イン・テネブリス・パルパンド

キクイチ

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魂のメメント・モリ

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 王都の防衛に成功したと言っても、その代償は決して少なくはなかった。

 遊牧民族の北上によって、通り道となった街はもれなく壊滅状態になっていたのだ。
 また、貴重な武器や兵糧なども大量に流出してしまっていた。

 中立地帯であるシャマールの民との関係も、多少は改善されたものの依然として悪化したままだ。
 名目上は、シャマールの都市国家とサキュバス勢力が反魔王軍の立場を明確にしたことで、中立地帯ではなくなり、王国側の勢力の一つに加わったのだが、自慢の戦士達を壊滅させられた遊牧民族は、王国に対して懐疑的な姿勢を崩さなかった。

 唯一の救いは、魔王軍との前線を維持できたことと、シャマールの民にεイプシロンの名が知れ渡ったことで、民から冒険者ギルドが支持され、オアシスの都市国家に冒険者ギルドの窓口が設置されたことだ。冒険者達の活躍の場が拡がったのだ。

 今回の最大の功労者は、古戦場の亡者達だ。
 彼らがいたおかげで、王国の被害は大幅に食止められらのである。

 国王は、感謝を込めて、最初の王の玉座のある城の跡地をきれいに整備し直させた。勇者の修練場と呼ぶにふさわしい立派な施設に生まれ変わったのだ。
 ローウェン卿とリーウェイ卿はとても喜んでいた。
 
 移動民族ロマのサキュバスの姉妹達は、以前は部族間で反目しあっていたが、今回のことで協力体制を強化することになった。ιイオタを窓口にして、王国にコネのあるεイプシロンに相談ができるようになっている。


 ……


 日が沈み、闇のとばりに包まれた魔界の城塞都市ネルバ。
 サキュバス・クイーン『エウロパ』の居城だ。

 化物だらけの街道を、純白のユニコーンを駆る、一人のサキュバスがいた。

 サキュバスの風貌は純白そのものだった。

 純白の鎧とフェイスヴェールを身に纏い、さらには純白のフード付きのマントを羽織っている。


 サキュバスはネルバの酒場前にユニコーンを止めると、酒場に入って行った。

 酒場にはたくさんのサキュバス、オーク、リザードマンなどがおり、大繁盛していた。

「水を頼む」
 サキュバスはカウンターに革製の水筒を二袋と、銅貨を置いた。

 サキュバスの店主は、上機嫌に水筒を取った。
「姉さん、見かけないサキュバスだね。どのクイーンの配下だい?」

「うーん……スピカってところかな?」

「歯切れが悪いね、左遷でもされたの?」

「まぁ、そんな感じ」

「じゃ、いまは何やってるの?」

「サキュバスハンター」

「あはは、面白い冗談だね。あのεイプシロンの真似かい?
 内緒だけど、うちの店でも結構人気あるんだよ。
 下級サキュバスの身で、小うるさいクイーン達を追い詰めたって話だしね。
 最近はあまり噂を聞かないけど、何やってるんだろうね。
 はい、どうぞ、お水だよ」

「ありがとう。たすかる。
 内緒だけど、εイプシロンは、穏健派の依頼で強硬派のクイーンを狩ってるって噂だよ」

「へぇ、本当に?
 冗談にしては面白い話だ。
 外界で戦争なんかするより内政に力を入れて欲しいよ。
 ここはクイーンがいるから栄えてるけど、辺境の町はかなりすたれちゃってるからね。
 まぁ、とりあえず、旅を楽しみなよ」

「邪魔したね。それじゃ」
 サキュバスは水筒を受け取ると、酒場から出て行った。
 
 突然、酒場の外で大声が轟いた。

「燃え上がれ俺のカルペ・ディエム!
 顕現、εイプシロン!」

 酒場の外が白く輝いた。

 慌てて店を飛び出した店主と客達は絶句した。

 そこには黒こげになった、武装したアーク・サキュバスが3人倒れていたのだ。

「まさか本物……!?」
 店主は驚きながら言った。


 
 その日、城塞都市ネルバのサキュバス・クイーン・エウロパは、彼女の居室で何者かの手により討伐された。

 彼女の居室からは浄化の呪文の詠唱が聞こえたらしい。

 「咲き誇れ、魂のメメント・モリ!
  ヴァニタス・ヴァニタートゥム!!!」

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