猫と私と犬の小説家

瀧川るいか

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今日も恋してる

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好きな男性のタイプ。頭が良くて。背が高くて。手足が長くて。イケメン。実家がお金持ちだったり。声が低くて。黒髪で。優しくて。妹思いで。友達思いで。たまにマントみたいのしてたり。たまに仮面みたいのしてたり。たまに高笑いしたり。たまに邪悪な笑い方したり。命令口調で喋ったり。
タブレットでアニメを観ながら理想の男性のタイプを考えていた。
この気持ち分かる?オタクなら分かるよね?
アニメの中のキャラクターに恋をする事。

かの有名なマリリン・モンローの言葉。
The real lover is the man who can thrill you by just staring into space.
真の恋人とは、空を見ているだけでゾクゾクさせてくれるような人のこと。

「え~」
「好き過ぎる~」
「ゾクゾクする~」
「たまらない~」
「こんな人いないよね~現実には」
休日に一人でアニメを観る。今日はそんな日。心に靄がかった時はアニメを見るようにしている。現実とは違う世界に身を置く事で心を休ませるのだ。
目が疲れないようにブルーライトカットのメガネをしてヘッドフォンをしてアニメの世界に浸る。
可愛い私がメガネをするというメガネ女子好きには堪らない姿だが、恐らく見た事がある人類はほとんどいない。
この世の中には一定数いるメガネ女子好き男子。
「悔しかろう~メガネ姿の私を見れない事!」
「これだけは言わせて!めちゃくちゃ可愛いよ!」
そんな事を言いながらベッドの上で毎度の事ながら両足をパタパタしながら、アニメを観ている。隣に何かいるが今は構ってあげられない。

アニメの世界に入り込む余り、現実との距離が出来る。
絶対に邪魔されたくない。
この気持ち分かる?オタクなら分かるよね?
アニメの中の世界に自分が住み始める気持ち。

そして、たまたまコンビニとかに行ってレジ脇とかで運命の出会いとかしちゃったら値段確認しないで買っちゃう事。
この気持ち分かる?オタクなら分かるよね?

そして、店の外に出て箱空けて推しが出なかった時に再び店の中に入って列に並んでまで買っちゃう事。
この気持ち分かる?オタクなら分かるよね?

たまにお菓子買うとクリアファイル貰えるとかあると、お菓子を二十個くらい買ってる自分がいる。
手に入れた瞬間は物凄い幸福感が得られる。
そしてクリアファイルは飾って大切にして時間経つと「これどしよ?」となってしまう。
この気持ち分かる?オタクなら分かるよね?

アニメからは色んな事を学んだ。今も学んでる。
もしかすると「アニメばっか見てないで勉強しろ!」とか「アニメなんて子供の見るものだ!」とか思う人といるかもしれないけど。私は声を大にして言いたい。
アニメに全く興味のない人に伝えたい。
「取り敢えず流行ってるアニメは見ときなさい!」
日本の教育委員に伝えたい。
「道徳心を学ぶ為に授業でアニメの時間とかあってもいい!」
誰か傷つけるくらいならアニメを見ていた方が平和だ。
外に出て嫌な気分になるならアニメを見ていたい。
現実では見れない世界を知りたいからアニメを見る。
実際には起きたら怖い事はアニメの中だけで見たい。
沢山、好きなキャラがいても問題ない。
寧ろ、多い方が幸せだ。
沢山、好き人がいたら問題しかない。
寧ろ、ただの阿呆だ。
以前、映画館にて同じ作品を四回連続で見た。
死ぬ程、好きなキャラだった。今も好き。
寧ろ、愛してる。
愛するものを守る為に戦う姿に涙が止まらなかった、四回。
愛するものを守れなかった姿に涙が止まらなかった、四回。
生命の儚さや残された者達に託された想いに涙が止まらなかった、四回。

楽しいというより、時には苦しい時もある。
しかし、苦しい事とか悲しい事とか辛い事とか見ると、今を大切にしないといけないと思う。
誰かに優しくたいと思う。
「アニメだから関係ない!」
そんな事は思わない。
時にアニメの中で起きた事は現実では起きて欲しくない。
自分だったら「こんな時どうするかなぁ」とか考える。
「あの人みたいに自己犠牲を厭わずに誰かを護れるかなぁ」とか考える。
そして、あの人みたいに自分の守りたいものは絶対に守り抜きたいと思う気持ちは常に持っていたい。
そんな気持ちをアニメという非現実的な世界から私はプレゼントされているんだ。
メガネをしてタブレットからヘッドフォンで繋がれている今でも、隣でゴソゴソと可愛い私に「構って!構って!」と駄々をこねている可愛い生き物。
「ふ~」
メガネを外し青色とさよならした。
ヘッドフォンを取り、いつもの鳴き声を聞いて私は再び可愛い茶トラの二匹と過ごす時間に帰っていった。「おまたせ~姫帰還~」
「ニャ~~」
「メ~」
「よ~し。遊ぶか!チャチャ!メー!」
いつものように勢いのあるメー。
ゆっくりと寄り添うチャチャ。
「やっぱ君達は今日も可愛いね~」
「私も負けてないけどね~」

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