気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

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閑話

103 若手との交流とダメな大人へのダメだし

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「注目! こちらがゲルハルディ領の次期領主であるマックス・フォン・ゲルハルディ様である」

「なんか大げさに紹介されたが、メーリング領からの道中も一緒だったし、知ってるよな? 一応、まだ次期領主のマックスだ。騎士団連中は若だとか坊ちゃんだとか、適当に呼んでるからあんまり気負わなくてもいいぞ」

「マックス様、はじめが肝心なのですよ?」

「だって、騎士団長が坊ちゃんって呼んでるんだぞ? 辺境伯への打診を受けているから、陞爵した暁には上司になるが、まだ見習いと同じ立場だからな。それまでは適当に呼んでくれていいってことだよ」

「……わかっておりますが」

 メーリング領からきた若手は困惑しているが、正直俺の立場が微妙なんだよな。
 次期領主とはいえ、騎士団の立場としては見習い団員と同じ扱いになっているし、辺境伯になってしまえば、騎士団を統率する立場に変わってしまう。
 ま、どうせ貴族学園を卒業するまでは指揮するのも難しいし、今とあんまり立場が変わらないような気もするがな。

「あと、こいつらに変な武器を勧めた奴は出てこい」

「坊ちゃん、こいつは筋が良いんですぜ?」

「ええええ、私の後継として育てているのですよ?」

「うるせえ! メーリング領に帰るかもしれないのに斧や双剣なんてニッチな武器を教えるな!」

「いいじゃねえですか、引き受けちまえば?」

「そうですよ。私の後継となれば即戦力ですよ?」

「本人の意志以外にもライナー卿との話し合いとか、いろいろあるんだよ! とりあえず、平民の成人年齢までは標準的な武器を指導すること! 指導教官はクルトに一任する」

「「ええ~」」

「おっさんたちがええ~って言っても全く可愛くないからな。全面的な禁止にはしないから、本人が希望したなら、休憩時間や休日にでも指導しろ」

「わかりやしたよ」

「ここは引きますか」

「皆も将来を見据えて訓練に励むように。くれぐれも悪い大人の甘言に負けて、変な癖をつけないように」

『はい』

 ゲルハルディ領のベテランへのけん制と、メーリング領の若手に対する忠告はこんなもんで良いか。
 ってか、騎士志望ってことは貴族学園の騎士科か、ゲルハルディ領の平民学校の兵士科に入るのにニッチな武器を教えるなよ。
 学園や学校では標準的な武器で成績を決めるって、みんな知ってるだろうに。

「貴女がライナー卿の娘のバル嬢だな。クルトからメーリング領の若手が真面目に訓練に励んでいるのはバル嬢のおかげと聞いている」

「い、いいえ。私は騎士になるべく訓練していただけですので……」

「そうだろうけど、こっちが助かったのも確かだからな。ライナー卿が決めたこととはいえ、割と無理に連れてきた自覚もあるし」

「領主代理が決めたのですから、従うのが部下の務めです」

 うーん、ライナーも堅い性格をしてると思ったが、娘のクリスタもお堅い感じだな。
 理屈としては部下は上司の命令に従うのが道理ってのもわかるが、ゲルハルディ領への移動を強いられたのは子供が多いし、理屈ではわかっても感情は追いつかないだろう。

「ま、とにかくこっちは助かったってこった。で、クルトから何か褒美をやったらどうかといわれたんだが、欲しいものとかあるか?」

「でしたら! 一度手合わせしてくれませんか!?」

「手合わせ? そんなんで褒美になるの?」

「はいっ! 騎士団の方々からゲルハルディ次期伯爵は同年代で並ぶ者がいないと聞かされていたので、手合わせしてみたかったのです!」

 あー、ベテラン連中は俺のことを孫か何かだと思って猫かわいがりしてるから、過分な評価が出回ってるんだよな。
 ま、本人が褒美になるって言ってるなら、手合わせでいいか。

「クルト、俺の装備は持ってきているか?」

「はい、訓練するだろうと思って用意してあります」

「じゃ、いっちょ手合わせするかな。騎士団式で魔法はなし、装備は訓練用の物なら自由。俺はショートソードとラウンドシールドでいくけど、そっちは?」

「私も同じ装備です」

 うんうん、さっき訓練の様子を見ていたけど、クリスタは標準的な武器を使うんだよな。
 ゲーム内では寄り親の意向で幼少期には剣の訓練をしていたものの、ゲーム開始時には淑女科に通っていて剣なんて振れないってキャラだったけど、はてさてどうなるものやら。
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