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024 遊びを教える
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「でも、男の子と女の子では体力も体格も違います。不公平ではないですか?」
「不公平と感じることが交流なんですよ。今までは大人に言われているから、男と女は違うと思い込んでいたことが、一緒に遊ぶことで体格や体力の違いを自分たちで感じるんです」
「ふーん、確かにそうね。今は人族の子たちしかいないけれど、異種族の子が混ざれば、それぞれの特性にも気づくかもね」
オリアーニ嬢は不思議そうにしているけれど、町で錬金術師として過ごしていろいろな種族を見ている師匠は気づいたらしい。
そう、この世界には前の世界のファンタジー小説のように人以外の種族も住んでいる。
僕もほとんど見たことはないが、ドワーフやエルフ、数は少ないがリザードマンや獣人族もいるらしい。
「もちろん、違いを感じるのは天職もそうです。戦闘系の天職を持っている子は体を動かすのが得意でしょうし、策を練るような天職を持っている子は作戦を考えるのが得意かもしれません」
天職もすべてを把握しているわけではないが、師匠から軽く聞いただけでもかなりの数があるらしい。
「……でも、天職が違うことくらい、わかっているでしょう?」
「頭で理解しているのと経験で実感するのとでは違うのですよ。自分ができることなのに、他人ができないと優越感に浸ったり、あるいは努力不足だと怒り出す人はいますから」
前の世界でもいたが、自分が特殊だということに気づかず、出来ないことを怠惰だと決めつけて、努力を強要する人は多かった。
オリアーニ嬢にそう伝えると、納得したのかそうでないのか、ボールで遊ぶ子供たちをぼうっとした目で見つめだした。
子供たちはドッジボールの原型のような遊びをしているようで、お互い逃げながらボールをぶつけあっている。
「お兄ちゃん、このボール? とかいうの。もっとないの?」
「ん~、それは試作品だからなぁ。これ以上はないんだよ」
「え~、もっと欲しいよ~」
遊び声につられたのか、僕たちが連れてきた以上の子供がいつの間にか集まっていて、明らかにボールの数が足りなくなっていた。
「うーん、それじゃチーム戦だ!」
「チーム?」
「ほらほら、同じくらいの人数になるように二組に分かれて~」
僕がそう指示すると、集まっていた子供たちはキャーキャー言いながら、二組に分かれていく。
ドッジボールの遊び方は子供たちが自力で発見したし、遊びの工夫を教えるくらいはいいだろう。
子供たちが分かれていっている間に、僕は落ちていた木の棒で適当に陣地を地面に描いていく。
「さて、さっき君たちはボールをぶつけあって遊んでいたね?」
「「「「はーい」」」」
「今度は二組に分かれてチームで戦ってもらおう。自分の陣地からボールを投げて、相手にぶつけるんだ」
そう言って、僕がボールを渡すと、子供たちはなんとなくやり方が分かったのか、それぞれ陣地に入っていってボールのぶつけ合いを始める。
「怪我しないように気を付けるんだぞー」
失格のルールや外野なんかは子供たちがやっていくうちに勝手にルールとして作るだろうし、こっちでわざわざ教えなくてもいいだろう。
教えるとしても、子供たちがこちらを頼って聞きに来てからでいい。
「カズもこんな遊びをしていたの?」
「ええ、学校の休み時間に同級生たちとやっていましたね。運動のできる子でも投げるのは下手だったり、逆に普段は運動が苦手なのに妙に避けるのが上手い子がいたり、いろいろ面白いですよ」
「確かにね。こうやって見てるだけでも面白いわ」
師匠の言葉にハッとしたようにオリアーニ嬢も、子供たちが遊ぶ様子をじっと見つめる。
天職のあるこの世界では、オリアーニ嬢が提案したような一律の学習をさせるような学校は意味が薄いが、こうやって同世代の子たちが遊ぶのは意味があるだろう。
よくよく見てみれば、天職なのか、それとも才能なのか、子供たちの中でもボールを上手く操れる子、避けるのが上手い子、狙われにくい子など個性がある。
「ねーねー、お兄ちゃん」
「お、どうした? 疲れちゃったか?」
そんな風に三人で子供たちを見守っていると、何人かの子がボール遊びから抜け出してこちらにやってきた。
「うん」
「だって、男の子には勝てないもん」
「ねー、ぜんぜん取れないもんね」
こちらにやってきた女の子たちはそう言うけれど、ボール遊びの中には女の子も残っているから、単純にこの子たちが運動が苦手なんだろうな。
「だったら、こんな遊びはどうだい? この升目に交互にマルとバツを書き込んでいって、縦か横か斜めに三つそろったほうが勝ちだ」
そう言って、僕は落ちていた木の枝で三×三の升目を作って、試しにマルやバツを書き込む。
女の子たちは戸惑いながら始めたけれど、やっていくうちに熱が入っていったのか、キャイキャイ言いながら熱中していく。
オリアーニ嬢に貴族は遊戯盤で遊ぶと聞いたけれど、読み書きを習っていない年齢なら、このくらいの単純な遊びの方が楽しいだろう。
「不公平と感じることが交流なんですよ。今までは大人に言われているから、男と女は違うと思い込んでいたことが、一緒に遊ぶことで体格や体力の違いを自分たちで感じるんです」
「ふーん、確かにそうね。今は人族の子たちしかいないけれど、異種族の子が混ざれば、それぞれの特性にも気づくかもね」
オリアーニ嬢は不思議そうにしているけれど、町で錬金術師として過ごしていろいろな種族を見ている師匠は気づいたらしい。
そう、この世界には前の世界のファンタジー小説のように人以外の種族も住んでいる。
僕もほとんど見たことはないが、ドワーフやエルフ、数は少ないがリザードマンや獣人族もいるらしい。
「もちろん、違いを感じるのは天職もそうです。戦闘系の天職を持っている子は体を動かすのが得意でしょうし、策を練るような天職を持っている子は作戦を考えるのが得意かもしれません」
天職もすべてを把握しているわけではないが、師匠から軽く聞いただけでもかなりの数があるらしい。
「……でも、天職が違うことくらい、わかっているでしょう?」
「頭で理解しているのと経験で実感するのとでは違うのですよ。自分ができることなのに、他人ができないと優越感に浸ったり、あるいは努力不足だと怒り出す人はいますから」
前の世界でもいたが、自分が特殊だということに気づかず、出来ないことを怠惰だと決めつけて、努力を強要する人は多かった。
オリアーニ嬢にそう伝えると、納得したのかそうでないのか、ボールで遊ぶ子供たちをぼうっとした目で見つめだした。
子供たちはドッジボールの原型のような遊びをしているようで、お互い逃げながらボールをぶつけあっている。
「お兄ちゃん、このボール? とかいうの。もっとないの?」
「ん~、それは試作品だからなぁ。これ以上はないんだよ」
「え~、もっと欲しいよ~」
遊び声につられたのか、僕たちが連れてきた以上の子供がいつの間にか集まっていて、明らかにボールの数が足りなくなっていた。
「うーん、それじゃチーム戦だ!」
「チーム?」
「ほらほら、同じくらいの人数になるように二組に分かれて~」
僕がそう指示すると、集まっていた子供たちはキャーキャー言いながら、二組に分かれていく。
ドッジボールの遊び方は子供たちが自力で発見したし、遊びの工夫を教えるくらいはいいだろう。
子供たちが分かれていっている間に、僕は落ちていた木の棒で適当に陣地を地面に描いていく。
「さて、さっき君たちはボールをぶつけあって遊んでいたね?」
「「「「はーい」」」」
「今度は二組に分かれてチームで戦ってもらおう。自分の陣地からボールを投げて、相手にぶつけるんだ」
そう言って、僕がボールを渡すと、子供たちはなんとなくやり方が分かったのか、それぞれ陣地に入っていってボールのぶつけ合いを始める。
「怪我しないように気を付けるんだぞー」
失格のルールや外野なんかは子供たちがやっていくうちに勝手にルールとして作るだろうし、こっちでわざわざ教えなくてもいいだろう。
教えるとしても、子供たちがこちらを頼って聞きに来てからでいい。
「カズもこんな遊びをしていたの?」
「ええ、学校の休み時間に同級生たちとやっていましたね。運動のできる子でも投げるのは下手だったり、逆に普段は運動が苦手なのに妙に避けるのが上手い子がいたり、いろいろ面白いですよ」
「確かにね。こうやって見てるだけでも面白いわ」
師匠の言葉にハッとしたようにオリアーニ嬢も、子供たちが遊ぶ様子をじっと見つめる。
天職のあるこの世界では、オリアーニ嬢が提案したような一律の学習をさせるような学校は意味が薄いが、こうやって同世代の子たちが遊ぶのは意味があるだろう。
よくよく見てみれば、天職なのか、それとも才能なのか、子供たちの中でもボールを上手く操れる子、避けるのが上手い子、狙われにくい子など個性がある。
「ねーねー、お兄ちゃん」
「お、どうした? 疲れちゃったか?」
そんな風に三人で子供たちを見守っていると、何人かの子がボール遊びから抜け出してこちらにやってきた。
「うん」
「だって、男の子には勝てないもん」
「ねー、ぜんぜん取れないもんね」
こちらにやってきた女の子たちはそう言うけれど、ボール遊びの中には女の子も残っているから、単純にこの子たちが運動が苦手なんだろうな。
「だったら、こんな遊びはどうだい? この升目に交互にマルとバツを書き込んでいって、縦か横か斜めに三つそろったほうが勝ちだ」
そう言って、僕は落ちていた木の枝で三×三の升目を作って、試しにマルやバツを書き込む。
女の子たちは戸惑いながら始めたけれど、やっていくうちに熱が入っていったのか、キャイキャイ言いながら熱中していく。
オリアーニ嬢に貴族は遊戯盤で遊ぶと聞いたけれど、読み書きを習っていない年齢なら、このくらいの単純な遊びの方が楽しいだろう。
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