136 / 140
貴族学園
136 断罪失敗
しおりを挟む
それからの貴族学園はこれまでの騒動が嘘のように静寂を保っていた。
陛下が第三王女に灸をすえたことと、騎士の動員数を増やして問題を事前に対処していたおかげだろう。
ゲーム内では学園でもいろいろとイベントがあったはずだが、それが起きてる気配もないし、ようやくミネッティ伯爵令嬢もまっとうな令嬢としての人生を歩もうと思っているのかもしれない。
……うん、まあそんなわけがないよな。
主人公も冒険者ギルドの剣術学校に通っていないようだし、メインヒロインの4人が婚約者を作ったという話も聞かない。
俺の考えすぎかもしれないが、エンディングさえ何とかすればゲームのシナリオ通りになると考えていてもおかしくはない。
そう、ゲームでは第三王女の卒業式……つまり、俺たちが1年を終える時にローズマリー嬢が断罪され、勇者編が始まる。
勇者編の最後はゲルハルディ領に逃げたローズマリー嬢が瘴気に憑りつかれ、勇者となった主人公たちと相対、瘴気を払った主人公たち一行はゲルハルディ領を手に入れ国を興す。
ま、こんな感じだが、主人公を拾わなかったことでローズマリー嬢が断罪される理由はなくなったし、瘴気の原因となった他国からの侵略も俺自身が解決している。
というか、勇者の称号も陛下の命で取り下げられているし、どう考えてもゲームのシナリオ通りになんて進むはずがない。
マジでミネッティ伯爵令嬢はどうするつもりなんだ?
「どうしましたか、マックス様?」
「あ……ああ、第三王女周辺が静かだな、と」
「静かなのはいいことですよね?」
「ま、そりゃそうなんだがな」
確かにレナの言う通り、騒動が起きていることが異常で、静かに学生生活を送れるのはいいことだ。
そもそも、貴族学園ってのは貴族としての実務を学び、交流を深めて人脈を形成する場……ミネッティ伯爵令嬢にとらわれすぎるのもいけないのかもな。
……………………と、思ってたんだけどな。
「ローズマリー・フォン・エルメライヒ! 出てきなさい!」
卒業式、晴れの日にミネッティ伯爵令嬢が……たかが伯爵令嬢が、公爵令嬢であるローズマリー嬢を名指しで呼ぶ。
貴族としてもあり得ないことだが、そもそも卒業式を選ぶってのが人としてあり得ないんだよなぁ。
ゲームのシナリオとしてみていた時もあり得ないと思っていたが、実際にこの目で見るとよりあり得ないよなぁ。
「こんな日に呼び出すなんて、おかしな人ね。何か用かしら?」
ミネッティ伯爵令嬢だけなら、教師が強制的に退出させるのだろうが、ミネッティ伯爵令嬢のそばには第三王女がいたから、ローズマリー嬢も素直に前へと出る。
俺? 別に俺は呼ばれていないし、辺境伯とはいえ……いや、だからこそ中央の政治のあれこれに巻き込まれるのは得策じゃない。
ってことで、成り行きを見守りつつ、クリスタに外部からの侵入者を警戒している騎士を呼んでくるようにと伝えている。
「ローズマリー! 貴女の悪事はお見通しよ!」
「……悪事?」
「公爵令嬢だからって何をしてもいいっていうわけ!? 貴女が私を噴水に突き飛ばしたり、階段から突き落としたのは分かっているのよ!」
……確かにゲームのシナリオでは主人公と交流を深めるミネッティ伯爵令嬢に嫉妬して、噴水に突き飛ばす
・階段の上部から突き落とすなどのイベントが起こる。
だが現実ではローズマリー嬢は主人公との絡みはないし、そもそも次期北東辺境伯の婚約者になっていることで順風満帆、嫉妬する理由が皆無なんだよな。
しかも貴族学園内ではタウンハウスに戻っているときを除いて、ほぼほぼレナと一緒にいるから単独行動も不可能。
「ふーん……で? 証拠は?」
「……え?」
「公爵令嬢である私を貶める発言をしているのだから、何かしら証拠があるのでしょう?」
「ひ、被害者が言ってるのよ!」
「何の証拠にもなりはしないわね。今回のことはミネッティ伯爵に抗議させてもらうわ。……で、第三王女殿下、貴女も何か言いたいのかしら?」
「はぁ!!? なに言ってるのよ! いいから泣きながら謝罪しなさいよ!」
「わ……私は」
ローズマリー嬢の発言に切れ散らかしてるのがミネッティ伯爵令嬢、水を向けられて困惑しているのが第三王女……って解説しなくてもわかるか。
他にもマテス侯爵令嬢とニューエン子爵令嬢もそばにいるが、話を聞かされていなかったのか第三王女と同じく困惑している。
どの令嬢も降嫁先が決まっても辺境伯夫人以上の立場にはなりえないし、ローズマリー嬢に睨まれるのは避けたいだろうしなぁ。
「何の騒ぎだっ!」
騒然としている卒業式会場の中に、怒声を放ちながら入ってきたのは騎士団長。
クリスタが帰ってくるのが遅いと思ったが、第三王女を確実になんとかできる権力者を連れてきてくれていたみたいだな。
陛下が第三王女に灸をすえたことと、騎士の動員数を増やして問題を事前に対処していたおかげだろう。
ゲーム内では学園でもいろいろとイベントがあったはずだが、それが起きてる気配もないし、ようやくミネッティ伯爵令嬢もまっとうな令嬢としての人生を歩もうと思っているのかもしれない。
……うん、まあそんなわけがないよな。
主人公も冒険者ギルドの剣術学校に通っていないようだし、メインヒロインの4人が婚約者を作ったという話も聞かない。
俺の考えすぎかもしれないが、エンディングさえ何とかすればゲームのシナリオ通りになると考えていてもおかしくはない。
そう、ゲームでは第三王女の卒業式……つまり、俺たちが1年を終える時にローズマリー嬢が断罪され、勇者編が始まる。
勇者編の最後はゲルハルディ領に逃げたローズマリー嬢が瘴気に憑りつかれ、勇者となった主人公たちと相対、瘴気を払った主人公たち一行はゲルハルディ領を手に入れ国を興す。
ま、こんな感じだが、主人公を拾わなかったことでローズマリー嬢が断罪される理由はなくなったし、瘴気の原因となった他国からの侵略も俺自身が解決している。
というか、勇者の称号も陛下の命で取り下げられているし、どう考えてもゲームのシナリオ通りになんて進むはずがない。
マジでミネッティ伯爵令嬢はどうするつもりなんだ?
「どうしましたか、マックス様?」
「あ……ああ、第三王女周辺が静かだな、と」
「静かなのはいいことですよね?」
「ま、そりゃそうなんだがな」
確かにレナの言う通り、騒動が起きていることが異常で、静かに学生生活を送れるのはいいことだ。
そもそも、貴族学園ってのは貴族としての実務を学び、交流を深めて人脈を形成する場……ミネッティ伯爵令嬢にとらわれすぎるのもいけないのかもな。
……………………と、思ってたんだけどな。
「ローズマリー・フォン・エルメライヒ! 出てきなさい!」
卒業式、晴れの日にミネッティ伯爵令嬢が……たかが伯爵令嬢が、公爵令嬢であるローズマリー嬢を名指しで呼ぶ。
貴族としてもあり得ないことだが、そもそも卒業式を選ぶってのが人としてあり得ないんだよなぁ。
ゲームのシナリオとしてみていた時もあり得ないと思っていたが、実際にこの目で見るとよりあり得ないよなぁ。
「こんな日に呼び出すなんて、おかしな人ね。何か用かしら?」
ミネッティ伯爵令嬢だけなら、教師が強制的に退出させるのだろうが、ミネッティ伯爵令嬢のそばには第三王女がいたから、ローズマリー嬢も素直に前へと出る。
俺? 別に俺は呼ばれていないし、辺境伯とはいえ……いや、だからこそ中央の政治のあれこれに巻き込まれるのは得策じゃない。
ってことで、成り行きを見守りつつ、クリスタに外部からの侵入者を警戒している騎士を呼んでくるようにと伝えている。
「ローズマリー! 貴女の悪事はお見通しよ!」
「……悪事?」
「公爵令嬢だからって何をしてもいいっていうわけ!? 貴女が私を噴水に突き飛ばしたり、階段から突き落としたのは分かっているのよ!」
……確かにゲームのシナリオでは主人公と交流を深めるミネッティ伯爵令嬢に嫉妬して、噴水に突き飛ばす
・階段の上部から突き落とすなどのイベントが起こる。
だが現実ではローズマリー嬢は主人公との絡みはないし、そもそも次期北東辺境伯の婚約者になっていることで順風満帆、嫉妬する理由が皆無なんだよな。
しかも貴族学園内ではタウンハウスに戻っているときを除いて、ほぼほぼレナと一緒にいるから単独行動も不可能。
「ふーん……で? 証拠は?」
「……え?」
「公爵令嬢である私を貶める発言をしているのだから、何かしら証拠があるのでしょう?」
「ひ、被害者が言ってるのよ!」
「何の証拠にもなりはしないわね。今回のことはミネッティ伯爵に抗議させてもらうわ。……で、第三王女殿下、貴女も何か言いたいのかしら?」
「はぁ!!? なに言ってるのよ! いいから泣きながら謝罪しなさいよ!」
「わ……私は」
ローズマリー嬢の発言に切れ散らかしてるのがミネッティ伯爵令嬢、水を向けられて困惑しているのが第三王女……って解説しなくてもわかるか。
他にもマテス侯爵令嬢とニューエン子爵令嬢もそばにいるが、話を聞かされていなかったのか第三王女と同じく困惑している。
どの令嬢も降嫁先が決まっても辺境伯夫人以上の立場にはなりえないし、ローズマリー嬢に睨まれるのは避けたいだろうしなぁ。
「何の騒ぎだっ!」
騒然としている卒業式会場の中に、怒声を放ちながら入ってきたのは騎士団長。
クリスタが帰ってくるのが遅いと思ったが、第三王女を確実になんとかできる権力者を連れてきてくれていたみたいだな。
92
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
ソードオブマジック 異世界無双の高校生
@UnderDog
ファンタジー
高校生が始める異世界転生。
人生をつまらなく生きる少年黄金黒(こがねくろ)が異世界へ転生してしまいます。
親友のともはると彼女の雪とともにする異世界生活。
大事な人を守る為に強くなるストーリーです!
是非読んでみてください!
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる