猫と私と犬の小説家

瀧川るいか

文字の大きさ
上 下
22 / 50

姫がいない間に

しおりを挟む
「おーい!チャチャ!どこだー?」
メーは部屋の中で相棒のチャチャを探していた。
お気に入りのキャットタワーの周りをグルグルしていた。
この部屋のお姫様りむは現在お出掛け中。
「チャチャ~どこだー?遊ぼー!」
「うーん。いないなぁ~」
「あっ!あいつ!まさか?」
メーは心当たりのある場所に向かった。
「見つけた~チャチャ~やっぱここにいた!」
りむが寝ていたベッドで掛け布団を被り隠れて寝ていたチャチャ。
「もう~うるさいよ~メーは。ゆっくり寝させてよ~」
「寝るなら寝るって言ってよ!隠れんぼしてたのにどこにもいないから心配したじゃん!」
「しょうがないよ~掛け布団の中に隠れてたらあったかくなって眠たくなってきちゃっただもん」
「そっか~でもチャチャ見っけ!」
「見つかっちゃった~じゃあ次はメーが隠れる番ね~」
「いやぁ~遊び疲れたから寝る~」
「じゃあ一緒に寝よう~」
「うん!寝る!メーも布団に入る~」
「いいよ~」
メーはチャチャの寝ていた布団の中に潜り込んだ。
「は~。あったかいね~」
「うん。あったかいね~」
「りむの匂いがするね~」
「うん。するね~」
「最近りむシャンプー変えた?」
「なんか前と違うね~」
「まぁいっか!」
「うん。気にしない気にしない」
大きなアクビをするメー。
それに釣られて大きなアクビをチャチャ。
「移った移った!」
「仲良しな証だね~」
「だねだね~」
「そういえば今日りむは~?」
「うーん。友達と遊びに行くって楽しそうに準備してたよ~」
「随分と準備長かったよね~」
「うん!いつものことじゃん?」
「そうだねぇ」
「今日さぁ~メー良い子だったけど。どした?」
「うん。メイクしてる時は邪魔しちゃダメってチャチャ言ってたから気を付けるようにしてるの~」
「良い子だ!メー!」
「うん!ありがとう!」
「しかし、りむ遅いねぇ~」
「早く帰ってこないかなぁ~りむいないと退屈」
「まぁまぁ~そう拗ねない拗ねない。りむが楽しく過ごしているならいいじゃん。今日は女子会って言ってたし」
「女子会かぁ~まぁ僕達は男の子だからなぁ~たまには女子同士で喋りたいもんなのかなぁ~」
「そうそう。りむは女の子だから」
「そうそう。僕達は男の子だから」
「ははははは」
「何が面白いの?」
「忘れてたからさぁ~男の子って事」
「チャチャは男の子でしょ?」
「うんうん。男の子男の子」
「メーも男の子だよ!」
「そうそう。でも、りむといると男の子って事忘れちゃうんだよね~」
「なんで~?」
「ついつい甘えちゃったりで。メーなんて甘え過ぎだし」
「しょうがないじゃん!好きなんだから」
「うんうん。僕もりむの事大好き」
「帰ってきたら全力で構ってもらうんだ~」
「メーはいつも全力で甘えるからなぁ」
「チャチャも全力で甘えればいいじゃん!」
「なんか男の子だから恥ずかしいじゃん」
「そういえばあいつ最近喋らないけどどしたんだろう?」
「あいつ?」
メーはペンギンのぬいぐるみを見つめている。
喋るぬいぐるみで入居初日だけりむに可愛がられていたが一瞬で飽きられた代物。
「最近何も喋らないよね~」
「メーがパンチしたからでしょ?」
「だってりむを取られたと思ったんだよ~」
「まぁ~メーがパンチした後りむ怒ってなかったし。大丈夫だよ。それにりむは僕らの事を見捨てたりしないよ、きっと」
「なんで?」
「あの子優しいからね~」
「当たり前だよ!僕らのご主人様なんだから優しいに決まってる」
「だから、今度からパンチしたらダメだよ」
「わかった~。でも本当にあいつ全く喋らなくなったよね?」
「うーん。なんでだろう?メーにパンチされたのがショックなのかな?」
「なんか悪い事したなぁ~」
「ははは!思ってないくせに」
「生意気だったからさぁ~りむにタメ口聞いてたし。あれはメーはやだ!」
「まぁね~」
「あれは許せないよ!」
「まぁね~」
「チャチャはなんとも思わないの?」
「まぁね~」
「なんで!りむの事取られたら嫌じゃん!」
「大丈夫だよ~りむは。信じてあげなよ。そゆとこメーは子供」
「子供でいいもーんだ!」
「そろそろ眠たくてなってきたから寝ない?まだりむ帰ってこないし」
「そだね!寝て待つことにしよ!」
「寝よ寝よ~」
メーはチャチャにしがみついた。
「なんだ~?」
「寂しいから~」
「メーは子供だね~」
「子供でいいもーんだ!」
「よしよし。寝よ寝よ」
「寝る寝る」
メーはチャチャにベッタリとくっついた。
「メー!少し近いよ~寝苦しい~」
「そんな事ないよ!」
「うーん。左足少しずらして~」
「あっ!うん!ごめん!」
「寝るよ~」
チャチャとメーは仲良くくっつきながら眠ってしまった。

りむのベッドで仲良く寝る茶トラの二匹。
遠くから足音が聞こえてくる。
チャラチャラと鍵の音も聞こえてくる。
しかし、遊び疲れた茶トラの2匹はぐっすり寝ている。 
くっついたまま寝ている。

「ただいま~」
「あれ?お出迎えがいないなぁ~どした~」
「姫が帰ってきたよ~」
恐る恐る部屋に入るお姫様。寝室のベッドで仲良く抱き合いながら寝ている茶トラの二匹を見つけて静かにニコニコする。
「あらあら~仲良しだねぇ~君たち~嫌いじゃないぞ~私は~」
起こさないように、そっとベッドに座るりむ。
「起きないならおやつはお預けかなぁ~」
耳をピクピクするだけで深い眠りから抜け出せない茶トラの二匹。相変わらずくっついたまま寝ている。
「せっかく好きそうなおやつ買ってきたのなぁ~」
「まぁ~世界で一番可愛い寝顔を見れたからいいかぁ~」
そう言うとりむは寝ている茶トラの二匹の傍にラッピングされたおやつを置いて静かに寝室から出ていった。

しおりを挟む

処理中です...