星が瞬く夜に

如月美羽

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「るな、ここ分かんないんだけど」
「どれ?あ、それはね」

るなは意外にも勉強が出来た。
クラスの中心にいるようなやつだし、勉強なんて三の次かと思っていたけど、意外と真面目で几帳面。
俺の苦手な計算問題を、最も簡単に解いていく。

「んはは、かすみくんって、ストイックだよね」
「なんだよ。悪口か?」
「褒めてるんだよ。かっこいいなぁって。僕が憧れた部分」
「はいはい。お前も勉強しろよ国語。先生になるんだろ」

それぞれ夢を見つけた、高3の秋前。
俺は警察官に。るな、大学に進学して教員に。
手袋を使い出す頃には会うこともなくなって、未来のために俺たちは自分のやるべきことと向き合い続けた。
































































「……ぁ、かすみくん……」

卒業式が終わった、賑やかな校門前。
その中でもあいつの声は、糸が張られているようにすぐ分かった。
クラスは同じだけど、こう2人で喋るのは久々かもしれない。でも、離れている期間はあっという間だった。

「どうだった?」

近寄っていけば、その可愛い瞳が俺を見上げる。
こいつが、俺の恋人なんだもんな。

「受かったよ。第一志望の」
「……っるなぁ。おめでとう、るななら絶対受かるって知ってたわ」
「っんはは」

照れたの頭を、わしゃわしゃと撫でる。
数ヶ月振りに感じた、懐かしくて優しい匂い。

「かすみくんは……これから、だよね。頑張ってね。応援してる」
「ん、ありがとう。の前に一回さ」
「わっ」
「あ゛~~……補給させて」

ぎゅっと強く抱き寄せて、首に鼻を埋める。埋めまくる。
これだわこれ。ずっとこれを求めていたんだよ。
ハグしたらストレスが減るっていうし、るなの安心する匂いも相まって、これがないともう生きていけない。完全に俺専用の治癒存在。
縋り付く俺の腕の中で、るなは居場所を探すように、もぞりと動いた。

「さみしく……なるね」
「仕方ねぇよ、こればかりは」

俺は警察学校、全寮制。
こいつは4年制大学。

道が違うんだから、仕方がない。
だけどこれは、俺たちで選んだ。

「こわい?」
「っううん。……っでも、しばらく、会えなくっ、なるんだなぁって……っ、っぼくたち、こんなにずっと一緒にっ、いたのにさ」
「……泣くなよ。絶対帰ってくるから。……だから、待っててくれる、るな」
「っうん……僕も、頑張る。っ大丈夫!」

体を離したるなの涙を、指で優しく拭ってあげる。
こいつ、意外と我慢強いところあるからなぁ。
新しい生活で、無理しなければいいけど。
そばにはいられない。これまでみたいに、手を貸したり貸されることはできない。
るなは、大学かぁ。モテるんだろうなぁ。


「るな」
「ん?」

きょとんと俺を見上げてくる顔が、可愛くて愛おしくてたまらない。
この腕の中に、ずっと閉じ込めておけたらいいのに。なんの心配も、いらなくなるのに。

「……っちょっと、人前なんだけど」
「誰も見てないって」

みんな自分や友達のことでいっぱい。卒業式なんだから。
今しとかなきゃ、こんなこと次いつできるか分かんないんだし。
髪を撫でて、もう一度キスをして、そっと手を離した。
そろそろ終わりの時間。門が閉まる。


「またね」

「またな」



次の未来が、どんなに遠くても。







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