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幼少期
42 エルメライヒ公爵との会談
「これはこれは、急な訪問に応えて頂いて恐縮ですな」
俺と父上の目の前には、エルメライヒ公爵と名乗る人物が座っている。
基本的には爵位持ち同士で会合をすればいいので、俺はいなくてもいいのだが、エルメライヒ公爵がアポイントメントを求めた時に父上の名前と連名で俺が指名されていた。
こうなってくると、7歳だからとか、貴族学園入学前だからとか、爵位持ちではないからとか、いろいろと言い訳を連ねて断るわけにもいかない。
そもそも、陛下に謁見している時点で貴族としての最低限は出来ているということになるので、陛下に次ぐ公爵位の人間相手にそんな言い訳は通用しなくなるんだよな。
「辺境の一伯爵に公爵閣下がアポイントメントを求めてくださったのです。無下には致しませんよ」
「まあ、そう固くならないでほしいな。こちらとしては友誼を結びたくての訪問だ」
エルメライヒ公爵が一見友好的に見える笑顔で話しかけてくるが、貴族である以上それを簡単に信じるわけにはいかない。
友好的に握手を求めて、笑顔で殴ってくるのが貴族というものだからな。
「それはそれは。ですが、エルメライヒ公爵とは派閥も違いますし、商取引もない。友誼を結ぶメリットはないのでは?」
「なに、ゲルハルディ伯爵家は我が家が伯爵に任命したミネッティ伯爵家に婚約の打診をしたとか」
「打診……で終わりましたがな。ミネッティ伯爵家内で情報共有が出来ていなかったようで、顔合わせが始まる前に婚約の話は無くなりましたよ」
「ほう、それは。流石にそこまでの阿呆を伯爵に任命したつもりはないのですが」
「ですが、それが事実ですよ。それは伯爵家に仕えていた者たちも、我が家に仕えている者たちも目撃しています」
ま、あれは流石に擁護のしようがない。
顔合わせのために領地まで訪問した相手に対して、顔を合わせるなり婚約するわけがないなんて同格相手としても失礼すぎる。
「ま、ミネッティ伯爵のことは後々考えさせてもらうが、ウチにもマックス君と同い年の娘がいてね」
「エルメライヒ公爵、発言をお許しいただけますか?」
「ああ、もちろんだよ。こうして同席しているんだ、気になることがあったらどんどん発言してくれたまえ」
「ありがとうございます。……私は先日、婚約者との婚約が陛下に承認されたばかりです。もちろんエルメライヒ公爵閣下はご存じとは思いますが、それを踏まえてお話をお願いします」
「はっはっは、確かにそれは重要だ。いくら王族に連なる公爵家とは言え、陛下の承認なさった婚約に異を唱えるなど愚の骨頂だからな。ま、話はそうではなくマックス君には娘の友人になってほしいのだよ」
「……友人、ですか?」
「うむ。ミネッティ伯爵には期待していたのだが、令嬢があの様子では娘の友人にはふさわしくないのでな。何もわざわざ出向いてくれとは言わんが、王都に来た際や貴族学園入学時には仲良くしてほしいのだよ」
「ですが、私は貴族学園では領主経営科に進みますよ? エルメライヒ公爵令嬢は家政科では?」
貴族学園にもいくつかの科があり、領主を育成する領主経営科、領主夫人を育成する家政科、騎士を育成する騎士科、文官を育成する文官科、貴族夫人を育成する淑女科などがある。
ゲルハルディ伯爵を継ぐ俺はもちろん領主経営科、領主夫人になるレナは家政科、ラスボス悪役令嬢のローズマリー・フォン・エルメライヒも家政科のはずだ。
「家政科に進ませるつもりだが、まだわからんな」
「……まだ? エルメライヒ公爵令嬢は既に貴族学園に通っているのでは?」
ゲームだとそうだ。主人公を伴ってローズマリーは初等部から学園に通っているはずなので、7歳なら既に学園に通っている。
「ああ、実は初等部から通わせようとしていたのだが、嫌がってな。初等部に通っているのは王都住まいの子爵令嬢ばかりだから嫌だと」
「……侯爵令息や伯爵令息もいるのでは?」
「男と女では違うだろう。それに、侯爵家は中央貴族ではなく王都貴族だし、伯爵令息はウチの傘下にはいないからな」
なるほど、確かに初等部に通える子供を持つ侯爵家は王宮に仕えている侯爵家ばかりだし、エルメライヒ公爵家の傘下ではミネッティ伯爵令嬢くらいしか初等部に通える年齢はいないはず。
だからといって、派閥も違えば中央にもいない辺境の伯爵令息に頼むことか?
「エルメライヒ公爵は王家派から離れるおつもりか?」
「……是とも否とも言えんな。我が家は子供がローズマリー1人、そしてローズマリーで4代目になるので公爵を名乗るのは難しいだろう。婿を取れば伯爵家、嫁に行けば公爵家はなくなる」
この国の公爵家は王宮から離れた王族が名乗るものだが、公爵を名乗れるのは3代目まで、4代目以降は功績次第だが伯爵か男爵になる。
エルメライヒ公爵家はそれなりに国に尽くしているから伯爵になるだろうけど、それでも今までの生活とはかけ離れたことになるだろうな。
俺と父上の目の前には、エルメライヒ公爵と名乗る人物が座っている。
基本的には爵位持ち同士で会合をすればいいので、俺はいなくてもいいのだが、エルメライヒ公爵がアポイントメントを求めた時に父上の名前と連名で俺が指名されていた。
こうなってくると、7歳だからとか、貴族学園入学前だからとか、爵位持ちではないからとか、いろいろと言い訳を連ねて断るわけにもいかない。
そもそも、陛下に謁見している時点で貴族としての最低限は出来ているということになるので、陛下に次ぐ公爵位の人間相手にそんな言い訳は通用しなくなるんだよな。
「辺境の一伯爵に公爵閣下がアポイントメントを求めてくださったのです。無下には致しませんよ」
「まあ、そう固くならないでほしいな。こちらとしては友誼を結びたくての訪問だ」
エルメライヒ公爵が一見友好的に見える笑顔で話しかけてくるが、貴族である以上それを簡単に信じるわけにはいかない。
友好的に握手を求めて、笑顔で殴ってくるのが貴族というものだからな。
「それはそれは。ですが、エルメライヒ公爵とは派閥も違いますし、商取引もない。友誼を結ぶメリットはないのでは?」
「なに、ゲルハルディ伯爵家は我が家が伯爵に任命したミネッティ伯爵家に婚約の打診をしたとか」
「打診……で終わりましたがな。ミネッティ伯爵家内で情報共有が出来ていなかったようで、顔合わせが始まる前に婚約の話は無くなりましたよ」
「ほう、それは。流石にそこまでの阿呆を伯爵に任命したつもりはないのですが」
「ですが、それが事実ですよ。それは伯爵家に仕えていた者たちも、我が家に仕えている者たちも目撃しています」
ま、あれは流石に擁護のしようがない。
顔合わせのために領地まで訪問した相手に対して、顔を合わせるなり婚約するわけがないなんて同格相手としても失礼すぎる。
「ま、ミネッティ伯爵のことは後々考えさせてもらうが、ウチにもマックス君と同い年の娘がいてね」
「エルメライヒ公爵、発言をお許しいただけますか?」
「ああ、もちろんだよ。こうして同席しているんだ、気になることがあったらどんどん発言してくれたまえ」
「ありがとうございます。……私は先日、婚約者との婚約が陛下に承認されたばかりです。もちろんエルメライヒ公爵閣下はご存じとは思いますが、それを踏まえてお話をお願いします」
「はっはっは、確かにそれは重要だ。いくら王族に連なる公爵家とは言え、陛下の承認なさった婚約に異を唱えるなど愚の骨頂だからな。ま、話はそうではなくマックス君には娘の友人になってほしいのだよ」
「……友人、ですか?」
「うむ。ミネッティ伯爵には期待していたのだが、令嬢があの様子では娘の友人にはふさわしくないのでな。何もわざわざ出向いてくれとは言わんが、王都に来た際や貴族学園入学時には仲良くしてほしいのだよ」
「ですが、私は貴族学園では領主経営科に進みますよ? エルメライヒ公爵令嬢は家政科では?」
貴族学園にもいくつかの科があり、領主を育成する領主経営科、領主夫人を育成する家政科、騎士を育成する騎士科、文官を育成する文官科、貴族夫人を育成する淑女科などがある。
ゲルハルディ伯爵を継ぐ俺はもちろん領主経営科、領主夫人になるレナは家政科、ラスボス悪役令嬢のローズマリー・フォン・エルメライヒも家政科のはずだ。
「家政科に進ませるつもりだが、まだわからんな」
「……まだ? エルメライヒ公爵令嬢は既に貴族学園に通っているのでは?」
ゲームだとそうだ。主人公を伴ってローズマリーは初等部から学園に通っているはずなので、7歳なら既に学園に通っている。
「ああ、実は初等部から通わせようとしていたのだが、嫌がってな。初等部に通っているのは王都住まいの子爵令嬢ばかりだから嫌だと」
「……侯爵令息や伯爵令息もいるのでは?」
「男と女では違うだろう。それに、侯爵家は中央貴族ではなく王都貴族だし、伯爵令息はウチの傘下にはいないからな」
なるほど、確かに初等部に通える子供を持つ侯爵家は王宮に仕えている侯爵家ばかりだし、エルメライヒ公爵家の傘下ではミネッティ伯爵令嬢くらいしか初等部に通える年齢はいないはず。
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