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09 恋の生まれた日
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「あっはっはっは、聞いたか? サラの作った完全部位欠損回復薬で騎士がぶっ倒れたってよ」
「ねえ、ウィル? あたしはきちんと説明してあげてって言ったわよね?」
王宮から依頼のあった部位欠損を回復する薬として、完全部位欠損回復薬を納品したのだけれど、どうやら碌に説明も聞かずに騎士に使ったことで痛みに耐えかねて倒れたと聞いた。
ま、ウィルから聞く前に森と街を行き来している騎士から顛末は聞いていたのだけど、ウィルは自分の口から報告したかったみたい。
「いやいやいや、こっちとしても王宮の薬草師には説明してあったのだ。それを国王と騎士団長が碌に説明も聞かずに使ったんだとさ。こっちとしては、説明義務は果たしているって」
「う~ん、それなら……」
「で、面白いのはここからさ。完全部位欠損回復薬を見た筆頭薬草師が辺境に行きたいと言い出して、王宮の薬草師全体でプチボイコットが始まってるらしい。なんでも、国王が自分の不手際を棚に上げて筆頭薬草師を叱責したらしいぞ」
ウィルが言うには魔国との戦争のせいで王宮を荒地に移したのに、部位欠損回復薬や完全部位欠損回復薬を作れないのを筆頭薬草師のせいにしたらしい。
はあ? って感じだよね。薬草師って名乗ってるのに薬草もない土地で、上位薬を作れなんて無茶ぶりされても困るっての。
「で、筆頭薬草師を受け入れるの?」
「まさか! 辺境にはサラっていう、素晴らしい薬草師がいるのだから受け入れる必要はない。ま、王宮では、その辺が問題になって魔国との戦線を縮小、王宮も以前あったところに戻す流れになっているらしい」
「魔国との戦線を縮小?」
「……サラは魔国となぜ戦争をしているか知っているか?」
「? 勇者が現れたからでしょう?」
対外的に……というか、平民に布告されているのは魔国との争いに終止符を打つために現れた勇者を国と教会が発見した。
だから、人類の宿敵である魔国を攻め滅ぼす……たしか、こんな感じだったはず。
「歴史書を紐解いても魔国との戦争に乗り出したのは、ここ100年ほどのことだ。……理由は、虫や植物を嫌う貴族が増えたから、というものだ」
「……は?」
「まあ、言いたいことはわかる。そんな理由でって思うよな? だが、事実だ。王宮のあった中央にいる貴族のわがままから始まったんだよ、魔国との戦争は」
魔国との戦争が……あたしたちが命がけで戦っていたのが、虫が嫌だから?
「じゃあ、勇者は?」
「新勇者は冒険者になるそうだ。……サラがパーティに所属していた旧勇者は、いまだに発見されていないらしいな。そういえば、サラは勇者パーティーで、どんな役割だったんだ?」
「どんなって……普通に薬草師としての役割よ。各種ポーションを作って、戦闘時には手持ちが少なくなった人に渡したり、敵の注意をひいたり……」
「待てっ! まさかとは思うが、前線に出ていたのかっ!?」
「前線って、パーティーのメンバーなんだから戦闘に参加するのは当然じゃない?」
「当然じゃないっ! 薬草師などの後方支援を専門とする役職は拠点にいるのが普通だ」
ウィルが必死に訴えているけれど、そうなの? 勇者パーティーに所属していた時は、常にパーティーに随行していたけれど。
「でも、戦闘中にポーションが切れたら大変でしょう?」
「……じゃあ、なにか? 戦闘中に武器が壊れたら大変だから、商人や鍛冶師も戦闘に参加すべきだって思うのか?」
「そんなわけっ……」
そんなわけない……そう言いかけて気づいた。そうよ、戦闘中に武器が壊れたなら、予備の武器を使うし、予備の武器を持ち歩く……いえ、それ以前に武器が壊れないように気を付けて戦うわ。
ポーションだって同じ。戦闘中にポーションが切れたから、薬草師に予備を渡させる? 前線という危険地帯でポーションを作らせる? ナンセンスだわ!
一流の冒険者なら、ましてや勇者ならポーションが切れないように戦うのは当然だし、もしポーションが大量に必要なら戦闘をこなせるポーターでも雇えばいい話よ。
「わかったか? 自分がいかに理不尽な目に遭っていたかが」
「……そう。あたしは当然だと思い込まされて、危険なことをさせられていたのね」
「ま、いいじゃないか。そんな奴らと縁が切れて。これからは、ここで平和に暮らせるだろ?」
ウィルは殊更に明るくそう言う。……きっと、あたしが暗い顔をしていたから、励ますつもりなのね。
あたしを良いように使っていた勇者も戦士も、こんな風に気遣ってくれたことはなかった。
だからなのかな? ウィルの顔を見ていると顔が熱くなって、心臓がドキドキしてきた。
あたしは生まれて初めて、男の人に恋をしたのかもしれない。
「ねえ、ウィル? あたしはきちんと説明してあげてって言ったわよね?」
王宮から依頼のあった部位欠損を回復する薬として、完全部位欠損回復薬を納品したのだけれど、どうやら碌に説明も聞かずに騎士に使ったことで痛みに耐えかねて倒れたと聞いた。
ま、ウィルから聞く前に森と街を行き来している騎士から顛末は聞いていたのだけど、ウィルは自分の口から報告したかったみたい。
「いやいやいや、こっちとしても王宮の薬草師には説明してあったのだ。それを国王と騎士団長が碌に説明も聞かずに使ったんだとさ。こっちとしては、説明義務は果たしているって」
「う~ん、それなら……」
「で、面白いのはここからさ。完全部位欠損回復薬を見た筆頭薬草師が辺境に行きたいと言い出して、王宮の薬草師全体でプチボイコットが始まってるらしい。なんでも、国王が自分の不手際を棚に上げて筆頭薬草師を叱責したらしいぞ」
ウィルが言うには魔国との戦争のせいで王宮を荒地に移したのに、部位欠損回復薬や完全部位欠損回復薬を作れないのを筆頭薬草師のせいにしたらしい。
はあ? って感じだよね。薬草師って名乗ってるのに薬草もない土地で、上位薬を作れなんて無茶ぶりされても困るっての。
「で、筆頭薬草師を受け入れるの?」
「まさか! 辺境にはサラっていう、素晴らしい薬草師がいるのだから受け入れる必要はない。ま、王宮では、その辺が問題になって魔国との戦線を縮小、王宮も以前あったところに戻す流れになっているらしい」
「魔国との戦線を縮小?」
「……サラは魔国となぜ戦争をしているか知っているか?」
「? 勇者が現れたからでしょう?」
対外的に……というか、平民に布告されているのは魔国との争いに終止符を打つために現れた勇者を国と教会が発見した。
だから、人類の宿敵である魔国を攻め滅ぼす……たしか、こんな感じだったはず。
「歴史書を紐解いても魔国との戦争に乗り出したのは、ここ100年ほどのことだ。……理由は、虫や植物を嫌う貴族が増えたから、というものだ」
「……は?」
「まあ、言いたいことはわかる。そんな理由でって思うよな? だが、事実だ。王宮のあった中央にいる貴族のわがままから始まったんだよ、魔国との戦争は」
魔国との戦争が……あたしたちが命がけで戦っていたのが、虫が嫌だから?
「じゃあ、勇者は?」
「新勇者は冒険者になるそうだ。……サラがパーティに所属していた旧勇者は、いまだに発見されていないらしいな。そういえば、サラは勇者パーティーで、どんな役割だったんだ?」
「どんなって……普通に薬草師としての役割よ。各種ポーションを作って、戦闘時には手持ちが少なくなった人に渡したり、敵の注意をひいたり……」
「待てっ! まさかとは思うが、前線に出ていたのかっ!?」
「前線って、パーティーのメンバーなんだから戦闘に参加するのは当然じゃない?」
「当然じゃないっ! 薬草師などの後方支援を専門とする役職は拠点にいるのが普通だ」
ウィルが必死に訴えているけれど、そうなの? 勇者パーティーに所属していた時は、常にパーティーに随行していたけれど。
「でも、戦闘中にポーションが切れたら大変でしょう?」
「……じゃあ、なにか? 戦闘中に武器が壊れたら大変だから、商人や鍛冶師も戦闘に参加すべきだって思うのか?」
「そんなわけっ……」
そんなわけない……そう言いかけて気づいた。そうよ、戦闘中に武器が壊れたなら、予備の武器を使うし、予備の武器を持ち歩く……いえ、それ以前に武器が壊れないように気を付けて戦うわ。
ポーションだって同じ。戦闘中にポーションが切れたから、薬草師に予備を渡させる? 前線という危険地帯でポーションを作らせる? ナンセンスだわ!
一流の冒険者なら、ましてや勇者ならポーションが切れないように戦うのは当然だし、もしポーションが大量に必要なら戦闘をこなせるポーターでも雇えばいい話よ。
「わかったか? 自分がいかに理不尽な目に遭っていたかが」
「……そう。あたしは当然だと思い込まされて、危険なことをさせられていたのね」
「ま、いいじゃないか。そんな奴らと縁が切れて。これからは、ここで平和に暮らせるだろ?」
ウィルは殊更に明るくそう言う。……きっと、あたしが暗い顔をしていたから、励ますつもりなのね。
あたしを良いように使っていた勇者も戦士も、こんな風に気遣ってくれたことはなかった。
だからなのかな? ウィルの顔を見ていると顔が熱くなって、心臓がドキドキしてきた。
あたしは生まれて初めて、男の人に恋をしたのかもしれない。
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