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陰謀篇
第10話 淑女教育──カーテシー訓練
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「こちらです」
ルーシーに先導されて連れられたのは私の寝室。今はまだ執務室を持たない私は寝室で授業を受けるのだ。
ギィィッ
「どうぞ御入りください」
「では失礼致します」
私とアスター侯爵夫人が寝室に入ったのを確認すると、ルーシーは扉を静かに閉めた。
「改めまして、イライザ・ディ・アスターと申します。イライザとお呼びください」
「ですが、アスター侯爵夫人は私たちの師ですので、呼び捨ては流石に無礼が過ぎるかと……」
「王女殿下に畏まった呼び方をされるのは恐縮してしまいます」
「……ではイライザ様と呼ばせて頂きます。ルーシーにも同じように呼ばせても?」
「もちろんです」
「イライザ様も私たちのことは呼び捨てで呼んでください」
「いえ。フレイア様、ルーシーさんと呼ばせて頂きます。親しき仲にも礼儀ありと言いますし」
どうやら本当に身分に固執していないようだ。ルーシーが私の侍女を続ける限り、貴族社会との関係は切っても切れない。貴族社会では階級を重要視する習慣が多く、ルーシーは必ず口さがない噂を耳にすることだろう。ルーシーが実力を示せれば、彼女はきっとルーシーの味方になってくれるはずだ。
「早速カーテシーの練習にしたいところですが、まずは今後の授業方針を決めましょう。私は生徒と教師が同じ終着点を目指すこと重要だと思いますから」
確かに教師が目指す完成形と生徒が目指す完成形が違っていては教育と成長が噛み合わない。これは授業に割ける時間が少ない状況では致命的だ。
王族や上位貴族、裕福な下位貴族が三歳という早い時期に家庭教師をつけることは少なくない。しかし、その多くは時間をかけてマナー教育をする程度だ。
地学、自然学、政治経済学を学ぶのは領主になり得る者のみ。学び始めるのは次期当主を決めた後──早くて八歳と言ったところだ。これが私が家庭教師を付けるのは五歳くらいだろうと思った理由でもある。語学や算術などを学び始めるのも同様の時期で、人によっては算術以外は学ばないこともある。つまり、私が幼少期のマナー授業に割ける時間は同時期の他の令嬢令息たちと比べると単純計算で四分の一程度。互いが思い浮かべる理想が食い違って生じる無駄なことに時間を割いている暇はない。
「お二人が目指す完成形を決めましょう」
「そう言われましても、マナーについては詳しくないので具体的な完成形は思い浮かばないのですが……」
ルーシーが伺うように言った。その通りだ。私だって前世で王族だったわけでも上流階級だったわけでもない。目指す完成形を問われても、すぐには思い浮かばない。
「それはもちろんです。これから学ぶものを具体的に知っているはずがありませんから。私が言ってるのは、身近な人で目標にしたい人などが居るかという意味です。王妃陛下であったり、王太后陛下であったり、理想とする完成形は人によって異なります」
なるほど。それなら探しやすい。私やルーシーの周囲に居る女性は多くが上位貴族以上。マナーは完璧の域に達していて、細かい違いと言えばそれぞれの性格によって醸し出す雰囲気が違うことくらいだ。
「私はお祖母様のようになりたいです」
「私は王妃陛下でしょうか……」
ルーシーはお母様が憧れのようだ。お祖母様もお母様もカーテシーは達人レベルだ。しかし、醸し出す雰囲気には大きな違いがある。お祖母様が醸し出す雰囲気は重厚感があり上品で、お母様が醸し出す雰囲気は軽やかで柔和で儚い。一言で言えば、お祖母様は所謂王者の風格でお母様は深窓の令嬢だ。
「なるほど。それはバランスが良いですね」
「バランス?」
「フレイア様が王族の醸し出す重厚感で他者を従わせ、ルーシーさんがフレイア様の雰囲気が重くなりすぎないように柔和な雰囲気で華やかさを添える。お二人が完成形に近づくにつれて、そういったスタイルになって行くと思います」
ほほぅ……
流石はイライザ様。社交界デビューした後のことも考えてくれていたようだ。
「お二人が正式に社交界デビューをするのはフレイア様の成人式ですので、まだ十三年の時間がありますが、それまでにも公式の式典や茶会には出席なさります。目前に控えた行事は少女式ですね」
「二年でカーテシーを習得ですか……」
意外と楽だな……
「いえ、他にも学ばなければならないことが沢山あります。なのでお二人には最初の一ヶ月半で習得して貰います」
一ヶ月半っ!?
他の教科の勉強もある中でカーテシーを一ヶ月半で習得するのは簡単ではない。これは相当厳しくなると覚悟しておかなければならない。
「私の持ち得る全てを駆使してお二人を淑女に磨き上げます。厳しい授業になることは覚悟なさってください」
「「はい!」」
教官の命令に返事をする兵隊のように気合の入った返事が二人分、部屋に響いた。
それからは怒涛のカーテシー訓練。イライザ様の全身が写って余りある大きな鏡が運び込まれ、その前で一番優雅で美しく見える角度を探す。慎重、体型、髪色や長さによって美しく見える角度が違うそうで、カーテシーを習得した後も定期的に確認したほうが良いと言われた。そして良い角度を見つけたら後は練習あるのみだ。
この練習方法は効果的ではあるが金がかかる。鏡の作製過程は難しく、大きな鏡を買うとなると平民の家を二、三棟ほど買えるくらいのお金がいる。侯爵以上の財力がなければ夢のまた夢だ。
「フレイア様は首を綺麗に伸ばして!」
「はい!」
「ルーシーさんは背筋を伸ばす!」
「はい!」
何度もダメ出しをされ、やり直す。しかし徐々に良くなっているのが目に見えてわかり、心が折れることはなかった。
「今日はここまでに致しましょう」
「「あ、ありがとうございました」」
何度も繰り返しカーテシーをした上に角度の矯正のために膝を曲げたまま空気椅子状態でイライザ様の指導を受けるので疲労で膝が笑っている。ルーシーも隣で生まれたての子鹿のように脚を震えさせていた。
「イ、イライザ様……脚が…………」
「最初は皆そうなります。私もそうでしたから」
「イライザ様もですか?」
「はい。この練習方法は母から受け継いだやり方で私も初めて授業を受けた日の翌日は筋肉痛で動けませんでした」
これはイライザ様が考え出した練習方法ではなかったのか
「イライザ様はどのように乗り切ったのですか? 私は明日から動けないどころか今すぐ立つことすら難しいのですが……」
「慣れです」
「……イライザ様、他に方法は…………」
「慣れです」
意外にも根性論。私が聞き直しても答えは変わらなかった。
「慣れ……ですか」
「はい。最初は我慢するしかありません。私は筋肉痛が長引くのが嫌だったので毎晩夕食後から湯浴みの前までカーテシーの練習をしていました」
「練習と言うと……」
「鏡の前でカーテシーをする中で最も維持するのが難しい状態を維持し続けるのです。私の場合は膝を曲げ、腰を低くした状態です。筋肉が付けば痛みも減ります」
なるほど。筋肉を酷使し続けるのか……
某テニスアニメでも言っていた。筋肉に強い負荷をかけ筋繊維を一時的に破壊したあと、超回復力で修復することで破壊前の筋肉より強靭な筋肉を作ることが出来るらしい。
「最初は数分程度でしたが一ヶ月もすれば三十分、半年後には一時間、一年後には維持したまま読書が出来るようになりました」
「ど、読書…………」
前世で女子高生テンションを遺憾なく発揮していた頃、どれだけ空気椅子で耐えられるか挑戦したことがある。結果は二分三十五秒。翌日は筋肉痛で寝台から降りられず学校を休み、見舞いに来た友人に笑われた。ある程度成長した身体ですらそうなのだ。今の私では三十秒も保たないだろう。
先は長そうだ…………
早くも心が折れそうになる。私は震える脚に力を込めて寝台へ向かって歩いた。今にも力が抜けてへたり込んでしまいそうなのを根性で耐え、寝台に深く腰掛ける。
「王女殿下。次は武術の授業ですが……」
ルーシーが椅子に座って筋肉の緊張を和らげるために太腿を軽く叩きながら言った。その一言で疲労が一層強くなったように感じる。ただでさえ歩けそうにないのに武術の授業を受けるなど、とてもではないが無理だ。初めて病気は気からというものを体感した気がする。
「その前に着替えましょう。動きやすい服装の方が武術の授業には適しているでしょう?」
「ではお召し替えの用意を致します」
「お願い」
「イライザ様、本日はご指導ありがとうございました。恐れ入りますが、王女殿下のお召し替えの用意を致しますので、本日はお先に失礼致します」
ルーシーはイライザ様に挨拶をした後、少し変な歩き方で部屋を出て行った。
「フレイア様、私も失礼致します。武術の授業まで半晨刻はございますので、ごゆっくりお休みになられてください」
そう言ってイライザ様も部屋を出ていく。私は静かになった部屋で一人、疲労でピクピクと痙攣する脚を揉んだ。
ルーシーに先導されて連れられたのは私の寝室。今はまだ執務室を持たない私は寝室で授業を受けるのだ。
ギィィッ
「どうぞ御入りください」
「では失礼致します」
私とアスター侯爵夫人が寝室に入ったのを確認すると、ルーシーは扉を静かに閉めた。
「改めまして、イライザ・ディ・アスターと申します。イライザとお呼びください」
「ですが、アスター侯爵夫人は私たちの師ですので、呼び捨ては流石に無礼が過ぎるかと……」
「王女殿下に畏まった呼び方をされるのは恐縮してしまいます」
「……ではイライザ様と呼ばせて頂きます。ルーシーにも同じように呼ばせても?」
「もちろんです」
「イライザ様も私たちのことは呼び捨てで呼んでください」
「いえ。フレイア様、ルーシーさんと呼ばせて頂きます。親しき仲にも礼儀ありと言いますし」
どうやら本当に身分に固執していないようだ。ルーシーが私の侍女を続ける限り、貴族社会との関係は切っても切れない。貴族社会では階級を重要視する習慣が多く、ルーシーは必ず口さがない噂を耳にすることだろう。ルーシーが実力を示せれば、彼女はきっとルーシーの味方になってくれるはずだ。
「早速カーテシーの練習にしたいところですが、まずは今後の授業方針を決めましょう。私は生徒と教師が同じ終着点を目指すこと重要だと思いますから」
確かに教師が目指す完成形と生徒が目指す完成形が違っていては教育と成長が噛み合わない。これは授業に割ける時間が少ない状況では致命的だ。
王族や上位貴族、裕福な下位貴族が三歳という早い時期に家庭教師をつけることは少なくない。しかし、その多くは時間をかけてマナー教育をする程度だ。
地学、自然学、政治経済学を学ぶのは領主になり得る者のみ。学び始めるのは次期当主を決めた後──早くて八歳と言ったところだ。これが私が家庭教師を付けるのは五歳くらいだろうと思った理由でもある。語学や算術などを学び始めるのも同様の時期で、人によっては算術以外は学ばないこともある。つまり、私が幼少期のマナー授業に割ける時間は同時期の他の令嬢令息たちと比べると単純計算で四分の一程度。互いが思い浮かべる理想が食い違って生じる無駄なことに時間を割いている暇はない。
「お二人が目指す完成形を決めましょう」
「そう言われましても、マナーについては詳しくないので具体的な完成形は思い浮かばないのですが……」
ルーシーが伺うように言った。その通りだ。私だって前世で王族だったわけでも上流階級だったわけでもない。目指す完成形を問われても、すぐには思い浮かばない。
「それはもちろんです。これから学ぶものを具体的に知っているはずがありませんから。私が言ってるのは、身近な人で目標にしたい人などが居るかという意味です。王妃陛下であったり、王太后陛下であったり、理想とする完成形は人によって異なります」
なるほど。それなら探しやすい。私やルーシーの周囲に居る女性は多くが上位貴族以上。マナーは完璧の域に達していて、細かい違いと言えばそれぞれの性格によって醸し出す雰囲気が違うことくらいだ。
「私はお祖母様のようになりたいです」
「私は王妃陛下でしょうか……」
ルーシーはお母様が憧れのようだ。お祖母様もお母様もカーテシーは達人レベルだ。しかし、醸し出す雰囲気には大きな違いがある。お祖母様が醸し出す雰囲気は重厚感があり上品で、お母様が醸し出す雰囲気は軽やかで柔和で儚い。一言で言えば、お祖母様は所謂王者の風格でお母様は深窓の令嬢だ。
「なるほど。それはバランスが良いですね」
「バランス?」
「フレイア様が王族の醸し出す重厚感で他者を従わせ、ルーシーさんがフレイア様の雰囲気が重くなりすぎないように柔和な雰囲気で華やかさを添える。お二人が完成形に近づくにつれて、そういったスタイルになって行くと思います」
ほほぅ……
流石はイライザ様。社交界デビューした後のことも考えてくれていたようだ。
「お二人が正式に社交界デビューをするのはフレイア様の成人式ですので、まだ十三年の時間がありますが、それまでにも公式の式典や茶会には出席なさります。目前に控えた行事は少女式ですね」
「二年でカーテシーを習得ですか……」
意外と楽だな……
「いえ、他にも学ばなければならないことが沢山あります。なのでお二人には最初の一ヶ月半で習得して貰います」
一ヶ月半っ!?
他の教科の勉強もある中でカーテシーを一ヶ月半で習得するのは簡単ではない。これは相当厳しくなると覚悟しておかなければならない。
「私の持ち得る全てを駆使してお二人を淑女に磨き上げます。厳しい授業になることは覚悟なさってください」
「「はい!」」
教官の命令に返事をする兵隊のように気合の入った返事が二人分、部屋に響いた。
それからは怒涛のカーテシー訓練。イライザ様の全身が写って余りある大きな鏡が運び込まれ、その前で一番優雅で美しく見える角度を探す。慎重、体型、髪色や長さによって美しく見える角度が違うそうで、カーテシーを習得した後も定期的に確認したほうが良いと言われた。そして良い角度を見つけたら後は練習あるのみだ。
この練習方法は効果的ではあるが金がかかる。鏡の作製過程は難しく、大きな鏡を買うとなると平民の家を二、三棟ほど買えるくらいのお金がいる。侯爵以上の財力がなければ夢のまた夢だ。
「フレイア様は首を綺麗に伸ばして!」
「はい!」
「ルーシーさんは背筋を伸ばす!」
「はい!」
何度もダメ出しをされ、やり直す。しかし徐々に良くなっているのが目に見えてわかり、心が折れることはなかった。
「今日はここまでに致しましょう」
「「あ、ありがとうございました」」
何度も繰り返しカーテシーをした上に角度の矯正のために膝を曲げたまま空気椅子状態でイライザ様の指導を受けるので疲労で膝が笑っている。ルーシーも隣で生まれたての子鹿のように脚を震えさせていた。
「イ、イライザ様……脚が…………」
「最初は皆そうなります。私もそうでしたから」
「イライザ様もですか?」
「はい。この練習方法は母から受け継いだやり方で私も初めて授業を受けた日の翌日は筋肉痛で動けませんでした」
これはイライザ様が考え出した練習方法ではなかったのか
「イライザ様はどのように乗り切ったのですか? 私は明日から動けないどころか今すぐ立つことすら難しいのですが……」
「慣れです」
「……イライザ様、他に方法は…………」
「慣れです」
意外にも根性論。私が聞き直しても答えは変わらなかった。
「慣れ……ですか」
「はい。最初は我慢するしかありません。私は筋肉痛が長引くのが嫌だったので毎晩夕食後から湯浴みの前までカーテシーの練習をしていました」
「練習と言うと……」
「鏡の前でカーテシーをする中で最も維持するのが難しい状態を維持し続けるのです。私の場合は膝を曲げ、腰を低くした状態です。筋肉が付けば痛みも減ります」
なるほど。筋肉を酷使し続けるのか……
某テニスアニメでも言っていた。筋肉に強い負荷をかけ筋繊維を一時的に破壊したあと、超回復力で修復することで破壊前の筋肉より強靭な筋肉を作ることが出来るらしい。
「最初は数分程度でしたが一ヶ月もすれば三十分、半年後には一時間、一年後には維持したまま読書が出来るようになりました」
「ど、読書…………」
前世で女子高生テンションを遺憾なく発揮していた頃、どれだけ空気椅子で耐えられるか挑戦したことがある。結果は二分三十五秒。翌日は筋肉痛で寝台から降りられず学校を休み、見舞いに来た友人に笑われた。ある程度成長した身体ですらそうなのだ。今の私では三十秒も保たないだろう。
先は長そうだ…………
早くも心が折れそうになる。私は震える脚に力を込めて寝台へ向かって歩いた。今にも力が抜けてへたり込んでしまいそうなのを根性で耐え、寝台に深く腰掛ける。
「王女殿下。次は武術の授業ですが……」
ルーシーが椅子に座って筋肉の緊張を和らげるために太腿を軽く叩きながら言った。その一言で疲労が一層強くなったように感じる。ただでさえ歩けそうにないのに武術の授業を受けるなど、とてもではないが無理だ。初めて病気は気からというものを体感した気がする。
「その前に着替えましょう。動きやすい服装の方が武術の授業には適しているでしょう?」
「ではお召し替えの用意を致します」
「お願い」
「イライザ様、本日はご指導ありがとうございました。恐れ入りますが、王女殿下のお召し替えの用意を致しますので、本日はお先に失礼致します」
ルーシーはイライザ様に挨拶をした後、少し変な歩き方で部屋を出て行った。
「フレイア様、私も失礼致します。武術の授業まで半晨刻はございますので、ごゆっくりお休みになられてください」
そう言ってイライザ様も部屋を出ていく。私は静かになった部屋で一人、疲労でピクピクと痙攣する脚を揉んだ。
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