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幼少期
92 米発見!
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『作物の栽培……確かに食料の種類はあればあるだけ良いですが、この国にはないものなのですか?』
『これまでの食事では同じものは出ていないのです』
『ふむ……対価をいただけるのでしたら、お受けしてもいいでしょう』
『本当ですか!?』
『ええ、うまくいくかどうかもわかりませんから、最初は少額で結構です。栽培が成功した暁には、引き取り額を上乗せしていただく形で』
『それでお願いします!』
まあ、カレンベルク領では試験栽培もおこなっているし、少しくらい品目が増えても文句は言われないだろう。
しかし、ここまで渇望する作物ってなんだ? いや、まあこの国の住民も麦が食べられなくなったと言われたらこのくらいの反応にはなるか。
『で、その栽培してほしい作物とは?』
『はい、こちらです』
当たり前の話だが、この場には爺様やヨーゼフ、レナをはじめとしたヴァイセンベルク王国の貴族、そしてゴールディ国側もソウタ以外に何人もの人間がいる。
ソウタの合図に気が付いたゴールディ国側の人間が、布に包まれた何かを机の上に置いた。
『拝見しても?』
『ええ、どうぞ』
「はっ!? これって!?」
いや、思わずジャンバリ語ではなく王国語が出たが、それくらい驚いた。
何しろ、ゴールディ国側が栽培を求めているのが米だったからだ。
ゲーム内でも米は登場するが、エピローグで少し語られる程度……つまり、ゲーム開始前のこの時点ではヴァイセンベルク王国内に米は存在しない。
ゲームではラスボス悪役令嬢を倒した主人公とヒロインが、旧・ゲルハルディ領を治めて国を興す。
そこで特産品となるのが米や味噌、醤油で、これらは東方の国からもたらされたという設定になっているのだが、その国がゴールディ国ってことか?
ああ、いや。呆けているのもマズいか。ソウタ殿と会話を続けなくては。
『このような作物は初めて見ましたので驚いてしまいました』
『ああ、やはりこの国でも栽培されていないのですね。わが国では米と呼ばれる作物なのです』
『栽培を求めるということは毎日食されるのでしょう? 麦やジャガイモのようなものですか?』
『ええ、栽培は麦に似ていますね。わが国でも米の栽培と麦の栽培の両方を行っている農家も多いですから』
いわゆる二毛作ってやつか。確か、春夏に米、秋冬に麦を育てる方法だな。水田の乾田化だったり、肥料不足を補ったりで大変だって前世の田舎では言われていたな。
『ふむ、麦に似ているのなら栽培は何とかなりそうですね。……ソウタ殿、先ほどの言を撤回させていただけますかな?』
『撤回……ですか?』
『ええ、栽培にあたって対価は必要ありません。その代わり、こちらの国でも米を流通させていただきたいのです』
『わが国に十分な量を卸していただけるのなら、かまいませんが……』
『実は祖母からジャンバ島で食べた米が美味しかったと聞いたことがあったので、食べてみたかったのです』
『ああ、なるほど! 確かに昔はジャンバ島にも卸していましたからね』
まあ、この辺の話も嘘ではない。おばあ様が残した手記にはジャンバ島で見たこともない食事を提供された驚きと、その食事の美味さ加減が書かれていたからな。
『流通とは言いましたが、国民に受け入れられたらの話です。おそらく我が家や、御用商人の間で少量使用する程度ですよ』
『では、米に合いそうな調味料やレシピも販売しますよ』
『それはありがたい』
パン食文化であるヴァイセンベルク王国では、米が流通してもそれほど受け入れられないだろう。
これはカカオやスパイスの時もそうだったらしいが、バルディ領を含むゲルハルディ周辺領で受け入れられ、王都に、そして国全体にと広がった経緯があり、広まるまでに数十年はかかっている。
何より、米だと麦の代替品として見られるだろうし、カカオやスパイス以上に年月が必要になるかもしれないな。
とはいえ、俺は和食が食べたい! 別にパン食が嫌ってわけでもないが、米が食べたいってのも真実だからな。
とりあえず、ソウタが販売してくれる調味料が醤油や味噌だと良いんだがな。
『では、代わりにこちらも小麦粉や長期保存な食料をなるべく安価で販売いたしますよ』
『それなのですが……わが国では小麦を利用したレシピが少なく……できればレシピも販売していただけると』
『わかりました。料理人と相談してみましょう』
そりゃそうか。前世もコメ食文化の日本では、小麦の利用法と言ったら麺類か饅頭くらい……本格的に小麦料理を作り始めたのは文明開化あたりって話だったしな。
パンは難しそうだし、お好み焼きやパンケーキみたいに簡単に作れて腹が膨れるレシピを教えるか。
『これまでの食事では同じものは出ていないのです』
『ふむ……対価をいただけるのでしたら、お受けしてもいいでしょう』
『本当ですか!?』
『ええ、うまくいくかどうかもわかりませんから、最初は少額で結構です。栽培が成功した暁には、引き取り額を上乗せしていただく形で』
『それでお願いします!』
まあ、カレンベルク領では試験栽培もおこなっているし、少しくらい品目が増えても文句は言われないだろう。
しかし、ここまで渇望する作物ってなんだ? いや、まあこの国の住民も麦が食べられなくなったと言われたらこのくらいの反応にはなるか。
『で、その栽培してほしい作物とは?』
『はい、こちらです』
当たり前の話だが、この場には爺様やヨーゼフ、レナをはじめとしたヴァイセンベルク王国の貴族、そしてゴールディ国側もソウタ以外に何人もの人間がいる。
ソウタの合図に気が付いたゴールディ国側の人間が、布に包まれた何かを机の上に置いた。
『拝見しても?』
『ええ、どうぞ』
「はっ!? これって!?」
いや、思わずジャンバリ語ではなく王国語が出たが、それくらい驚いた。
何しろ、ゴールディ国側が栽培を求めているのが米だったからだ。
ゲーム内でも米は登場するが、エピローグで少し語られる程度……つまり、ゲーム開始前のこの時点ではヴァイセンベルク王国内に米は存在しない。
ゲームではラスボス悪役令嬢を倒した主人公とヒロインが、旧・ゲルハルディ領を治めて国を興す。
そこで特産品となるのが米や味噌、醤油で、これらは東方の国からもたらされたという設定になっているのだが、その国がゴールディ国ってことか?
ああ、いや。呆けているのもマズいか。ソウタ殿と会話を続けなくては。
『このような作物は初めて見ましたので驚いてしまいました』
『ああ、やはりこの国でも栽培されていないのですね。わが国では米と呼ばれる作物なのです』
『栽培を求めるということは毎日食されるのでしょう? 麦やジャガイモのようなものですか?』
『ええ、栽培は麦に似ていますね。わが国でも米の栽培と麦の栽培の両方を行っている農家も多いですから』
いわゆる二毛作ってやつか。確か、春夏に米、秋冬に麦を育てる方法だな。水田の乾田化だったり、肥料不足を補ったりで大変だって前世の田舎では言われていたな。
『ふむ、麦に似ているのなら栽培は何とかなりそうですね。……ソウタ殿、先ほどの言を撤回させていただけますかな?』
『撤回……ですか?』
『ええ、栽培にあたって対価は必要ありません。その代わり、こちらの国でも米を流通させていただきたいのです』
『わが国に十分な量を卸していただけるのなら、かまいませんが……』
『実は祖母からジャンバ島で食べた米が美味しかったと聞いたことがあったので、食べてみたかったのです』
『ああ、なるほど! 確かに昔はジャンバ島にも卸していましたからね』
まあ、この辺の話も嘘ではない。おばあ様が残した手記にはジャンバ島で見たこともない食事を提供された驚きと、その食事の美味さ加減が書かれていたからな。
『流通とは言いましたが、国民に受け入れられたらの話です。おそらく我が家や、御用商人の間で少量使用する程度ですよ』
『では、米に合いそうな調味料やレシピも販売しますよ』
『それはありがたい』
パン食文化であるヴァイセンベルク王国では、米が流通してもそれほど受け入れられないだろう。
これはカカオやスパイスの時もそうだったらしいが、バルディ領を含むゲルハルディ周辺領で受け入れられ、王都に、そして国全体にと広がった経緯があり、広まるまでに数十年はかかっている。
何より、米だと麦の代替品として見られるだろうし、カカオやスパイス以上に年月が必要になるかもしれないな。
とはいえ、俺は和食が食べたい! 別にパン食が嫌ってわけでもないが、米が食べたいってのも真実だからな。
とりあえず、ソウタが販売してくれる調味料が醤油や味噌だと良いんだがな。
『では、代わりにこちらも小麦粉や長期保存な食料をなるべく安価で販売いたしますよ』
『それなのですが……わが国では小麦を利用したレシピが少なく……できればレシピも販売していただけると』
『わかりました。料理人と相談してみましょう』
そりゃそうか。前世もコメ食文化の日本では、小麦の利用法と言ったら麺類か饅頭くらい……本格的に小麦料理を作り始めたのは文明開化あたりって話だったしな。
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