21 / 140
幼少期
21 ウイスキーボンボンの試作とフランスパン
しおりを挟む
「ほう、チョコレートの中にウイスキーを入れるなんて奇抜なと思いましたが、なかなかに簡単なものなんですね」
「温度管理さえできたら子供にだってできるからね」
「そうですが、坊ちゃん1人で作るのはダメですぜ。熱いチョコレートがかかったら一大事ですからね」
「わかってるよ。そもそも重いし、混ぜるのも大変だから1人で作ろうなんて思わないよ」
というわけで、今日はユリア叔母さんが届けてくれたチョコレートでウイスキーボンボン作りに励んでいる。
正直、自分で食べるわけでもないのに作っているのは謎だが、ゲルハルディ領ではウイスキーを製造しているし、チョコレートの輸入はバルディ領がメインだから特産品になると思ってのことだ。
前世、野郎な俺がウイスキーボンボンを作れるなんておかしいと思われるかもしれないが、取引先の社長がウイスキーボンボン大好きで、自分でも作っていると言うからコミュニケーションとして一緒に作ったことがあるんだよな。
割と簡単だったから、他の取引先にも配り歩いていたら、意外と好評で何度もねだられて覚えてしまったというわけだ。
「で、坊ちゃん。何やらパンも何かしたという話でしたか」
「そうそう。今のパンって柔らかいのしかないじゃん? 硬いパンも食べたいなって」
「硬い? 柔らかい方が食べやすいでしょう」
この世界のパンはシナリオライターの好みが反映されていて柔らかい……というよりも柔らかすぎるパンしか存在しない。
奴は食パンを出せば耳を残し、ハードタイプのパンは当然だが、焼きたてのフランスパンでさえ見向きもしなかった男だ。
そんな奴の好みが反映されているのか、この世界のパンは前世で流行っていたモチモチパンやコッペパンばかりなんだ。
まあ、それらも美味しいのだが、俺はガーリックフランスやベーコンエピなんかのハードパンに工夫を施したパンが食べたいんだ!
「まあまあ、これも虫除けの実と一緒だよ。嫌いな人もいるかもしれないけど、好きな人もいるかもしれないでしょ」
「まあ、そうですな。で、これも何か画期的な素材が必要なのですかい?」
「いやいや、むしろいつものパンよりも幾分か手抜きしていいくらいだよ。砂糖は塩と同じくらいでいいし、いつもよりも捏ねすぎないことが重要かな」
「ふむ」
「小麦粉は強力粉だけじゃなくて薄力粉も少し混ぜて……あ、オーブンはいつもよりも高い温度にしてね。余熱250度、200度くらいで10分くらい焼く感じかな」
「そいつぁ、焦げねえですかい?」
「砂糖が少ないから平気なはず……まあ、一緒に作ってみようよ。俺は口を出すだけになるけど」
「へえへえ。よしっ、お前ら、坊ちゃんの言うとおりに作るんだぞ」
「「「はい」」」
唐辛子やタバスコなんかの売り上げの一部を特別給金として、試作に協力してくれた料理人に配ったこともあって、貴族の坊ちゃんである俺がこうして調理室に入っても何も言われなくなった。
どころか、若手を中心に俺の試作には協力的で、こうして料理長を含めて何人かの若手が手伝ってくれるようになった。
まあ、保守的な人やここで働いているのは生きるためで腕を磨こうと思ってない人は見向きもしないが、まあ、こっちがわがままを言っているんだからそういう人がいるのは当然だ。
「坊ちゃん、分量はこんな感じで?」
「うん、多分それで大丈夫だよ」
「……捏ねない……捏ねない」
「……結構べたつくな」
「生地がまとまったら一次発酵だね。……俺は外で体力づくりしてくるから、料理長たちはいつもの仕事でもしておいてよ。1時間くらいしたら戻ってくるからさ」
「へい。……ほれ、お前ら夕飯の下ごしらえをするぞ!」
というわけで、発酵時間はやれることがないので、レナとともに外で走ってくることに。
剣を振るには時間が足らないし、休憩をはさみながら走り込みをしていれば1時間なんてあっという間にすぎるからな。
――――――――――――
「……うーん。大体2倍になったかな」
「あとは普通のパンと同じで?」
「ええとね、平べったく伸ばしたら3つ折りにしてほしいんだよね。楕円形になるような感じで」
作ろうとしているのはパリジャンではなく、バタールなのでそれほど長くはしないが、やはりあの楕円形の形にならないとフランスパンっぽくないだろう。
「ほうほう、こんな感じで」
「うんうん、そうそう。やっぱりみんな毎日パン作ってるだけあってうまいね」
「全員が毎日ではないですがね。それよりも普通の生地よりもべたつくので作りづらいっちゃ作りづらいですな」
「ま、その辺も慣れてよ。あとは40分くらい2次発酵させたら、オーブンで焼いていくからオーブンの準備もお願いね」
「もちろんでさぁ。で、坊ちゃん、他に気を付けることは?」
「二次発酵が済んだら、粉を軽く振って切れ目を入れること。オーブンに生地を入れる前に霧吹きで水を吹きかけて素早くオーブンに入れる……くらいかな。あとは気に入ったら研究してよ」
「オーケー、じゃ、坊ちゃんたちは二次発酵が終わるまでまた、走り込みですかい?」
「そうだね、ちょっと行ってくるよ」
「温度管理さえできたら子供にだってできるからね」
「そうですが、坊ちゃん1人で作るのはダメですぜ。熱いチョコレートがかかったら一大事ですからね」
「わかってるよ。そもそも重いし、混ぜるのも大変だから1人で作ろうなんて思わないよ」
というわけで、今日はユリア叔母さんが届けてくれたチョコレートでウイスキーボンボン作りに励んでいる。
正直、自分で食べるわけでもないのに作っているのは謎だが、ゲルハルディ領ではウイスキーを製造しているし、チョコレートの輸入はバルディ領がメインだから特産品になると思ってのことだ。
前世、野郎な俺がウイスキーボンボンを作れるなんておかしいと思われるかもしれないが、取引先の社長がウイスキーボンボン大好きで、自分でも作っていると言うからコミュニケーションとして一緒に作ったことがあるんだよな。
割と簡単だったから、他の取引先にも配り歩いていたら、意外と好評で何度もねだられて覚えてしまったというわけだ。
「で、坊ちゃん。何やらパンも何かしたという話でしたか」
「そうそう。今のパンって柔らかいのしかないじゃん? 硬いパンも食べたいなって」
「硬い? 柔らかい方が食べやすいでしょう」
この世界のパンはシナリオライターの好みが反映されていて柔らかい……というよりも柔らかすぎるパンしか存在しない。
奴は食パンを出せば耳を残し、ハードタイプのパンは当然だが、焼きたてのフランスパンでさえ見向きもしなかった男だ。
そんな奴の好みが反映されているのか、この世界のパンは前世で流行っていたモチモチパンやコッペパンばかりなんだ。
まあ、それらも美味しいのだが、俺はガーリックフランスやベーコンエピなんかのハードパンに工夫を施したパンが食べたいんだ!
「まあまあ、これも虫除けの実と一緒だよ。嫌いな人もいるかもしれないけど、好きな人もいるかもしれないでしょ」
「まあ、そうですな。で、これも何か画期的な素材が必要なのですかい?」
「いやいや、むしろいつものパンよりも幾分か手抜きしていいくらいだよ。砂糖は塩と同じくらいでいいし、いつもよりも捏ねすぎないことが重要かな」
「ふむ」
「小麦粉は強力粉だけじゃなくて薄力粉も少し混ぜて……あ、オーブンはいつもよりも高い温度にしてね。余熱250度、200度くらいで10分くらい焼く感じかな」
「そいつぁ、焦げねえですかい?」
「砂糖が少ないから平気なはず……まあ、一緒に作ってみようよ。俺は口を出すだけになるけど」
「へえへえ。よしっ、お前ら、坊ちゃんの言うとおりに作るんだぞ」
「「「はい」」」
唐辛子やタバスコなんかの売り上げの一部を特別給金として、試作に協力してくれた料理人に配ったこともあって、貴族の坊ちゃんである俺がこうして調理室に入っても何も言われなくなった。
どころか、若手を中心に俺の試作には協力的で、こうして料理長を含めて何人かの若手が手伝ってくれるようになった。
まあ、保守的な人やここで働いているのは生きるためで腕を磨こうと思ってない人は見向きもしないが、まあ、こっちがわがままを言っているんだからそういう人がいるのは当然だ。
「坊ちゃん、分量はこんな感じで?」
「うん、多分それで大丈夫だよ」
「……捏ねない……捏ねない」
「……結構べたつくな」
「生地がまとまったら一次発酵だね。……俺は外で体力づくりしてくるから、料理長たちはいつもの仕事でもしておいてよ。1時間くらいしたら戻ってくるからさ」
「へい。……ほれ、お前ら夕飯の下ごしらえをするぞ!」
というわけで、発酵時間はやれることがないので、レナとともに外で走ってくることに。
剣を振るには時間が足らないし、休憩をはさみながら走り込みをしていれば1時間なんてあっという間にすぎるからな。
――――――――――――
「……うーん。大体2倍になったかな」
「あとは普通のパンと同じで?」
「ええとね、平べったく伸ばしたら3つ折りにしてほしいんだよね。楕円形になるような感じで」
作ろうとしているのはパリジャンではなく、バタールなのでそれほど長くはしないが、やはりあの楕円形の形にならないとフランスパンっぽくないだろう。
「ほうほう、こんな感じで」
「うんうん、そうそう。やっぱりみんな毎日パン作ってるだけあってうまいね」
「全員が毎日ではないですがね。それよりも普通の生地よりもべたつくので作りづらいっちゃ作りづらいですな」
「ま、その辺も慣れてよ。あとは40分くらい2次発酵させたら、オーブンで焼いていくからオーブンの準備もお願いね」
「もちろんでさぁ。で、坊ちゃん、他に気を付けることは?」
「二次発酵が済んだら、粉を軽く振って切れ目を入れること。オーブンに生地を入れる前に霧吹きで水を吹きかけて素早くオーブンに入れる……くらいかな。あとは気に入ったら研究してよ」
「オーケー、じゃ、坊ちゃんたちは二次発酵が終わるまでまた、走り込みですかい?」
「そうだね、ちょっと行ってくるよ」
173
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。
とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。
…‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。
「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」
これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め)
小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる