料理を作って異世界改革

高坂ナツキ

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終章 迷宮都市

02 迷宮都市

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「おお! あれが迷宮都市か」

 帝国からの道中は特に問題なく……いや、食堂内の肉の備蓄が凄いことになっているが……それ以外は特に問題なく進んだ。
 俺たちの目の前には石造りの街並みが広がり、奥には四本の塔に支えられた巨城が見える。
 巨城は魔王が住んでいた城で、それにつながる塔はダンジョン、あるいは迷宮と呼ばれるものらしい。
 王国にいた頃にウィリアムさんに、帝国にいた時にリヒトに聞いていた通りの光景だ。

「へー、ホントにお城が空にあるんだ」

「なんだか不思議な光景ですけど、空に浮かべる理由はあるんですか?」

「攻めづらいとかあるんだろうけど、よく知らない相手が作ったものだからなぁ」

 この世界に降りてから何年も経つけど、魔王を含む魔族なんかは見たことがないし、魔王が使役していた魔獣という存在にしても肉食獣ということしかわかっていない。
 もしかしたら魔族は全員が空を飛べたかもしれないし、なにがしかの交通手段でも持っていたのかもしれない。
 まあ、魔族は神様が送り出した勇者が不完全ながらも倒したって話だし、俺が生きている間に出会うことはないんだろうな。

「でも、なんかお城に対して街のほうは寂れてる?」

「独特な形のお家ですよね」

 王国では木製の家が主流、聖王国では首都には寄らなかったが立ち寄った村では布を使ったテントのような住居、帝国は木と石を組み合わせた住居だった。
 それに比べて迷宮都市の住居はレンガ造りや、石をくりぬいたような住居がメインで、サイコロ状というか直方体の住居が立ち並んでいる。

「この辺では木は貴重なのかもな」

 別に周辺に森がないわけではないのだが、どう考えても王国や帝国にいた時よりも強そうな魔獣や獣がうようよしているから普通の人が簡単に伐採に行くというわけにもいかないんだろう。
 リヒトやウィリアムさんに聞いた限りでは、迷宮からは様々な物資が出土するらしく、下層階では石がよく産出するらしいんだよな。
 他にも食料や鉱石、生活に必要なものはすべて迷宮からの出土品で賄っているのが迷宮都市らしい。

「マサト兄ちゃんは、この町でも料理を作るんだよね?」

「神様からのお願いだからな」

「ん~、僕はどうしようかな」

「食堂を手伝ってくれてもいいが、この町は王国や帝国に比べると小さいからな……迷宮に潜って食材を探してきてもらった方がいいかもな」

 迷宮都市は小規模の町くらいの大きさで、聖王国で立ち寄った村よりは大きいがそこまでの人数が食堂に来るとは思えない。
 食堂が俺とミーナの二人でまわせそうなら、レイジには食料を確保するためにも迷宮に挑戦してもらった方がいいかもしれない。
 迷宮都市の土壌は荒れ地に近いから、畑を作るにしても数年から十数年はかけて土壌改良をしなきゃ駄目そうだし、肉も野菜も誰かに頼まないと十分な量を確保できないだろうからな。

「そっか、じゃあ僕は迷宮に入ってみようかな」

「わたしはマサトさんのお手伝いをしますね」

「よし、じゃあ俺とミーナは食堂で迷宮都市の住人に料理を振舞う、レイジは迷宮に入って新しい食材を見つけてきてくれ」

 とりあえずのこの街での方針はこれだな。
 まあ、迷宮都市には迷宮に挑戦している冒険者や、各国から派遣されて調査をしている騎士や軍人がいるらしいから最悪はその人たちに食料を譲ってもらって料理を作ることになるかもな。

「確か、勇者様以外であのお城にたどり着いた人はいないんだよね?」

「リヒトはそう言ってたな」

「じゃあ、僕の目標はあのお城まで行くことにするよ!」

「ああ、レイジの実力なら行けるかもな」

 王国にいた頃は騎士団の精鋭にはかなわなかったレイジだが、帝国では帝国軍の精鋭複数相手に対等に戦ってたしな。
 レイジの強さはこの世界でもかなり上位に位置するのだろう。
 迷宮都市にいるのはほとんどが料理のりょの字も知らないような人間ばかりだから、ステータスも初期状態に近いだろうし、案外、本当に塔の上の城に一番乗りになるのはレイジかもな。
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