気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
135 / 140
貴族学園

135 久々のレナとの休日

しおりを挟む
「それで、その後はどうなったのですか?」

 今日は休日、クリスタはアイリーンからの荷物を受け取りにタウンハウスに、ローズマリー嬢は婚約者である北東辺境伯の息子が来るとのことでそちらに行っている。
 だから今日は本当に久々にレナと2人きり……なのだが、寮での事件をレナに伝えると笑われながら続きを促されている。

「笑い事じゃないんだよ。結局キンスキー侯爵令息は退学になって王領での療養になったし、それを口実にキンスキー侯爵が学園に圧力をかけてくるし」

「学園にって……貴族学園は陛下の管轄ですよね?」

「そう! キンスキー侯爵家は代々国王派だってのに、王立の貴族学園に文句を言うなんてって感じだよ。なんか教育が悪いとか意味不明なこと言ってたけどな」

 そもそも貴族学園は貴族の心構えや実務を学ぶ場であって、教育現場じゃないんだよな。
 貴族としての常識やルールなどはそれぞれの家庭で学ぶものであって、そういったものを貴族学園に求めるのは筋違い。
 自分たちが子供にかまっていなかったのを棚上げにして、学園に文句を言うなんて貴族どころか親として恥ずかしいことだと理解してほしいもんだ。

「それで、感染病の原因は分かったのですか?」

「ああ、キンスキー侯爵令息も最初はきちんと貴族向けの娼館で遊んでいたらしいんだが、最近は平民が入るような娼館や連れ込み宿で遊んでいたらしいんだ」

「では、そこが?」

「らしいな。王立の医師団がキンスキー侯爵令息が遊んでいたところを片っ端から調べて、連れ込み宿が原因だと分かったらしい」

 この話を聞いて、そういえばゲーム内で悪徳商人が経営していた連れ込み宿を主人公とヒロインがどうにかするというイベントがあったことを思い出した。
 マックスのかかわらないイベントだったし、俺には関係ないと思って忘れていたが、そういえばあのイベントは第三王女がかかわるイベントだったはず。
 先日の学園内の情事が原因で第三王女が謹慎になったからイベントが発生しなかったのか?

 だが向こうにもミネッティ伯爵令嬢という転生者がいる……まあ、転生者といってもゲーム内のイベントすべてを覚えているなんて無理な話か。
 ゲーム制作にかかわっていて、デバッグ作業で夢に見るほどゲームをやらされた俺ですら、すべてを覚えていないんだからな。

「他には学園内で感染者はいなかったのですか?」

「ああ、そちらも秘密裏に医師団が調査していたが、キンスキー侯爵令息以外の感染者はいなかったそうだ」

「それはよかったです」

 俺がキンスキー侯爵令息にかけたセンスシックだが、射程が結構ある上に対象者にはかけられていることがわからない……ま、害もないが益もない魔法だから当然だがな。
 キンスキー侯爵令息の一件があってから教師に扮装した医師団が学園内のいたるところで生徒たちにセンスシックをかけていたが、それに気づいていたのは俺とマルクス、それにエルンストだけだろう。

「まあ、とりあえずキンスキー侯爵令息関連については一件落着だ。……しかし、なんだってこう騒ぎが重なるかね」

「そういえばミネッティ伯爵令嬢も授業に乱入してきたとか」

「ああ、従者を参加させろとか言いだしてな。そちらもエルメライヒ公爵伝いに冒険者ギルドの剣術学校の紹介をしてあるよ」

「マックス様ご自身がなさらなかったので?」

「さすがに越権が過ぎるからな。ミネッティ伯爵家はエルメライヒ公爵家の傘下だし、さすがに派閥も違うゲルハルディ家が口を出すのは外聞が悪い」

「エルメライヒ公爵家に貸しひとつですか?」

「どうだろうな~、傘下の従者だからな~。養子だったりしたら話は別だが、手間をかけさせた分マイナスかもな~」

 主人公が大成したら話は別だが、そうならなかった場合は手間をかけさせただけだからな。
 ミネッティ伯爵家が……というよりもミネッティ伯爵令嬢が主人公を剣術学校に通わせるかも謎だし、通っても本来の実力は発揮できないかもしれない。
 ま、さすがにそこまで俺が心配するのは筋違い……これからどうなるかはわからないが敵対する可能性も十分にあるわけだしな。

「まだまだマックス様の周りでは騒動が起きそうですね」

「俺としては穏やかに過ごしたいんだが……」

「それは無理ですね」

 レナにきっぱりと言われてしまった。
 思えば子供のころは俺の後ろをついて周っていたレナだが、強くなったもんだなぁ。

「ま、領地に帰ってもゴールディ国との交易や辺境伯同士での取引なんかもあるし、いろいろと忙しくなりそうだよなぁ」

「精一杯支えますね」

「ああ、頼りにしてるよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

ソードオブマジック 異世界無双の高校生

@UnderDog
ファンタジー
高校生が始める異世界転生。 人生をつまらなく生きる少年黄金黒(こがねくろ)が異世界へ転生してしまいます。 親友のともはると彼女の雪とともにする異世界生活。 大事な人を守る為に強くなるストーリーです! 是非読んでみてください!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...