気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
62 / 140
幼少期

62 ローズマリー嬢の好み

しおりを挟む
「どうしたら名前で呼んでくださるの?」

「はあ~、私がファーストネームを呼び捨てにする女性は家族とレナだけです。……ですので、ローズマリー嬢と、そうお呼びしましょう」

「それで結構よ、マックス! レナもそれでいい!?」

「は~、もうそれでいいですよ」

「わ、私も問題ありません」

「うふふ、初めてのお友達だわ」

 爵位が上の人間が親しい下位の人間をファーストネームで呼び捨てにする場合は多いから、エルメライヒ公爵令嬢……いや、ローズマリー嬢の呼び方は問題ないだろう。
 一応、レナの様子もうかがってみるが、ローズマリー嬢に急に距離を詰められてビックリはしているものの、俺の呼び方に関して不満はなさそうだ。
 ま、レナにとっても年の近い友人は俺やアンナ以外では初だし、途惑っている方が強そうかな。

「で、結局何をしにゲルハルディ領までやってきたのですか?」

「お友達になったのだし、もう少し砕けた話し方をしてくださる?」

「はあ~、で、何しに来たんだ?」

「お婿さんを探しに来たのよ!」

 その言葉に隣にいたレナがビクッとする。

「言っておくが、レナとの婚約は陛下の承認もあるから解消できないぞ」

「そんなつもりで言ってないわよ!」

 ま、当事者である両者、婚約を結んだ両家の当主の全員が同意すれば解消できなくもないが、俺自身が解消する気がないから無理だろうな。

「そういうつもりでないとなるなら、どういうつもりだ?」

「辺境の騎士ってたくましい人が多いのでしょう? お父様も辺境伯の誰かに打診したいと言っていたし、直に見てみたくって」

「? ウチにはローズマリー嬢よりも年下の騎士はいませんよ?」

「? 年上でもいいじゃない?」

「??? 年上は嫌ではなかったのですか? エルメライヒ公爵からはそう聞いていますよ」

 確か、お父様のような方は嫌! という身も蓋もないことを言われたとか言っていたぞ。
 エルメライヒ公爵はかなり年下の令嬢を嫁にもらっていたから、年上が嫌だと解釈していたのだが……。

「年上は別に嫌じゃないわよ? あまりにも年齢が離れていれば会話が合わないから嫌だけど……」

「……エルメライヒ公爵のような方は嫌だと言っていたのでは?」

「……ああ、そういう。違うわよ、お父様のような方は嫌とは言ったけれど、年のことじゃないわ。お父様のように無駄に太っている方が嫌という意味よ」

 あ~、そういう? 確かにゲーム内の主人公も……平民というか孤児だから当然だけど……痩せていたしな。
 てっきり年上嫌いから同い年なゲームの主人公を拾ったのかと思ったら、太っている人間が嫌だからか~。
 とはいえ、この国の王都周辺では太っている男は、着飾っている女は富の象徴だから、完全にローズマリー嬢の趣味が悪いってことになるんだよなぁ。
 あ、辺境周辺ではそもそも戦えなければ生き残れないので、富を持っているかよりも強いかどうかが良い男の基準だ。

「……わかりました。そういうことなら、騎士団の訓練場に案内しましょう」

「ふふ、楽しみだわ」

「言っておきますが、ウチの騎士団からの引き抜きは厳禁ですからね」

「言葉遣いが戻っていますわよ。……別に本人の同意があれば止められるものでもないでしょう?」

「同意があれば……ですね。ウチの騎士団連中は手ごわいですよ」

 ローズマリー嬢を連れてレナと一緒に騎士団の訓練場に向かうことになったが、レナもローズマリー様と呼ぶことにし、なかなかに話は出来ているようだ。
 決して、話がはずんでいるわけではないが、ローズマリー嬢の質問に対してレナも恐る恐るながらも、きちんと受け答えが出来ている。
 母上から受けていた淑女教育は順調のようで、公爵令嬢という格上の相手であってもきちんと話せているようだな。
 とはいえ、ローズマリー嬢の方がレナの話し方に不満があるようで、もっと砕けた話し方をしろとしきりに言っているが……。

「ローズマリー嬢、訓練場に着きましたよ」

「ふうふう、いい運動になったわね」

「……直ぐ近くじゃないですか」

 実際、騎士団の訓練場は屋敷に隣接しているので、ほとんど歩いていない。
 まあ、王都周辺の公爵令嬢ともなればこの距離でも疲れるのかもしれないが。

「マックス様、本日は訓練でしょうか?」

「ああ、クルト。通達があったと思うが、ローズマリー・フォン・エルメライヒ公爵令嬢をお連れした。わかっていると思うが、騎士連中に粗相をしないように知らせてくれ」

「わかっております」

 訓練場に着いたと同時に、既に俺のお世話係として騎士団に認定されているクルトがやってきた。
 まあ、どうせ誰かにローズマリー嬢のことを全体通達させなければならなかったから、手間が省けたと思っておこう。

「ローズマリー嬢、危険なのであまり訓練場には……」

「マックス、あの方はクルトという名前なの?」

 おいおい、ちょっと目を離したすきにローズマリー嬢が顔を赤くしてぽーっとしてるんだが、まさかじゃないよな!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

ソードオブマジック 異世界無双の高校生

@UnderDog
ファンタジー
高校生が始める異世界転生。 人生をつまらなく生きる少年黄金黒(こがねくろ)が異世界へ転生してしまいます。 親友のともはると彼女の雪とともにする異世界生活。 大事な人を守る為に強くなるストーリーです! 是非読んでみてください!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...