ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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影のセカイ

影の牙#1

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────ウル(人狼ルガルロデリク種、ロデリク族・族長、ニダヴェリール宮廷顧問第二席)


 ククリめ、楽しみにしてたのに約束すっぽかしやがって。
 強制連行だな。

「ククリ、邪魔する」

「あれ? 合同長老メトセラ会ですよね? なにかありました?」

「体調が思わしくねぇんだ。休ませてもらった」

「ええええ? と、とにかく、診察します! こちらの椅子に掛けてください!」
 ククリがマジで焦ってるの初めて見たな。

「ああ、大丈夫。理由はわかってるし、処方も知ってる」

「はい?」

「とりあえず、顔貸せ、ロデリクにいく」
 俺は、ククリの手を引いて、転移ゲートに向かった。


 ……


「ウルさん、どういうことですか?」

「ここなら、誰にも見られねぇ、結界も張った、影の世界みせてくれよ」

「あ……」

「お前、約束したよな?
 約束したのはいつだっけ?」

 ククリが、土下座して謝った。
「申し訳ございません。忘れていました。許してください……」

「おまえ? それ、ほんとか?」

「ほんとですよ! 例の勅命でバタバタしちゃって完全に抜け落ちてました」

「しばらく経つよな? 完成したのか?」

「はい。だれの承認も得られませんが……。
 ルーテシアに見せたら封印しろとまでいわれました」

「俺の特性ってなんだった?」

月影つきかげです!」

刹那せつなだと物足りねーなー」

「ええ、イサナギの上限ですから」

「で、どうしてくれる?」

「ウルさんを、神聖なる殺戮の楽園へと誘わせていただけることは、至高の喜びです」

「よく言った、とりあえず、データ見せろ」

「はい」
 ククリは、とてつもなく厳重にロックがかかったデータを俺の端末に転送した。
「ウルさんの生体認証で、参照可能です」

 おれは、用意しておいた椅子に腰掛けて影の世界とやらの資料を参照した。
 ククリは、いちど宮廷に戻って、俺にお茶を用意し、俺の前で、地面の上に正座した。


 ……


「いかがでしょう?」

「お前、完全にイカれてるな」

「ありがとうございます!」

「これ、イサナギを完全に包み込んでるよな?
 中には入っていねぇけど、やり方を工夫すれば無力化できるな」

「イサナギを半球だとしたら、影の世界は対をなす半球です。まさに真裏。
 でも、さらに高次元世界で世界を再構築したら、なんかこうなってしまいました」

「これ、限界あるか? 見た感じ底なしだよな?」

「そうなのですよ、底があるのか、別のどこかに通じてさらに高次元世界がひろがるのか、まるでわかりません。もう、楽しくてしかたなくて、他のことをすっかり忘れて、皆から叱られまくっています」

「俺との約束の時期にここに到達してたのか?」

「はい、まさにその時には入り口いて、没頭してましたね」

「許す!」

「ありがとうがございます!」

「おまえ、上位種族はどこまで喰える?」

「アシダカ、アラクネは団体でも余裕だとおもいます。ヴェルキエーレは今のメンバーだったら、一対一の騙し討ちありなら、下位4名くらいはいけるかもですね。第一世代の3人は優秀すぎて即死でしょうけど」

「封印指定されるわけだな」

「はい。完全言語でもレベルが低ければ解体どころか動的に改変できちゃいますからね。むき出しの精霊術式の回路におかしなループを仕込んだら、出力が膨大なので、簡単に破壊できちゃいますよ。肉体の性能はルガルの方が上ですから、倒せる可能性が出てきちゃいました。ルーテシアとゼディーは、必死で対応策を検討中です。いまは最優先でその協力をさせられています。ルシーニアにはめちゃめちゃ叱られました。全て最高レベルの秘匿条項です」

「うむ、よろしい。ルカやミユキたちにも内緒か?」

「半球だけで止めておきました。バレるとやばいので本人たちにはそれが限界だと信じ込ませています」

「まぁ、そうだろうな。でも、半球だけでもすでに化け物だろう」

「ええ、なので二人には、いかにばれないように手加減するかを習得させています」

「あははは。出来栄えは?」

「かなり優秀ですね。エリューデイルにもばれませんでした」

「そりゃすげー」

一刃ひとはを騙すのは簡単ですからね。でも防戦に入られると普通は手が出ませんから、手出しできたらバレるので絶対に手を出さないよう厳重注意しておきました」

「たしかにそうだな。俺も気を付けねぇとな」

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