猫と私と犬の小説家

瀧川るいか

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風の強い日に

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「あ~今日は天気が悪いなぁ~」
チャチャを抱えながら外を眺める可愛い私。足元にはメーが寄り添っている。いつもの事。今日は天気が悪い日。風が強い。凄く強い日。部屋の中にいても物々しい音が聞こえる。
「こんな日は引きこもるのが一番だよねぇ~」
元々、インドア派の私からすると天気が悪いと罪悪感を感じる事なく引き込もれるから好き。
何故か天気の良い日に家にいると罪悪感が生まれる。外に出ていないと元気な太陽に申し訳ないと思ってしまう。しかし、嬉しそうな茶トラの二匹。勿論、私も嬉しい。
茶トラの二匹とダラダラ過ごす時間が永遠に続けばいいと思うくらい嬉しい。
「よしよし~」
そう言って荒れた天気をカーテンで塞ぎ込み、いつもの明るい部屋に戻っていった。そして無性に煙草を吸いたくなった可愛い私はチャチャをメーに預け、換気扇のあるキッチンに向かった。
「ちょっと一服させなさーい!」
キッチンに座り込み煙草に火を付け煙に巻かれている可愛い私。
換気扇のスイッチを入れると、ゴーゴーと外の音を部屋に吸い込んでくる。
「うるさ!煙草くらい落ち着いて吸わせてよ~」
気分転換を邪魔され、少し機嫌が悪くなる可愛い私。煙草を吸ってる時は茶トラの二匹は遠くにいる。きっと煙草の匂いを苦手なのだろう。煙草を吸いながらキッチンに座り込みスマホを開き、天気予報を見る。ガラが悪いかもしれないが可愛いから許して欲しい。
「強風警報かぁ~これは危ないなぁ~」
「しかも一日荒れ模様かぁ~」
煙草の火を消して、茶トラの二匹の元に戻ると相変わらずの愛を私にぶつけてくる。
「わかたから~」
可愛いパジャマが茶トラの二匹の愛で毛だらけになるのは嬉しい日常。
ベッドの上で添い寝されるのも嬉しい日常。
「あ~首輪~」
以前、ネットで気になっていた首輪を思い出した。
「そういえばアレいつ届くんだろう~。もうそろそろ届いてもいいと思うだけどなぁ~」
メーの頭を撫でながら、そんな事を呟いていた。
「メ~」
「うんうん。新しいの欲しいよね~」
「メ~メ~」
「って言葉がわかるようになったのかぁ~?偉い偉い!」
嬉しそうに目を細めながら甘えてくるメー。そんなメーを見ていたらウトウトしてきた。可愛い顔の眠そうな表情を見ていると、ついつい眠たくなってくる。
「はっ?」
私の隣でヘソ天しているチャチャとメー。
無防備過ぎる所も可愛いのはいいのだが、メーの眠気が乗り移ったらしく眠ってしまっていた。
「今何時よ?」
スマホで時間を確認すると二時間寝ていたようだ。
特に用事がある訳ではないが薬を飲むのを忘れていたのを思い出した。
「あ~ダメだなぁ~。ちゃんと飲まないとなぁ~」
そう言ってヘソ天している茶トラの二匹を起こさないように恐る恐るベッドから抜け出し冷蔵庫から脂肪を燃焼させるお茶を取り出して薬と一緒に流し込んだ。
相変わらず可愛い甘えん坊達はお腹を天に向け寝ている。時々、耳をピクピクさせているが寝ている。
寝ながらでも可愛い私と過ごす夢を見ていると思うと可愛い。
ピンポーン!
インターホンが鳴り、耳をピクピクしながらヘソ天していた茶トラの二匹が飛び起きた。
「こんな風の強い日に誰よ~?」
お知らせ通知のボタンを押すと赤い服の配達員が立っている。
「はいはーい」
「お荷物届けに参りました~」
「あっ!はーい」
オートロックを解除し、姫の部屋の前まで来る事を許した。
「なんか頼んだっけ?しかも風強いし。てか、すっぴんだし。眉毛少し足りないし」
手ぐしで前髪を整えて不完全な眉毛を隠した。
「とりあえずマスクしよ!」
可愛い顔を黒いマスクで隠し、配達員が余りの可愛さで失神しない為の配慮。
ピンポーン!
再びインターホンが鳴り、扉を開けた。
「こちらにサインお願いします」
「はーい」
そう言って左手でスラスラと可愛くサインした。
「失礼します」
配達員は伝票を受け取り深々とお辞儀をして去っていった。
「いやぁ~偉い感じいいなぁ~天気悪いのに」
猛烈な風の中でも嵐の中でも、こうやって小さな荷物でも運んでいるというのは冷静に考えると感謝以外の言葉が思い付かない。
荷物を受け取り部屋に戻ると茶トラの二匹は仲良く追いかけっこ中。
「なんか頼んだっけ~?」
ダンボールを開け、ビニール袋から青い首輪が二つ見えた。
「あ~~やっと届いた~」
追いかけっこ中の茶トラの二匹が、気になったようでこちら近付いてきた。
「チャチャ!メー!届いたよ!新しいの」
新しいおもちゃと思ったのか、興味津々で見ている茶トラの二匹。
「じゃあ~メーから!」
メーを抱き上げて古くなった赤い首輪を外して、新しい青い首輪を着けた。
「似合う似合う!」
馴染んでないのか、気になるのか、首を横にブンブンと振るメー。
「チャチャ~おいで~」
メーと同じように赤い首輪を外して新しい首輪を着けた。
「うーん。お揃いでいいねぇ~」
チャチャは何事も無かったかのようにしている。
さすがおっとりさん。気づいてないのかも。
新しい首輪をして追いかけっこを始めた茶トラの2匹。
「古くなったのどうしようかなぁ~」
ボロボロになった赤い首輪。
「うーん。まぁ~捨てるのも勿体ないから保存しておこうか~。思い出だもんなぁ~」
そう言うと青い首輪の入っていたビニール袋に赤い首輪を入れた。
「これもチャチャとメーといた証!」

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