猫と私と犬の小説家

瀧川るいか

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花火を見た夏

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好きなアニメのキャラがいる。定期的に変わるブーム。前まで夢中だったのに熱が冷めるのは早い。そのくらい現在のアニメ業界は素敵な作品が溢れている。勿論、作品に対する気持ちは変わらない。名作は名作のままで私の中で生きている。
「えーーーーー!」
ベッドの上で、いつものように寝転びながらスマホでサラサラと情報収集。可愛い茶トラ二匹と仲良く寝転びながら。
「ねえ~これ見に行きた~い」
少し遠出をしないと行けないイベント事を発見。
私が今現在好きなアニメキャラの等身大フィギュアが展示される。想像するだけでドキドキする。
一緒に写真とか撮れたら嬉し過ぎる。
「ねぇ~これ行きた~い」
同じ屋根の下で暮らす可愛い茶トラの二匹に了解を得ないと気が済まない。メーの首元を撫でながら聞いてみる。
「メー!少し出かけたい~いい~?」
メーは気持ち良さそうに目を細めながら眠たそうにしている。
「うん!多分、大丈夫かな~」
そう言ってメーの頭を撫でた。
次はチャチャの首元を撫でながら聞いみた。
「チャチャ~。姫少し遠くに遊びに行きたい~」
「ニャー!」
「うんうん!ありがと~」
無事に了解を得て、開催場所を調べる。
「やっぱ渋谷だよね~」
絶対行きたい渋谷。このイベントがあるなら渋谷に行きたい。
原作を読んで、アニメを観た。その作品の世界観に浸る為には渋谷に行きたい。渋谷で等身大フィギュアと一緒に写真を撮りたい。いや、撮らせて頂きたい。
「あ~カフェとかもあるんだ~全部食べたいなぁ~」
限定でオリジナルの料理やデザートがあるらしい。
「行きたいなぁ~」
「うん。調子良かったら行こ~」
そんな事を考えているだけで楽しい。
行けなかったとしても楽しみを抱えている事が楽しいんだ。
好きな事に出会って、好きな事について考えている時間が楽しい。
「いやぁ~190センチとかデカすぎる~」
身長153センチの私からしたら巨人。
「でも、見てみたい~」
そして自分の中で楽しい話題が繰り返される事が楽しい。
「あ~眠い~寝ても寝ても眠い」
ベッドの上でゴロゴロしながら睡魔と戦う。最近はそうだ。寝ても眠い。絶対に寝てはいけない時でも眠くなる。眠くなる程度ならいい。最近は寝てしまうのだ。病院に行ったら薬を貰った。でも、飲みたくない薬。飲むと寝れなくなる。
「あ~取り敢えずお茶飲も!」
ベッドから抜け出して、冷蔵庫に向かう。チャチャとメーも仲良くぴったりついてくる。可愛い子達。
冷蔵庫から脂肪を燃焼させるお茶を取り出し、飲む。
足元で可愛い茶トラの二匹が飲みたそうによじ登ろうとしてくる。
「君らはダメ~これはお茶だから~後でお水あげるから~良い子にしてなさ~い」
そんな言葉届くはずも無く、興味津々な茶トラの二匹。
500mlを一気に飲み干し、ペットボトルをゴミ箱に入れた。
ゴミ箱に駆け寄るメー。それを見ているチャチャ。
「ダメダメ~そんな事しないの~いい男はそんな事しないんだよ~」
ゴミ箱をゴソゴソと開けようとするメーを抱っこして、リビングに降ろすと再びゴミ箱に駆け寄る。
「そんなお茶飲みたいかなぁ~」
そんなメーを再び抱っこしてソファに座り、頭を撫でながら考える。
気持ち良さそうにするメー。膝の上に寝そべるチャチャ。
「あ~喉乾いてるのか~。ちょっと待て~」
可愛い茶トラにソファを預けて、水を準備する。
白いお皿に水を入れて、二つ並べて置いた。
ソファから勢いよく飛び降りて、仲良く横並びてピチャピチャと音を立てて水を飲む可愛い茶トラの二匹。
「あ~暑いからなぁ~最近。ちょこちょこ新鮮な水にしないとね~」
大嫌いな寒い季節が終わり、桜の季節も終わり、大好きな夏が来る。私の大好きな夏が来る。可愛い茶トラの二匹も喉渇く季節。可愛い私も喉が渇く季節。いっぱいお出掛けしたい季節。大好きなアニメのイベントに行きたい。
海にも行きたい。花火も見たい。可愛い服を着て街を歩きたい。夏にしか着れない洋服が好き。

「あ~今年はどんな夏になるのかなぁ~」
花火を見た夏があった。
花火を見れなかった夏があった。
「今年はどうかな~」
見れなかった分だけ、見れた時の感動は増すのだろう。
会えなかった分だけ、会えた時の感動は増すのだろう。
ピチャピチャと音を立てて水を飲む可愛い茶トラの二匹をニコニコ眺めながら、そんな事を考えていた。
「チャチャとメーも花火見たいよね?きっと」
「夏は赤にしよ!うん!一番好きな色の赤!」
ネイルの色を決めた。気持ちが上がり過ぎて足が少し浮いて見えるくらい気持ちを上げたい。
「久しぶりにガッツリしてもらお~」



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