猫と私と犬の小説家

瀧川るいか

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ずっと家族

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茶トラ二匹はお留守番。
「そういえば~最近りむ何してるの?」
「さあ~」
「やたら寝てるけど」
「だね~」
「チャチャは心配じゃないの?」
「うん」
「冷たいなぁ~」
「りむは大丈夫だよ~きっと色々と疲れてるだけ」
「休めば元気になるかなー?」
「多分」
「前いた人は友達?」
「あ~るかちゃん?うん。りむの友達」
「泣いてたね~」
「うん。泣いてたね~」
りむの親友るかちゃんが彼氏と別れた時の話。
「メー優しかったじゃん」
「うん。ほっとけない」
「やっぱりメーは優しいよね~。泣いてる顔見て、涙拭いてあげたりさぁ」
「チャチャだって。いっぱいいっぱい元気にしようとしたよ~」
「うん。だって、りむの友達は僕らの友達でしょ?」
「うん。みんな友達」
その後はお酒飲みながら愚痴りまくっていた、りむとるかちゃん。
「いやぁ~でも女の子って独特だよね~。チャチャはどう思う?」
「例えば?」
「僕ら男の子にはわからない部分があるよね~」
「逆に男の子の同士の事は女の子はわからないからお互い様でしょ」
「チャチャは大人だね~」
「でも、愚痴が凄いよね。メーはわからないかもしれないけど」
「あ~それね~」
「可愛い顔から、凄い言葉が滝のように溢れてくるからね~」
男子が感じるあるあるな事。
茶トラの二匹は男の子。甘え坊な男の子。
「それそれ!独特なとこ。僕らの愚痴なんて可愛いもんだよね」
「まぁね~」
ご主人がいない今、ベッドは茶トラの二匹のもの。
「最近ベッドにいると暑くない?」
「暑い」
「そんな季節だしね~」
「だね~」
毛だらけの茶トラの二匹には苦手な季節。
「チャチャは夏好き?」
「嫌い」
「なんで?」
「暑いから」
「だよね~。メーも暑いの嫌い」
「こっちこっち」
「なになに~」
メーはチャチャに言われるがまま着いて行った。
小さな音立てながらエアコンから風が出ている。
「気を使ってエアコンで涼しくしてくれてるからありがたいよ~」
「ね!これなかったら僕ら暑くてね~」
エアコンの下で涼しい風に当たりながら涼む茶トラの二匹。
「りむは夏好きなんだよね~」
「なんで?」
「さぁ」
「知らないの~?」
「天気良いとお出掛けするのが楽しいんじゃないかな~」
「え~。じゃあ~りむ夏はお家にいないの?」
「いるいる。去年いたじゃん」
「そうだね~いたね!」
「でも。遠くに出掛けたいとか言ってたね。なんだか好きなアニメのイベントとがどうとかで」
「あ~言ってたね。チャチャはいいよしたの?」
「うん。メーは?」
「一応いいよしといた」
「偉いね~」
「そりゃ~寂しいけどね~。りむも楽しい事してて欲しいし」
「最近メー大人になったね~」
「うん。大人になった!」
仲良く横並びでエアコンの下で風を浴びる茶トラの二匹。
少しの間、沈黙。
「.........」
「.........」
「なんか喉乾いてきた~」
そう言うとメーはエアコンの風から離れて、水を飲みに行った。チャチャは相変わらず気持ち良さそうに風を浴びている。水をピチャピチャと飲むメー。
「は~満足~」
舌で全身を綺麗にしていく。そして、ある事に気付く。
「は?毛抜けてる。チャチャー」
メーは急いで涼んでいるチャチャ丸の所に行った。
「チャチャ~!きたよ~」
「何が?」
「毛が生え変わる!生え変わる~ほら~」
歩いて来た所もあちこち毛だらけだ。
いつも以上に毛だらけだ。
「あ~もうそんな季節だねえ」
「スッキリ出来るね~」
「あんまり飲み込まないようにね~メーは落ち着きないから」
「うん!気を付ける」
「部屋散らかるから、りむに迷惑掛けちゃうね」
モコモコの毛並からスッキリする季節。猫を飼っている人は大変な季節。可愛い茶トラの二匹はわかっている。メーは抱っこされてブラッシングされるのが好きだから好きな季節。
「でも、ブラシでゴシゴシされる頻度が上がるから好きだけどね~」
「メーは、いつも気持ち良さそうにブラッシングされるよね~」
「チャチャだって~」
「うん!」
「りむ帰ってこないね~」
「うん!」
「なんか割かしラフ目だったけど」
「そうだね~」
「じゃあ近場かな~すぐ帰ってくるかな~」
「まぁまぁ~たまにはお外で息抜きさせてあげようよ?」
「そうだね~」
相変わらずエアコンの下で風を浴びる可愛い茶トラの二匹。
「ねぇ~。メー」
「うーん?」
「いつまでもこうやってたいね」
「うん!」
「りむ帰ってきたらみんなで涼しみたいね」
「うん」
「そんな時間が、ずっとずっと続くといいなぁ~」
「続くよ~ずっとずっと!チャチャ~どした?」
「うんうん。少し寂しくなっただけ」
「寂しがるなよ!ずっと一緒じゃん」
「そうだね!ずっと一緒!」
「ずっと友達だよ!みんな」
「うん。友達、友達」
「違う違う。家族だ!」
「大事な家族!」
そんな茶トラの二匹のお留守番中の会話。
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