万前後が入った集金袋が担任のロッカーからなくなり、全員で探した結果、何故か美空の更衣室のロッカーから見つかったのだ。
突然美空はやってないと否定しようとしたが、普段から浮いた存在である美空の言葉を信じる者も言い分を聞く者も誰もいなかった。
疑いの目は一斉に美空に向き、その日を境に、担任である里中を含めたクラス全員が美空の敵となった。
基本的にいない者としての無視は当たり前、机には罵詈雑言の落書きと生ゴミが散乱しており、酷い時には椅子には画鋲、そして机には菊の花が本人の写真と一緒に飾ってあった。
登校すれば校門前で誰かに後ろから蹴り飛ばされるし、トイレの個室に入れば雑巾の絞り水をかけられる。
その他にも聞くに耐えないいじめの数々が数え切れないほどでてきた。
耐え切れなくなり、他の教師、果ては教頭や校長にも相談しようとしたが、もし報復で実家の店に被害が出ると思うとできない。
大好きな父に迷惑がかかる、それだけは絶対に嫌だ。
そして、誰にも言えないまま、いじめられる日々が続いているとの事だ。
◇
正直言って、今のアルトはとてつもない怒りではらわたが煮えくり返りそうでとてもじゃないが、眠る気になれなかった。
むしろ怒りに怒りが貯まりまくって目が冴えてしまったくらいだ。
その話を聞いた後、アルトは美空に言った。
「いいかい、明日は絶対に学校を休むんだ、仮病でもなんでいい、絶対に学校に行ってはいけないよ」
「えっ?」
「なんだったら、明日お出掛けしたらいいよ、大丈夫、お金なら俺いっぱい持ってるから心配ないよ」
「でっ、お父さんになんて言えば……それにアルト君に迷惑をかける訳には」
「大丈夫、マスターには俺から事情を説明しておくから、美空お姉さん今までたくさん我慢してきたんだから、明日は一杯発散してきたらいいんだよ、それにね」
「それに?」
「悲しい事、辛い事、それを我慢する事なんてない、辛い時は辛い言っていいんだよ」
「えっ?」
「教師がダメならお父さん、唯一の家族のマスターに相談したっていい、それで奴らが何か起こしてきたなら訴えればいいんだから、それは恥ずかしい事でも情けない事でもない、誰もが持つ権利でそれを侵害する事はあってはならないんだ」
「…………」
「どんな理由があろうと、人が人を蔑み、傷つける事は絶対に許されない事なんだ、たとえ加害者にどんな言い分や抱えてるものがあったとしてもね」
「アルト君……」
「だからね、美空お姉さん、明日はいっぱい幸せな気持ちになるために、好きな事を思いっきりしてくるだ、誰の目も気にせずにね」
「……あっ……ありがとう……」
美空は目に涙を浮かべながらアルトを再び抱きしめた。
誰にも頼れず、学校には敵しかいなかった美空にとってアルトの言葉はまさしく救いの手であったのだ。
◇
翌日、
アルトはマスターに頼み込んで、美空に今日は学校を休ませて街を案内させてほしいと頼み込んだ。
困り果てるかと思いきや、マスターは二つ返事でOKしてくれた。
マスター曰く、普段から店の手伝いや学校の勉強を頑張っているから今日くらい骨休めしてもいいだろうという事らしい。
その日、美空は普段着に着替える、おしゃれに興味がないせいか、ちょっと地味な服装だった。
これはコーディネートのしがいがありそうだ。
アルトとクロマルは互いに親指をグッと出してにっこり笑った。
家をでて向かった先は電車が行き交う駅だ、この近くだと学校帰りにクラスメイトと鉢合わせる可能性があるからなるべくその可能性が少ない電車で三駅先の街まで出かける事になった。
だが、アルトは駅の近くまで来たところで、
「それじゃあクロマル、お姉さんのエスコートとボディーガード、よろしくね」
「ニャ!」
クロマルが元気よく片手をあげ、返事をする。が美空は、
「えっ?もしかしてクロマルさんだけ?…アルト君は?」
「俺はここで別行動するよ、ちょっと調べたい事があるしね、それにせっかくのデート気分をお姉さんには思う存分楽しんで来てほしいんだ」
「それじゃあ、俺はここで、あとは頼むよクロマル」「ニャ!!」という感じでアルトはクロマルに予備の財布を渡して走って何処かへ向かってしまった。
「あの…それじゃあ私達も行きますか?」
「ニャ~」
フンフン!と首縦に振り、クロマルと美空は電車に乗り、目的地へと向かった。
それからは、美空にとって夢のような時間だった。
まず最初は洋服店でおしゃれな服を買う、クロマルが緊急用の予備のミュージアンフォンで最近の流行のトレンドである服を探して、店員に見せ、見繕ってくれた。
次は、美容室、髪型を前髪ボサボサだったのを美しく整え、前髪を姫カットし、後ろ髪は丁寧にミディアムショートぐらいにカットしてからパーマを入れウェーブにする。
終わった頃にはまるで今朝とは別人のようなヘアスタイルになり、美空は天にも昇る気持ちだった。
そこからは色んな場所を巡りまくった。
ゲームセンターでゲームで遊んで、映画館で前から観たかった映画を見て後に、おしゃれな喫茶店で昼食、そこからカラオケだったり、趣味のCDショップ巡りだったり、様々な場所に行ったのだ。
幸せだ、今自分は心の底から幸せだと、美空は思った。
「あの、今日はありがとうございました、クロマルさん」
「ニャ!!」
美空がそう言うとクロマルは笑顔で笑って答えた。
(……ありがとう……アルト君…)
そして、心の中でもう一人の恩人であるアルトにも感謝を伝えたのだった。
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