偽装結婚の成れの果て

如月美羽

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作戦

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高く舞い上がった2つの短剣が、床に突き刺さる。
それに気を取られているうち、体が浮いた。

「エリクス……っ」
「遅くなって悪かった」

横抱きをされて、走った先の古屋奥の腐った壁が突き破られる。
落ちないよう首にしがみつくと、

「寒そうだな」

とはだけた服の裾が重ねられた。

「えっ、エリクス……っうしろ!」

デカい男2人が、地から短剣を抜いてこちらに向けている。
俺を抱いているせいでエリクスは剣を抜けないし、走って逃げることも無理だ。
どうしよう。
焦っていると、

「心配するなノア」

と頭を撫でられた。
どうするつもりなんだろう。
疑問に思って気を取られているうち、

「グアッ!」
「グハッ」

と後ろから呻き声が聞こえ、振り向くとあの男2人がうつ伏せに転がっていた。

「遅くなりました」
「十分だ、エリック」
「っえ、エリックさん……ッ?」

倒れる男たちの後ろで白い手袋を直しているのは、確かにエリックさんだった。
でも、さっき……
走り出したエリクスを見上げると、

「許してやってくれ。俺の命令だ」

と微笑まれた。
命令……じゃあ、エリックさんは、裏切り者じゃ、ない……?
確かなことが分かって、安心した。









「エリクス様。屋敷に2種の馬車が向かって走って来ているとの情報が」
「2種……あいつらか」

くそ。タイミングが悪い。よりによって俺が家を出ている時に。
……いや、それを狙ったのか。
噂はすぐに広まる。リアシュとの婚約が切れたということは、必然的に俺には別の婚約者、結婚相手ができたということになる。
恨みを買ったつもりはないが、俺をよく思わない奴らはどうしたっている。
まだ間に合う。
すぐにエリックへ一方への潜入を指示して、馬車を引き返させた。
片方は金目のもの目当てが考えられるが、もう片方はあいつの存在を消すことが目的の線が高い。
そちらへ見つからせるくらいなら、人質目当ての可能性が高い方に保護させておく方が、このまま迎えに行って間に合わないよりもリスクが低い。
0ではないが、一方と比べれば傷付ける可能性はほとんどない。もしものために、先にエリックだって向かわせた。あいつなら、俺が来るまで可能な限り、時間を稼いでくれる。

「待っていろよ、ノア」

こんな目に、本当は一度だって遭わせたくなかった。
結局は理想だけで、思うようにはいかない。
使用人が誰1人として床に転がっていないことを願いながら、屋敷の扉を開けた。
ノアは俺が必ず迎えにいく。
必ず、この腕の中に捕えてやろう。
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