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パンデモニアへようこそ
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剣と魔法世界。
凶悪な魔物が闊歩する混沌の大地バンデモニア。
かつては、ヒューマノイドが治める大地だったが、魔界と呼ばれる北方の大陸から魔族が攻め入り、瞬く間に大陸のほとんどを占領されてしまった。
勇者や冒険者、兵士達の奮戦で、たった一つの要塞都市ユーフィリアを死守している状況であった。
その街へ、遠い異邦の島国から一人の冒険者が訪れた。
深紅の軽装に白いローブを羽織り、腰には鋭利で細身の片刃の長剣を一振だけ刺している。
舟を降り、港から街へ向かう途中、笑顔の女が3人、道を塞ぐように立っていた。
中央の女が言う。
「〝魔界〟パンデモニアへようこそ。
早速ですが、死んで頂きます」
大地から湧き出すように、グール達が溢れ出し、冒険者を取り囲んだ。
「ノスフェラトゥか……ユーフィリアは陥落したのか?」
冒険者は立ち止まり、表情を変えずに言葉を返す。
「ふふふ、まだこれからですよ。
〝イサナミ〟に介入されては困りますので先手を打たせて頂きました」
「……そうか、ならば問題ない」
冒険者は瞬時に長剣を抜きスキルをつかう。
<琥珀……>
グール達が瞬時に肉片と化した。
冒険者はゆっくりと長剣を鞘に納めた。
「なるほど、これは噂以上ですね」
ノスフェラトゥは感心しながら言う。
冒険者は無防備なまま歩みを進める。
「ほぅ、我々を侮り過ぎていますね。お仕置きが必要ですね」
「その必要はない」
左右のノスフェラトゥの首がポトリと落ちた。
冒険者は歩みを止めない。
「こ、小癪な!」
冒険者は何もないかのようにノスフェラトゥの脇を通りすぎた。
最後のノスフェラトゥの体がバラバラに崩れ落ちた。
ようやく死体から血が流れ、地面を染め始めた。
……
要塞都市の門に守衛はいなかった。
かつて守衛だった肉片と装備類が残っていただけだ。
門を通り過ぎると至る所で戦闘の気配がした。
街の中央で一際大きな気配を感じた。
冒険者が中央広場に到着すると、ヒューマノイドと魔族の一団が、弓と魔法で攻防をしていた。
ヒューマノイド側にはバリケードが築れていた。
魔族は、オーガの集団が巨大な盾で壁を作っている。
オーガの壁は少しずつ前進していた。
空からの敵はいないようだった。
結界が十分維持されているのを感じ取った。
内通者か何かを利用して、隙をついて正門から侵入したのだろう。
<月影……>
冒険者は気配を消し、魔族の一団に紛れ込んだ。
<首領は、オーガ……。ロード級か。まずは壁を崩そう>
冒険者は一団の左側に移動し、長剣を抜く。
<不知火……水底……月影……>
壁役の左半分のオーガ達の上半身と下半身が盾ごと両断された。
魔物たちは左側に注意を向けるが誰もいない。
壁役が半分消えたことで、左半分にいた魔物達が次々とヒューマノイドの遠距離攻撃の餌食になった。
冒険者は隊列の崩れた魔物の中に潜り込む。
<水嵐……>
残りの壁役とその近くにいた魔物が、ミンチになった。
ヒューマノイド達は何が起きてるか理解できなかったが、チャンスを見逃さず、集中放火を浴びせた。
とは言え、大量の魔物がいる。
壁役を失った魔物達はやけくそで突撃し始めた。
と、冒険者の気配をつかんだオーガロードが、冒険者に大剣で切りかかってくる。
「そこかぁ!」
<漁火……水底>
オーガロードの大剣が冒険者を捕らえた瞬間、冒険者の姿が掻き消える。
デコイだ。
冒険者はオーガロードの背後に立ち、長剣をふるった。
<蒼月……>
オーガロードは、辛うじて大剣で持ち堪える、凄まじい剣戟が轟いた。
周囲の魔物達も、冒険者に気づき、オーガロードと共に一斉に飛びかかった。
<十六夜の先!!!>
冒険者の半径10mほどの空間が、跡形もなく削り取られた。
<月影……水底……月影……>
冒険者は、再び気配をくらまし、ヒューマノイドのバリケードの内側へ移動した。
長剣を鞘に納めると、何事もなかったかのように、冒険者ギルドへ向かって歩いて行った。
首領を失った魔物の一団は総崩れになった。
……
冒険者は冒険者ギルドに到着すると、ギルド長の執務室に通された。
冒険者ギルドは魔物の襲来への対応で大騒ぎになっていた。
「イサナミから来たユキヒラ=キサラギだ。
一応、冒険者と言う建前で入国したが、
我々イサナミの民にはジョブやクラスといった文化はない。
強いてゆえば、〝イサナミ〟の習熟度がそれに近い。
俺は、一刃という流派の家元の一人だ。
よろしく頼む」
「ギルド長を任せられているガラテインだ。昔は勇者長をしていた。
君の噂はよく聞いている。
無理な要請に応えてもらい、とても感謝している。
先ほどオーガロードを討ち取ったお手並は誠に鮮やかだったそうだな。
冒険者登録の手続きはすでに済ませてある。
〝イサナミ使い〟として登録しておいた。
これから、よろしくたのむ」
ガラテインは、ユキヒラに冒険者証とアダマンタイト等級のネックレスを渡した。
「早速だが、依頼がある。
隣の要塞都市を根城にしている魔人の一派を潰して、要塞都市を奪還する計画がある。勇者が率いる正規兵が街に突入できるように防御結界を停止させてもらいたい」
「街を攻められている状況で、要塞都市の攻略か?」
「先ほど、増援部隊が合流したばかりだ。
敵は合流前にユーフィリアを陥落させようとしていたのだ。
これで一息つける。
反撃の開始だ」
「了解した、計画の詳細を聞かせてくれ」
凶悪な魔物が闊歩する混沌の大地バンデモニア。
かつては、ヒューマノイドが治める大地だったが、魔界と呼ばれる北方の大陸から魔族が攻め入り、瞬く間に大陸のほとんどを占領されてしまった。
勇者や冒険者、兵士達の奮戦で、たった一つの要塞都市ユーフィリアを死守している状況であった。
その街へ、遠い異邦の島国から一人の冒険者が訪れた。
深紅の軽装に白いローブを羽織り、腰には鋭利で細身の片刃の長剣を一振だけ刺している。
舟を降り、港から街へ向かう途中、笑顔の女が3人、道を塞ぐように立っていた。
中央の女が言う。
「〝魔界〟パンデモニアへようこそ。
早速ですが、死んで頂きます」
大地から湧き出すように、グール達が溢れ出し、冒険者を取り囲んだ。
「ノスフェラトゥか……ユーフィリアは陥落したのか?」
冒険者は立ち止まり、表情を変えずに言葉を返す。
「ふふふ、まだこれからですよ。
〝イサナミ〟に介入されては困りますので先手を打たせて頂きました」
「……そうか、ならば問題ない」
冒険者は瞬時に長剣を抜きスキルをつかう。
<琥珀……>
グール達が瞬時に肉片と化した。
冒険者はゆっくりと長剣を鞘に納めた。
「なるほど、これは噂以上ですね」
ノスフェラトゥは感心しながら言う。
冒険者は無防備なまま歩みを進める。
「ほぅ、我々を侮り過ぎていますね。お仕置きが必要ですね」
「その必要はない」
左右のノスフェラトゥの首がポトリと落ちた。
冒険者は歩みを止めない。
「こ、小癪な!」
冒険者は何もないかのようにノスフェラトゥの脇を通りすぎた。
最後のノスフェラトゥの体がバラバラに崩れ落ちた。
ようやく死体から血が流れ、地面を染め始めた。
……
要塞都市の門に守衛はいなかった。
かつて守衛だった肉片と装備類が残っていただけだ。
門を通り過ぎると至る所で戦闘の気配がした。
街の中央で一際大きな気配を感じた。
冒険者が中央広場に到着すると、ヒューマノイドと魔族の一団が、弓と魔法で攻防をしていた。
ヒューマノイド側にはバリケードが築れていた。
魔族は、オーガの集団が巨大な盾で壁を作っている。
オーガの壁は少しずつ前進していた。
空からの敵はいないようだった。
結界が十分維持されているのを感じ取った。
内通者か何かを利用して、隙をついて正門から侵入したのだろう。
<月影……>
冒険者は気配を消し、魔族の一団に紛れ込んだ。
<首領は、オーガ……。ロード級か。まずは壁を崩そう>
冒険者は一団の左側に移動し、長剣を抜く。
<不知火……水底……月影……>
壁役の左半分のオーガ達の上半身と下半身が盾ごと両断された。
魔物たちは左側に注意を向けるが誰もいない。
壁役が半分消えたことで、左半分にいた魔物達が次々とヒューマノイドの遠距離攻撃の餌食になった。
冒険者は隊列の崩れた魔物の中に潜り込む。
<水嵐……>
残りの壁役とその近くにいた魔物が、ミンチになった。
ヒューマノイド達は何が起きてるか理解できなかったが、チャンスを見逃さず、集中放火を浴びせた。
とは言え、大量の魔物がいる。
壁役を失った魔物達はやけくそで突撃し始めた。
と、冒険者の気配をつかんだオーガロードが、冒険者に大剣で切りかかってくる。
「そこかぁ!」
<漁火……水底>
オーガロードの大剣が冒険者を捕らえた瞬間、冒険者の姿が掻き消える。
デコイだ。
冒険者はオーガロードの背後に立ち、長剣をふるった。
<蒼月……>
オーガロードは、辛うじて大剣で持ち堪える、凄まじい剣戟が轟いた。
周囲の魔物達も、冒険者に気づき、オーガロードと共に一斉に飛びかかった。
<十六夜の先!!!>
冒険者の半径10mほどの空間が、跡形もなく削り取られた。
<月影……水底……月影……>
冒険者は、再び気配をくらまし、ヒューマノイドのバリケードの内側へ移動した。
長剣を鞘に納めると、何事もなかったかのように、冒険者ギルドへ向かって歩いて行った。
首領を失った魔物の一団は総崩れになった。
……
冒険者は冒険者ギルドに到着すると、ギルド長の執務室に通された。
冒険者ギルドは魔物の襲来への対応で大騒ぎになっていた。
「イサナミから来たユキヒラ=キサラギだ。
一応、冒険者と言う建前で入国したが、
我々イサナミの民にはジョブやクラスといった文化はない。
強いてゆえば、〝イサナミ〟の習熟度がそれに近い。
俺は、一刃という流派の家元の一人だ。
よろしく頼む」
「ギルド長を任せられているガラテインだ。昔は勇者長をしていた。
君の噂はよく聞いている。
無理な要請に応えてもらい、とても感謝している。
先ほどオーガロードを討ち取ったお手並は誠に鮮やかだったそうだな。
冒険者登録の手続きはすでに済ませてある。
〝イサナミ使い〟として登録しておいた。
これから、よろしくたのむ」
ガラテインは、ユキヒラに冒険者証とアダマンタイト等級のネックレスを渡した。
「早速だが、依頼がある。
隣の要塞都市を根城にしている魔人の一派を潰して、要塞都市を奪還する計画がある。勇者が率いる正規兵が街に突入できるように防御結界を停止させてもらいたい」
「街を攻められている状況で、要塞都市の攻略か?」
「先ほど、増援部隊が合流したばかりだ。
敵は合流前にユーフィリアを陥落させようとしていたのだ。
これで一息つける。
反撃の開始だ」
「了解した、計画の詳細を聞かせてくれ」
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