ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

文字の大きさ
91 / 259
ラグ=ナ=ローク

DAS RHEiNGOLD#7

しおりを挟む
────ミヅキ(アシダカ種、ルーノ族、宮廷特別顧問預り)


 休養が終わった。
 初めての世界、初めての空、初めての街、とても有意義な体験だった。

 アストレアに行った時は、最初のハーピー種、アラクネ種、アシダカ種ということで、人だかりができて、とても恥ずかしかった。
 アストレアの空は、あの日以来だったけど、とても美しくて感動した。
 
 楽しかった休養は終わってしまったけれど、またククリさんの部屋に来られるのも楽しみで仕方がなかった、またここにこられるのが嬉しかった。


「失礼します。ミヅキです」

「どうぞー。
 おかえり、その顔だと満喫してきたようだね。
 おいでー」

 ククリさんが、抱きしめてくれた。
 やっぱりこの人は暖かい。
 この温もりを感じると、帰ってきたって気持ちになれる。

「今日は座学だから、適当にお茶入れて楽にしてね。
 資料はその端末に入ってる」

「はい」

 私は自分用のカップにお茶れて、テーブルについて、端末を開いた

「間に合わないかなーとおもったけど、ようやく君の特殊言語の言語体系が完成したよ。これで私も安心して、相談係のお婆ちゃんができる。
 今日からは、各種法術の基礎理論について実践を交えながら指導するね。しっかり頭と体に叩き込んでおくんだよ。復習も忘れずに、覚えた法術式は毎日しっかり詠いなよ」

「はい、よろしくお願いします!」


 ……


 講義がひと段落して、休憩をとっていた。

「あの、質問してもよろしいでしょうか?」

「なあに?」

「私の特殊言語とアシダカの固有言語はかなり異なるようですけど、どうしてでしょうか?」

「どっちを歌ってみて気持ちが良い?」

「私の特殊言語です、すごく楽しいです」

「そういう理由。アシダカの固有言語は、今後、他のアシダカ種の標準言語になるからそれを覚えてないと、同種族のお友達ができなくなる」

「なるほど、そういう事なのですね」

「2つ覚えるのは大変?」

「いえ、両方ともすんなり入ってきます。外国語得意じゃないのにどうしてかな?」

「それは、君の母国語みたいなものだからだね。どちらもね。
 体がそういう風にできちゃってるの」

「そうなのですか、不思議な感覚です」


「気の早い話だけど、アストレアは高性能な新種族を選抜してラフィノス族に向かい入れるつもりみたいだよ?」

「アシダカ種も入ってるって事ですか?」

「確実に入るだろうね。
 特に、アシダカ種は人狼ルガルより強力な種族だから前線に配備される確率が高いだろうね」

「私も含まれているのでしょうか?」

「いや、君はルーノ族だから大丈夫。ルーノ族の戦士の一人として扱われるだろうけど、ニダヴェリールはユグドラシルほど危険な大地ではないから、外界任務でもない限り前線に配備されることはないとおもうよ」

「外界任務の可能性はありますか?」

「あるだろうね。アストレアは人手不足だから、なんだかんだで、ルーノ族が駆り出されているよ」

「ルフィリアさん、そういう話しないから全然わからなかったけど、とても大変な仕事をなされているのですね」

「うん。最近は、強い種族が台頭してきて、まともに戦っても無駄に殺されるだけなのに、ヒューマノイドたちはこぞって戦闘性能の高い種族への転生をしたがるのが、私には不思議なのだよね。
 生き残る確率の高い種族が、戦闘性能の高い種族とは限らないし、なまじ戦闘力に自信があると、それに頼って、生き延びることよりも敵を倒す方法ばかり考えるようになる。
 強力すぎる相手にとっては、都合のいい標的だよね」

「たしかにそうですね。どんなに上を目指してもどうやっても届かない相手っていますよね」

「実体験?」

「はい」

「そうか、やっぱり、君は見込みのある子だね」

「そうですか?」

「うん、これからアシダカ種は性能以上にもてはやされるだろうけど、そんなのなんの意味もないからね。それを鵜呑みにしたら自分の死期を早めるだけだよ。
 どんな時でも知覚を鋭敏にして、つねに生き延びる道を探し続けるんだ。
 是弱な生物にとってそれが最後の生命線だからね」

「この世界にきて、自分の是弱さが身にしみてわかりました。
 まわりはバケモノだらけでしたからね。
 ルカティアさんから『ヒューマノイドとしてできるだけ早く死ね』ってアドバイスされたときは、絶望しましたよ」

「ルカティアは優しい子だから、その状況では一番の選択肢だとおもったのだろうね」

「たしかに……それ以外は奴隷とか実験動物ですものね……」

「私が君に教えられることは、生きる残るために抵抗する手段だから、それ以上のことは考えちゃだめだよ? それを身につけても抗えないほど理不尽な化け物はたくさんいるからね。どんな時でも、できるだけ危険には近づかないことに徹するんだ。何をすることが一番安全かを見極めなよ。そのことは絶対に忘れちゃダメだからね」

「はい」

「じゃ、続きをしよっか?」

「よろしくお願いします」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

もしも生まれ変わるなら……〜今度こそは幸せな一生を〜

こひな
恋愛
生まれ変われたら…転生できたら…。 なんて思ったりもしていました…あの頃は。 まさかこんな人生終盤で前世を思い出すなんて!

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

処理中です...