気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

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幼少期

91 ゴールディ特使

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「おお~、よく来たマックス!」

「本当によく来てくださいました、マックス様」

 俺たちを迎えてくれたのは爺様と、なぜか屋敷で働いているはずのヨーゼフだ。

「爺様、伝令を聞きマックスやってまいりました……で、ヨーゼフはなぜいるのです?」

「うむ。ジャンバ島、特使などの単語は分かったのでな、歓待するためにも屋敷から何人か来てもらったのだ」

 特使だというのが本当かどうかはわからないが、本当だと考えて歓待だけはしておいたということか。
 まあ、嘘だったらその分働かせればいいだけだし、無難かな。

「で、その特使とやらはどこにいるのです?」

「うむ、港にある迎賓館に逗留してもらっておるよ」

「迎賓館……勝手に使って良かったのですか?」

「メーリング領の領主が逃げ出してしまったからのぉ」

「ちなみに、襲ってきた勢力は……?」

「漁船に乗って撃退しておいたわ。マックスからの報告通りの旗を掲げておったから、南大陸の侵略者じゃろう」

 撃退……確かに漁港の方に目を向けると、バルディ領を襲った敵対船が掲げていた旗と同一の旗を掲げている船が何隻か停泊している。
 シナリオライターの設定ではメーリング領が襲われたというのはなかったはずだが、どういうことだ?
 可能性としては俺がバルディ領近海で敵船を撃退したことから、集合予定の船がメーリング領まで逃げのびてきた。
 あるいは、シナリオライターが俺たちにも内緒で設定を追加していた、ということくらいか。

「こちらにも王家からの視察を要請しますか?」

「残党狩り程度で報告は不要よ。戦果はすべてマックスの物じゃ。……それに今更、爵位を返上しておる爺がでしゃばっても良いことはないじゃろ」

 まあ、陛下としても引退した爺様には爵位は授与できないからな。
 なんせ爺様が引退するときには王都騎士団顧問に、やら名誉爵位の授与を、やらの話もあったらしいが、爺様が断っているからな。
 国としても国一の海戦の名手である爺様を縛り付けておきたかったのだろうが、すべて断られた挙句、爺様はゲルハルディ領で活躍しているから諦めたらしい。

「爺様の戦果を横取りしたと言われないでしょうか?」

「バルディ領での戦果だけで辺境伯への叙爵は確実じゃ。わしの戦果を少し足したとて、ゲルハルディ家への褒章が増えるだけじゃから結果は変わらんよ」

 はあ、やっぱり辺境伯になるんだ……。いや、バルディ領にいる時点でわかってはいたが、爺様に言われると現実味が増すな。

「まあ、それは良いです。私は私で仕事をするので……迎賓館まで案内をお願いできますか?」

「うむ。もう少し孫と戯れておりたいが、客人を待たせすぎるのもよくないじゃろ」

 とりあえず、爺様との情報共有はこの辺で、ジャンバ島の特使とやらに会いに行くことにしますかね。

『はじめまして、ゴールディの特使のソウタ・アラガミと申します』

『これはご丁寧に。ヴァイセンベルク王国の伯爵子息、マックス・フォン・ゲルハルディと申します』

 おいおい、いきなり話が違うんだが! ジャンバ島の特使じゃなくてゴールディとかいう謎の国の特使なんだが!
 だがまあ、ジャンバ島で使われているというジャンバリ語が通じるあたり、その近海の国なんだろうけど。

『特使殿、交易共通語でジャンバ島という言葉を話していたようですが?』

『ええ、我が国はジャンバ島の東に位置する島国で、交易のためにやってきたのです』

『ふむ、それでジャンバリ語で話されるのですね。生憎、この国ではジャンバリ語を解せる人間は少なくて』

『ええ、本当に。ジャンバ島でうわさは聞いていたのですが、交易共通語だけでの意思疎通は難しくて。……ゲルハ…伯爵令息が来てくれて助かっています』

『呼びにくいでしょう。マックスで良いですよ』

『では、こちらも気軽にソウタと呼んでください』

 しっかしなんだ? ゴールディ……マジで聞いたことない国なんだが、シナリオライターのやつ設定資料に書き忘れたのか?

『ソウタ殿は交易にきたという話ですが、売りたいものが? それとも我が国から何か買いたいものが?』

『両方です。……じつはわが国では食料危機が起こっているのです。主要作物が病にかかり、穀物が取れないのです』

 ははあ、まあこれもよくあることだな。前世でも主要作物が流行り病にかかり、国民が四分の一も減ったなんて歴史もあるし。

『なるほど、交易品を販売し、我が国からは長期保存可能な穀物や食料を買い入れたいということですね』

『交易品の販売はもちろんですが……依頼したいことがあるのです』

『依頼?』

『わが国の主要作物……これは国民にとってなくてはならないものです。ですが、このままではすべての作物が病にかかり死滅してしまいます』

『ふむ』

『ですので、どうか、こちらの国で栽培してほしいのです』
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