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裏切りの代償
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ユキヒラが、ユーフィリアの正門に向かうと、たくさんの兵士が街に入ってくるのが見えた。
逃げ場を失いパンデモニアから離島に離脱していた各地の港町の兵士たちだ。
散り散りになった兵士たちが、ユーフィリアに集結している最中なのだ。
ギルド長の言う通り、街を守りつつ反撃を開始するには十分な兵力だ。
とはいっても、大陸を奪い返すほどの勢力には遠く及ばない。
要塞都市を3つか4つ奪い返すのがやっと、といったところだろう。
ギルド長は、異世界からの勇者召喚に期待しているようだが、平和ボケした異世界の一般市民に異能を与えて召喚し、勇者として崇め奉ったところで、有能な戦士の代わりは務まらない。
勇者の劣悪品を量産したから、パンデモニアは今の状況にあるのだ。
劣勢になると平気で魔族に寝返り、内通者として敵を街に招き入れる手助けまでする愚か者の集団だ。
今日の戦闘で、数名の元勇者達を捕らえ、処刑したことすら忘れている。
それゆえにイサナミの本部は全面協力を断ったのだ。
現状、勇者の異能は異世界からの召喚時にしか付与できない。そんなふざけた摂理のせいで、パンデモニアは凋落した。
当初は魔界に攻め入るために、始めた戦争だったのだ。
劣悪な異世界人によって、戦況を覆されてしまったのである。
その点、魔人達は狡猾だ。
異世界人を信用しない。
利用はするが、権力は与えない。それどころか血の盟約で魂を縛る。
甘言で心を操り、本人に自覚させないまま隷属させてしまうのである。
それでもなお、寝返った元勇者達は、いまだに自分は特別だと思い込んで戦っているのだ。
……
ユキヒラは、正規兵と合流すると、馬に乗り、ユーフィリアの隣街、要塞都市ティフォーニアへ向かった。
〝魔界〟としては浅瀬のため、道中、魔物と出会うことはなかった。
代わりに、イサナミ使いを珍しがった隣にいた正規兵から質問攻めにあった。
大剣を背負う彼は、一振りの細身の長刀で敵と対峙するユキヒラの戦闘スタイルが不思議でならないそうだ。
オーガロードの大剣と撃ち合っても折れるどころか刃こぼれひとつしていないのだ。たしかに不自然なことだろう。
ユキヒラは大男に、紅の話をしてやった。
イサナミの一刃流の使い手は紅という強靭な心の刃を剣に宿すのだ。長剣は触媒に過ぎず、心が折れない限り、紅の刃は砕けないのだと。
ユキヒラ達は、ティフォーニアの近郊に到着した。
ユキヒラは正規兵達から離れると、街の防御結界を調べた。
3mほどの結界が、町全体を覆っているようだ。
すべての解除は難しいが、正門に通じる道を開けるくらいはどうにかなるだろう。
制御装置が正門付近にあるはずだからだ。
ユキヒラは結界に触れ、スキルを発動する。
<淡雪……>
スキルが浸透し、ユキヒラの体が結界を通過する。
ユキヒラは気配を消しながら街の外壁へたどり着く。
カバンから、箱を取り出し、その中に敷き詰められている黄色い砂に魔力を通すと、砂は、箱から長出だし、一枚の石板のようになって外壁に張り付いた。
ユキヒラが石板に乗ると、石板は外壁に沿って滑るように登って行った。
外壁の上には見張りが数名いたが、ユキヒラには気づかない。
ユキヒラは、黄色い砂を箱に戻し、正門の制御室へ向かう。
制御室にいた3名のオークを静かに始末すると、防御結界を解除し、正門を開き、跳ね橋を下ろした。
衛兵が数名、制御室にやってきたので、中に入ってきたところを、ミンチにした。
程なく、味方の正規兵たちが突入してきた。
制御室に味方の正規兵が数人きてくれたので、ユキヒラは持ち場を離れた。
……
ユキヒラは、気配を消しつつ、先陣を切る勇者達に合流した。
宮殿に入り、魔人のいる玉座の間に向かう途中、寝返った元勇者たちが道を塞いだ。
ユキヒラを除き、勇者達は4対4の状況になった。
何を血迷ったか、味方の勇者達は説得を試みようと話しかけはじめたので、見ていられないとばかりに、ユキヒラは、元勇者の背後に回り込み、一太刀で全員の首を切り落とした。
「なんてことを、説得できたかも知れないのに……!」
勇者の一人が、ユキヒラを非難した。
「時間がない、任務を優先しろ。できないならここで切り捨てる」
そういうとユキヒラは、勇者達に矛先をむけた。
勇者達は、ユキヒラを非難した勇者を引っ張るようにして玉座の間を目指した。
ユキヒラを非難した勇者は、まだ納得していない様子だった。
魔人の配下に落ちたヒューマノイドの洗脳を解くのは容易ではない。
説得程度でどうにかなるレベルではないのだ。
魔人達は膨大な時間と魔力を費やして、洗脳を施しているのだ。
そもそも裏切り者の末路など、知ったことではない。
仮に、生け捕りにして、時間をかけて洗脳を解いたとしても、いつかまた裏切られるだけだ。裏切り者には裏切る理由があるのだ。心のあり方の本質に問題があるのだ。それを解消するのはとても難しい。そこまでしてやる義理もない。
ユキヒラは再び気配を消すと、勇者達の後を追った。
逃げ場を失いパンデモニアから離島に離脱していた各地の港町の兵士たちだ。
散り散りになった兵士たちが、ユーフィリアに集結している最中なのだ。
ギルド長の言う通り、街を守りつつ反撃を開始するには十分な兵力だ。
とはいっても、大陸を奪い返すほどの勢力には遠く及ばない。
要塞都市を3つか4つ奪い返すのがやっと、といったところだろう。
ギルド長は、異世界からの勇者召喚に期待しているようだが、平和ボケした異世界の一般市民に異能を与えて召喚し、勇者として崇め奉ったところで、有能な戦士の代わりは務まらない。
勇者の劣悪品を量産したから、パンデモニアは今の状況にあるのだ。
劣勢になると平気で魔族に寝返り、内通者として敵を街に招き入れる手助けまでする愚か者の集団だ。
今日の戦闘で、数名の元勇者達を捕らえ、処刑したことすら忘れている。
それゆえにイサナミの本部は全面協力を断ったのだ。
現状、勇者の異能は異世界からの召喚時にしか付与できない。そんなふざけた摂理のせいで、パンデモニアは凋落した。
当初は魔界に攻め入るために、始めた戦争だったのだ。
劣悪な異世界人によって、戦況を覆されてしまったのである。
その点、魔人達は狡猾だ。
異世界人を信用しない。
利用はするが、権力は与えない。それどころか血の盟約で魂を縛る。
甘言で心を操り、本人に自覚させないまま隷属させてしまうのである。
それでもなお、寝返った元勇者達は、いまだに自分は特別だと思い込んで戦っているのだ。
……
ユキヒラは、正規兵と合流すると、馬に乗り、ユーフィリアの隣街、要塞都市ティフォーニアへ向かった。
〝魔界〟としては浅瀬のため、道中、魔物と出会うことはなかった。
代わりに、イサナミ使いを珍しがった隣にいた正規兵から質問攻めにあった。
大剣を背負う彼は、一振りの細身の長刀で敵と対峙するユキヒラの戦闘スタイルが不思議でならないそうだ。
オーガロードの大剣と撃ち合っても折れるどころか刃こぼれひとつしていないのだ。たしかに不自然なことだろう。
ユキヒラは大男に、紅の話をしてやった。
イサナミの一刃流の使い手は紅という強靭な心の刃を剣に宿すのだ。長剣は触媒に過ぎず、心が折れない限り、紅の刃は砕けないのだと。
ユキヒラ達は、ティフォーニアの近郊に到着した。
ユキヒラは正規兵達から離れると、街の防御結界を調べた。
3mほどの結界が、町全体を覆っているようだ。
すべての解除は難しいが、正門に通じる道を開けるくらいはどうにかなるだろう。
制御装置が正門付近にあるはずだからだ。
ユキヒラは結界に触れ、スキルを発動する。
<淡雪……>
スキルが浸透し、ユキヒラの体が結界を通過する。
ユキヒラは気配を消しながら街の外壁へたどり着く。
カバンから、箱を取り出し、その中に敷き詰められている黄色い砂に魔力を通すと、砂は、箱から長出だし、一枚の石板のようになって外壁に張り付いた。
ユキヒラが石板に乗ると、石板は外壁に沿って滑るように登って行った。
外壁の上には見張りが数名いたが、ユキヒラには気づかない。
ユキヒラは、黄色い砂を箱に戻し、正門の制御室へ向かう。
制御室にいた3名のオークを静かに始末すると、防御結界を解除し、正門を開き、跳ね橋を下ろした。
衛兵が数名、制御室にやってきたので、中に入ってきたところを、ミンチにした。
程なく、味方の正規兵たちが突入してきた。
制御室に味方の正規兵が数人きてくれたので、ユキヒラは持ち場を離れた。
……
ユキヒラは、気配を消しつつ、先陣を切る勇者達に合流した。
宮殿に入り、魔人のいる玉座の間に向かう途中、寝返った元勇者たちが道を塞いだ。
ユキヒラを除き、勇者達は4対4の状況になった。
何を血迷ったか、味方の勇者達は説得を試みようと話しかけはじめたので、見ていられないとばかりに、ユキヒラは、元勇者の背後に回り込み、一太刀で全員の首を切り落とした。
「なんてことを、説得できたかも知れないのに……!」
勇者の一人が、ユキヒラを非難した。
「時間がない、任務を優先しろ。できないならここで切り捨てる」
そういうとユキヒラは、勇者達に矛先をむけた。
勇者達は、ユキヒラを非難した勇者を引っ張るようにして玉座の間を目指した。
ユキヒラを非難した勇者は、まだ納得していない様子だった。
魔人の配下に落ちたヒューマノイドの洗脳を解くのは容易ではない。
説得程度でどうにかなるレベルではないのだ。
魔人達は膨大な時間と魔力を費やして、洗脳を施しているのだ。
そもそも裏切り者の末路など、知ったことではない。
仮に、生け捕りにして、時間をかけて洗脳を解いたとしても、いつかまた裏切られるだけだ。裏切り者には裏切る理由があるのだ。心のあり方の本質に問題があるのだ。それを解消するのはとても難しい。そこまでしてやる義理もない。
ユキヒラは再び気配を消すと、勇者達の後を追った。
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