ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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イサナミ自治区

雪のカケラ#8

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────コウメイ=アベノ(ヒューマノイド、テレーヴェ共和国 エリノア大学付属研究所 、学者)


「あー、僕、完全に殺し屋にねらわれるね……」

 最悪だ……。
 クライアントの情報すら聞き出さないで、見た途端にエージェントをミンチにしちゃったよ。イサナミなら組織ごと根絶やしにしてくれるって期待したから協力したのに。

「どーしてくれるんだよ!
 これから、どーすればいいの?
 もうどこに逃げても命狙われるよ僕。
 もしかして、ここで僕も殺して終了ってこと?
 協力したのだから助けてよ!」

 
 ユキヒラくんは、笑いながらいった。
「あはははは。コウメイ、うるさい。やっちゃたことはしかたないじゃん。
 キサ姉さん、責任取りなよ。僕じゃないからね、キサ姉さんだからね?」

 キサさんは、ばつが悪そうにいった。
「わかってるわよ、まさかホムンクルスに出くわすなんて思わなかったからつい……」
 
「ついって、それでミンチにしちゃうの? 勘弁してよー!」

 死体を漁りながら、ユキヒラくんが答えた。
「まぁまぁ、情報がないわけじゃないでしょ?」
 衣服のポケットをまさぐっていた。

「偽の身分証に決まってるよね?」
 
「どちらにしても、コウメイは運が悪すぎたね。エージェントがホムンクルスってことは、かなりやばい相手だよ」

「ホムンクルスって何?」

「見てごらん」

 ユキヒラくんが、頭蓋骨を持ち上げて、小刀で両断した
 人間の脳とはまるで違った塊が詰まっていた。

「え? なにこれ。人間じゃないの?」

「うん、ホムンクルス。人間社会に巣食う悪魔さ。決して言葉を交わしたらいけない化け物」

「僕、結構、話したけど? どうなるの?」

「コウメイは、こいつと、どれくらいの時間話をしたの?」

「データやサンプルのやりとり程度だから、最初に誘われた時に10分程度じゃないかな? あとは挨拶もダメで、目を合わしてもダメで、取引するだけ」

「少しだけ精神汚染されてるかもね……」

「精神汚染? 洗脳みたいなもの」

「うん」

「自覚ないよ?」

「君、学者だよね? 自覚のある洗脳に意味なんてないでしょ?」

「それ、かなりやばい? なおる?」

「どうかなー、キサ姉さんに責任とってもらいなよ」

 ユキヒラくん、僕の服で手についた血を拭わないでくれる?

 ユキヒラくんが、車のトランクから大きな袋を取り出して僕にわたした。

「死体詰めて、遺留品もすべて」

「え?」

「ここで死ぬ?」

「わかりました! よろこんで詰めさせていただきます!」

 後ろから、キサさんが、声をかけてきた。
「コウメイ、ごめんね。ほんとごめん。
 イサナミ自治区で保護してもらえるようにとりはからうから」

「イサナミ自治区って日常的に長い刃物を持ち歩いて、日々殺し合いをしてるところですよね?
 そんなところで、僕に生き抜けと?」

 ユキヒラくんが、大笑いした
「あははは! それ誰に聞いたの?」

「町の噂ですよ、常識でしょ?」

 キサさんがいった。
「大丈夫、この世界で最も治安のいい平穏な街だから、安心していいわよ」

「イサナミの常識って信じて大丈夫ですか?」

「うん。本当に大丈夫だから。ごめんね」

  本当に大丈夫?
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