気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

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閑話

112 辺境伯会議・前編

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 というわけで、辺境伯会議だ。
 俺の前には北東・北西・西・南の4人の辺境伯がテーブルについている。
 ちなみに辺境伯会議は王都で開催ということで、連れてきたレナはローズマリー嬢のところに置いてきた。
 というか、ローズマリー嬢が離さなかったので、泣く泣く置いてきたという方が正しいか?

「ほうほう、新しく南東辺境伯に叙されたのは随分と可愛らしいお子様じゃの」

 真っ先に声をかけてきたのは北西辺境伯のヴァルター・フォン・ハーヴェイ。
 御年50の男性で、四辺境伯……いや、俺も加わったから五辺境伯か……の中では最高齢だ。

「いやいや、ハーヴェイ老。舐めてはなりませんよ。彼はこれでもダンジョン攻略者ですから」

 次は北東辺境伯のノルベルト・フォン・レナー。メーリング領を挟んでいたとはいえ、ウチとはお隣さんの辺境伯領だな。
 レナー辺境伯には息子がいて、エルメライヒ公爵に聞いた話によるとローズマリー嬢の婚約者候補筆頭なのだとか。

「辺境伯の中では最年少だったのに、お株を奪われたわね」

「いや~、そもそも僕は何の実績もないですからね~。最底辺は変わらず僕でしょう」

 先に話したのが南辺境伯のクラウディア・フォン・リーゲル。五辺境伯の中で唯一の女性辺境伯で、ゲルハルディ家の元々の主家だった辺境伯だ。
 南辺境伯は元々ゲルハルディ領にいたが、南大陸と接している土地のほうが有効だとして、ゲルハルディ領をご先祖様に託して、現在の南辺境伯領に移ったとされている。

 で、そのリーゲル辺境伯に話しかけられたのが、西辺境伯のエーリッヒ・フォン・シュミット。
 陛下から聞いた限りでは最近、西辺境伯を継いだばかりということで、まだまだ実績というものがないらしい。

「皆様はじめまして。この度、南東辺境伯に就任しましたマックス・フォン・ゲルハルディです」

「あまり固くなるな。それよりも大きくなったな」

「お久しぶりです、ノルベルト様」

「様付けもいらん。これまでは下位だったが、これからは同格だ。ハーヴェイ老はともかく、若手3人は名で呼び捨てだ」

「いや~、僕はハーヴェイ老はもちろん、ノルベルトさんもクラウディアさんも呼び捨てにできませんけどね」

「ノルベルトはともかく、私なんて6歳しか違わないし、呼び捨てでもいいじゃない。……あと、マックス。丁寧な話し方もしなくていいから」

 は~、最初からあっけに取られてしまうな。
 まあ、親交のあるノルベルトが父上とざっくばらんに話していたことがあるから、衝撃とまではいかないが、辺境伯同士はこんな感じみたいだな。

「は~、わかりまし……わかった。若輩というか、何も知らないから面倒をかけると思うが、よろしく」

「ああ、そんな感じでいいぞ」

「儂はそろそろ引退じゃから、そう長くはないがよろしくの」

「よろしくね」

「こちらこそよろしく~」

「で、ペーペーの新人からお土産というか、お近づきのしるしを持ってきたので、受け取ってもらえるか?」

「ほう。陛下からゲルハルディ領は特産品が出来てるという話は聞いてるんだよな」

「じゃあ、持ってきてもらおうか」

 俺が合図をすると、それぞれの侍従や侍女が入ってきて、それぞれの前にウイスキーボンボンとカレーを提供していく。
 ざっくばらんな態度な辺境伯だが、流石に提供されたものにいきなり手を出すということはなく、俺の説明を待っている。

「平たい皿に乗っているのがウイスキーボンボン、平たく言えばウイスキーが中に入ったチョコレートだ。深皿の方が香辛料を使ったスープで、付け合わせのパンと一緒に食べてほしい」

 説明だけだと不十分というか、毒味がいるので俺が真っ先に手を付けることになる。
 家族や……なぜか陛下や宰相閣下も毒味なしで食べていたが、あれは例外だ。

「カレーの方は普通に食べるが、ウイスキーボンボンの方の毒味は1つで勘弁してほしい」

「? なぜだ?」

「未成年なので。そこまでの量は入っていないが、成長期に入る前に酒はあんまり体に入れたくない」

「「「「あっ!」」」」

 ? なんか皆して「そうだった!」みたいな顔になってるんだが?

「そういや、未成年だったな」

「儂らの無茶ぶりにも直ぐに対応してきたからの」

「体は確かに未成年よね」

「いや~、なんか年上のような気がするんすよね~」

「はあ、まあ何でもいいが、そういうことだから」

 まったく、みんなは俺をなんだと思ってるんだか。

 
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