ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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悪政のレヴナント

ユミルの胎動#4

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────ククリ(人狼ルガルガルダーガ種、ルーノ族・長老メトセラ、ニダヴェリール宮廷特別顧問こもん


 私達が手当てを終え、ニダヴェリールへ帰還しようと思っていたら、突然、ゼディーが現れた。

 「どうしたの? こんな浅瀬に、ゼディーみずから」

 「え?  えええ? こ、この方、世界龍オーヴァーロードさんですかっ!?」

 必要以上にルカティアが怯えるので、ゼディーは当惑したような顔をしていた。

 「あっ! も、申し遅れましたっ! わたくし、ニダヴェリールで呪詛の湖フヴェルゲルミル守人もりとを、勤めさせていただいております、ルーノ族、族長ルーインの三女、ルカティアと申します。以後お見知り置きをっ!」
 
 ルカティアは、なぜか、雪の上に正座して古風な挨拶をした。

 それを受けた、ゼディーも、ルカティアに向かって正座した。

 「ニブルヘイムのオーヴァーロード、アイオニアン=ゼディーです。こちらこそ、よろしくどーぞ。あと、堅苦しいことは嫌いなので、ゼディーと呼んでください」
 
 「ぷっ、あはははは……! なんだよ、それは!
 付き合いがいいにもほどがあるだろっ……あははは……!」

 私は、大雪原の真っ只中で、妙な光景をみせつけられ、たまらず、大笑いしてしまった。

 ゼディーは、とても付き合いの良い奴だ。
 気が遠くなるほどの期間、あのドリアン=ルークの喧嘩相手を続けているのも、なんとなく納得できる。

 ゼディーの気さくな反応に、ルカティアは心を開いたようだ。

 「ゼディーさん、良い方ですね。ククリさんは、ちょっぴり意地悪です。でも抱きつくとあったかいので許します」

 初めて体験するニブルヘイムの寒さが辛いのか、まとわり付いて離れない。

 「あぁ、気が利かなくて申し訳ないな、とりあえず、場所をかえようか。俺の宮殿まで送るよ」

 「でも、私たち、これから帰るところだけど?」

 「ロクシー(ロクリアン=ルーテシア)には、話を通しておいた。宮殿に着いたら俺の瞑想室をつかってくれ。ルカティアが寒がっているから、早くしよう」

 「うん、わかった、出迎えさせて申し訳ないな」

 「気にするな、俺がやりたくて勝手にやってるだけだ」

 私たちは、ゼディーが用意してくれた変わった乗り物に乗り込んだ。

 乗り物の中は暖房が効いていた。
 ゼディー自身に暖房など不要だが、私たちのために事前に温めておいてくれたのだ。

 「うわー、あったかーい! 生き返るー!」
 よほど寒さの限界だったのだろう、心から嬉しそうな顔をしている。
 だが、私に抱きついたままだ……。

 「宮殿へ」

 ゼディーが指示すると、その乗り物は自動的に動き出した。


 気がつくと、ルカティアは、私の膝の上で寝息をたてていた。

 実質、初めての外界任務だ。

 よほど気を使ったのだろう。
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