ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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アマテラス

QUARTETTO#4

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────アカネ(アシダカ種、ニダヴェリール宮廷特務機関)


 ククリさんに気に入られたらしい。
 早速、ユキナがねている。


 最近のククリさんは、やけにアシダカの影の領域にこだわっている。

 一刃ひとはのミヅキは刹那せつなから裏の世界に突破するしかないが、現状それを成し遂げた一刃ひとは使いは、過去どの種族にも一人もいないそうだ。
 実現できたのは月詠つくよみのメイリンさん、ただ一人らしい。

 ミヅキは、メイリンさんのアドバスを元にストイックに修練を続けているそうだ。
 カツラとユキナは、ミヅキのストイックさに驚愕していたらしい。
 ミヅキのくれないは、カツラですら遠く及ばないほど、美しく、堅牢なのだろう。


 私の準備が整ったので、ようやく獣道への誘導がはじまった。
 上位種族は、ククリさん一人ではできないため、ククリさんが補佐しながらファルシオンが担当することになった。
 ファルシオン自身は獣道のケの字も未体験らしい。
 ……私、死ぬのかな?

 ククリさんの執務室は完全に人払いされ、結界まで張られた。
 端末通信も完全に遮断されている。

 ククリさんの知覚を補うため、かなりの数の観測装置が並べられていた。

 手術台にでも載せられる気分だ。


「ククリさん、ほんとうに大丈夫?」

「うん。ルシオーヌは、私とミユキを実験台に何度も練習したからね。
 アシダカは初めてだけど。あははは」

 あははは、って……。

 機材に紛れて置いてある救命装置がかなりきになる。

「ルシオーヌ、アカネの命を預かる心の準備はいい?」

「う、うん、がmありはff……」

「あはは、大丈夫そうだね。ささっと終わらせちゃおう」

 ちょっと、ファルシオン、明らかに緊張してるじゃない!

刹那せつなは後回しで、無名相むみょうそうに進んでみよう」

 えー、無名相むみょうそうって、ちょっと勘弁してよ……。

「こう? こんな感じ?」

「ちょっとやばいね。危険域だ、すぐ戻して」

 あれ? 私、気をうしなってた? なにがあったの?
 いつのまにか、救命装置の蓋が開いてる……。

「かなり複雑になってるね。
 できるかわからないけど、私がやってみるね、ルシオーヌはサポートして」

「わかった」

 気流の状態が異常なほど変化してゆくのがわかる。
 獣道の中あるいてる。
 ヒューマノイドの時にユキナの実験台にされたときと似てる。
 
「ここまではミユキとあまり変わらない感じだけど、この先がまるで違うね。さっきと逆にいってみよう」

「わかった」

「あー、さらに複雑になってるね。これはすごい。
 まるでわからないね。直感でいってみよう」

 ……。

「ここじゃないな……。ルシオーヌ、さっきの位置に戻してくれる?
 ……OK。
 あー、こっちか、なるほど、なんとなくわかってきた。
 高次元化すると、こんな感じに変化するんだね。
 アラクネの時より変化の度合いがまるで違う」

「すごいね、スイスイ進んでる。なんでわかるの?」
 ファルシオンが驚いてる。

「こればかりは経験と勘だろうね」

「そっち、道あるの?」

「うん、分かりづらいけどこっちの方向じゃないと不自然だから」

「そうやって、試しながら進むのか、コツがつかめてきた」

「あとはできそう?」

「やってみる」

「さすがだね、もうアシダカの獣道の特性を掴んだみたいだね」

「ククリさんのやり方を見られたおかげだよ」

「あれ? 道はまちがえてないと思うけど、変な方向に進んでない?」

「でも、こっちだよね?」

「うん。とりあえず、進めてみよう」

 完全に、遊ばれている気がする……。



「ククリさん、これゴールがまるで見えないよ?」

「そんなことないよ、ほら、今まで進んできた獣道、
 高次元空間でマッピングして見た」

「おおー、綺麗な感じにまとまってる。でもゴールはまだ先だね」

「気長に頑張るしかないね」


 ……


「どうかな? そろそろじゃない?」

「境界面は気をつけてね」

「うん。そっと注意深くだね……」

「……着いたね。おつかれさま」

「長かったー」
 
 急に体の自由が奪われる感覚に陥った。
 無名相むみょうそうってこんなひどい状態なの?
 ユキナにヒューマノイドの無名相むみょうそうを体験させられた時よりひどい。

「アカネ、しっかり顕流けんりゅうして、状況を細かく教えてくれる?」

「ひどいけど、ヒューマノイドの無名相むみょうそうとは別の感覚が強くあります」

「その感覚を教えてくれる?」

「うまく表現できない」

「じゃ、今の状態で私を顕流けんりゅうして見て。いろいろ状態を変化させるからその都度答えてね」

「はい」

 無名相むみょうそうから見える、ククリさんの気流の状態をできるだけ詳細に説明した。
 そのほかにもたくさんの検査をおこなった。
 ようやく月影つきかげに帰還させてもらえたときには日付が変わっていた。

「おつかれさま。おかげで、良いデータがとれたよ。
 明日も朝早いけどよろしくね」

「おつかれさまでした」

 明日もこれやるのか……。
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