ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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欠格者#6

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────エキドナ(人狼ルガルアルデバドス種、アストレア元老院議官、アースバインダー)


 たぶん、ヒルデブラント達が頑張ってくれたおかげで、今の立場が維持されたのだろう。
 少数派のアルデバドスには異例の議席数だ。
 他の種族なんて1議席しかないのだ。

 しかも最高議会の殆どがアルデバドスだ。

 でも、そのことが皆には伝わらない。

 温厚なヒルデブラントが最後の長老メトセラ会で、皆の怒鳴りつけた時は、彼の悔しさが伝わってきた。
 あれはアストレアにではない、アルデバドスのアースバインダーの不甲斐なさへの悔しさだ。
 そして、グーンデイルへ顔向けできないことの悔しさだ。


 宮殿を散歩していたら、メイリンが変な測定器を持って、ニヤニヤしながらあるいていた。
 あの娘、かなりの変人だから、ちょっと苦手なのよね。
 なぜかブンリュンヒルデと仲良いし。
 この前なんか、二人で、元16席のグードルーンをつかまえてキスしてたしね。

 やばっ、目があっちゃた。

「あ、エキドナ! ここで何してるの?」

「何って、こっちがききたいわよ!」

「ああ、これ?」

「なにそれ?」

「ルガル版の欠格者判定装置」

「えええ? そんなのあったの?」

「ククリの自信作」

「ククリが作ったの? それあてになるの?」

「失礼な。ククリは優秀だよ、そうだ、エキドナも判定してあげる」

「え? 嫌だよ。それ本当に正しいの?」

「ゼディーとルークのお墨付き」

 装置の裏に、「セディー」「ルーク」と下手くそな字で落書きされていた。
 あきらかに、怪しい。

「絶対怪しいよそれ。ククリにだまされてない?」

「ククリの気流はとても美しかったから、問題なかったよ」

「気流ってイサなんとか?」

「イサナギ」

「それ体操でしょ? あてになるの?」

「エキドナは人生の半分以上を損してるよ」

「そんなに面白いの? ブリュンヒルデもかなりハマってるよね?」

「うん。すばらしい。エキドナもやるといいよ。私が手取り足取り指南しようか?」

「変なことされるから嫌」

「しないってば、体触ったりキスしたりするだけ。同性だから問題ない!」

「……。で、その装置、メイリンは、もちろんNGだったんだよね?」

「え? なんで?」

「セクハラ魔でしょ! ブリュンヒルデよりひどいよ?」

「失礼な! 誇り高きスキンシップ魔だよ! 変質者と一緒にしないでよ!」

「同じでしょ? で、結果はどうだったの?」

「私は問題なし」

「じゃ、それあてにならない、偽物ね」

「ひどいなー。エキドナを判定すればわかる」

「やめてよ、変な光線とか出ない?」

「だいじょうぶ、痛いのは最初だけ」

「えええ? 痛いの?」

「冗談。簡単に済む。ほら。問題なし」

「それ、NGだったひといるの?」

「まだいない」

「NG判定、出ないんじゃない?」

「NG判定出そうな人知ってる? その人で試そう」

「シンリック=メイリン=ミルファ」

「……。私は問題ないってば」

「じゃ、偽物確定」

「仕方ないな、範囲を広げてみよう」

「そんなことできるの?」

「うん、方向が表示されるから、追いかけてみればわかるね。
 あ、反応してる、あっちだ!」

「ほんとにそれ信用できるの?」

 気になったのでついていった。

「遠いみたいだね。全然近くならない」

「偽物だって、あきらめなよ」

「そんなことないって、ルーテシアが発注したんだよ?」

「ほんと?」

「うん。それで試してくるように言われたの。
 あ、広く設定しすぎてた、少し絞ろう、お、近くにいるかも?
 こっちだ!」

「ねえ? 相手逃げ回ってるよね?」

「うーん。ククリにキスしに行くついてに、確認してみよう」

「あ。わたしも同行していい?」

「キスしてほしいの? 早く行ってよ」

「ちがうわよ! ゲート通れないからメイリンが許可出して」

「なにかしでかしたの? セクハラ?」

「それ、あなたでしょ?」

「まぁ、いっか、一緒に行こう。はぐれないように手をつないでね」

「私に触らないでよ! セクハラ魔」



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