ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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メメント

ウォークライ

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────レイフ(人狼ルガルロデリク種、殺し屋)


 突然、ククリの動きが止まった。
 まるで殺気もない。
 
「なんのつもりだ? 降参か?」

「こちらのセリフですよ、気づかないのですか?」

「つまらないブラフはやめておけ、殺しの準備はおわってる」

「えー? これじゃ、誰も殺せませんよ?」

「何を言っている、なら殺してやるよ」

 ククリは、無防備にまっすぐ歩いて来た。

「!?」
 罠が何も反応しない??

 おかしい、俺の知覚には完全に存在しているぞ。
 ククリだってデコイじゃない本物だ。

「どういうことだ? なにをやった!」
 
「哀れな方だ、志を断たれて、亡霊になってしまったみたいだ」

 どうなってる、知覚に異常はない。
 どこにも異常はない。
 なぜ、〝血の獣〟は生きている?

 無防備で近づいてくる相手に攻撃が当たらない。
 法術式も素通りする。
 幻術か?
 俺が知覚できない幻術?
 知覚に異常はまるでないぞ?
 
 くそっ、どうなってる?
 練度の低い小娘が、俺に何を仕掛けたのだ?

「気が済みました? 終わりにしてもよろしいですか?
 あなた負けですよ、〝ウル〟さん。
 元族長ルスの忘れ形見メメントさん」

 俺は、仰向けになって倒されていた。
 体は一切動かなかった。
 
「……なぜ、俺のことをしっている?」

「私、グーンデイルさんと昔馴染みなんですよ」

「……そうか。やつは元気にしているか?」

「カインに殺されました。アーグゥインさんとフォールクヴェイルさんと一緒にね」

「惜しいやつらをなくしたな。決着をつけたかったやつらはみんな死んじまったのか……。つまらねぇな」

「……はやく殺せよ」

「どうして?」

「小娘に手玉に取られるとは、俺も焼きが回ったようだ。生きている価値もない」

「殺してあげてもいいけど、その依頼は有料ですよ?」

「何が欲しい」

「私に命を預けてください」

「ならころせ、もう預けた。抵抗はしない」

「だめですよ、その前に仕事の依頼がたくさんあるのですから」

「誰を殺せばいい?」

「あなたの性根を殺してください」

「どうやって?」

「ロデリク族は、今、統一されました。代理で族長をやってください。
 これは命令です」

「俺が? 無理だ、ふざけるな。いいから殺せ!」

「私の命令です。従ってください。
 あなた以外に無法者たちの統治を任せられる方を私は知りません。
 周りのみんなもあなたの正体を知って驚いてますよ?」

 俺は、辛うじて動かせる首を動かして周囲を見渡した。
 昔、戦士たちが親父にしていたように、皆が俺に向かって、膝をつき、首を垂れている。

「今更、俺になにができる?」

「力が足りないなら、努力してください。時間はたくさんあります。
 もう、ロデリク族は鬼子ではありませんし、閉じ込める檻《おり》もなくなるのですから」

「どういうことだ?」

「あなたたちは、すでにニダヴェリールの家族なのです。
 ロクリアン=ルシーニアは、あなた達を眷属として迎い入れることにしたのです。
 なので、ウルさん、あなたの人望と能力が必要です。
 ニダヴェリールを新たな故郷にして頂けませんか?」

「おまえは何者だ? 〝血の獣〟」

「わたしはククリ、ガルダーガ族出身、ニダヴェリール宮廷正室、アースバインダー、少女の頃は『血の獣』とも呼ばれていましたね。そしてフラガ=ラ=ハの最後の弟子でもあります」

「……。お前、どんな人生歩んで来たんだ? ガルダーガ族最大の大罪人で、世界龍オーヴァーロードの正室で、アースバインダー?」

「あなたも似たようなものですよね?」

「お前ほどではないよ!
 お前はイカれすぎだ!
 本当にイカレタ小娘だなぁ、あはははははっ。

 ……。

 気に入った!
 捧げてやるよ! 俺の生命。
 好きなように使ってくれ。
 ニダヴェリールに殺戮の楽園を造ってやる!
 どうだこれで満足か?」

「はい、大満足です。これから家族として、よろしくお願いします」


 周囲の皆が立ち上がり、久しく聞くことのなかったロデリク族のウォークライを合唱していた。
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