21 / 55
展開②
しおりを挟む
「あぁ、昔何かの本で読んだんだが、サッカーの試合中に、ゴールめがけてドリブルをしていた選手が、アタックして来た相手選手とぶつかって転倒、頭を強打した。しかしすぐに立ち上がり、こぼれたボールを再びドリブルしてシュートした。見事にシュートを決めた途端に、その場に崩れ落ちた。選手は既に死んでいた。後で分かったことは、選手は転倒した時点で即死していたそうだ」
「ということは、死体が走ったということですか?」
「あぁ、死体ではあるが、意思がある死体だったわけだ」
「どういうことです?」
「つまり、シュートしようとする意思、まぁ電気信号みたいなものかな?それは脳から発信されて、身体にあった。上の脳は転倒の打撃で死んだんだが、信号はまだ使命を果たしていなかったから、これからしようとしていたことを果たしたってことかな?つまり身体は、意志を果たすまで生きていたということだろう」
「まるで脳の分離ですね」
「似たような現象としては、斬首された生首が一瞬瞬いたとか喋ったとか、戦場で銃撃を受け、吹き飛んだ自分の腕を拾って、当たり前のように持って進撃を続けた兵士がいたとか、そんなのがある」
「戦争のは、なんか映画で観たことがありますね」
「まぁそういう、自意識を外れた所で体が動く現象を自動人間というらしいよ。
【止血】とか【鎮痛】とかいう単語は、川原が生きながら気合で太腿に刃物をねじ込んだか、死んでから意思の力でねじ込んだかのいずれかを連想させるんだ」
「確かにそれならば可能かも知れませんね」
「彼はずいぶん【思い込み】に執着していたから、気合で気流や血流をコントロールしたのかも知れないな」
「後藤さん、お見事です。川原の記述はこうなんですよ」
「ん?」
【私は生きながら刃(やいば)で肉を掘る。私が途中で死んでも、刃は収まる場所へ進むのだ】
「そしてその先の棒線への記述は…」
【自分の気流を制御し、自分の体内から出し、今、自分の隣にいる者、それは物質化した霊魂であり、私の生霊でもある。私はその存在に「刺朗(しろう)」という名を付けた】
「つまり川原は自分の分身を作ろうとしたということか?」
後藤は聞いた。
「そうでしょうね。そしてそれがもし、成功していたら、表現がややこしいですが、川原は気力で気流をコントロールし、その気流に自分を殺させたという解釈になりますね」
「自分の生霊に自分を殺させる…つまり半自殺、半他殺か…」
「犯人の痕跡がないのは、犯人自身が気体だったからかも知れません」
「しかしだ、一体川原はなんのためにそのようなことをする必要があったんだ?
自殺ならもっと、すっきりした方法があったろう。結果は同じなんだから」
(それに、あの現象の目的も分からない)
後藤は、疑問が解決する度に、より難解な疑問に襲われていた。
「ということは、死体が走ったということですか?」
「あぁ、死体ではあるが、意思がある死体だったわけだ」
「どういうことです?」
「つまり、シュートしようとする意思、まぁ電気信号みたいなものかな?それは脳から発信されて、身体にあった。上の脳は転倒の打撃で死んだんだが、信号はまだ使命を果たしていなかったから、これからしようとしていたことを果たしたってことかな?つまり身体は、意志を果たすまで生きていたということだろう」
「まるで脳の分離ですね」
「似たような現象としては、斬首された生首が一瞬瞬いたとか喋ったとか、戦場で銃撃を受け、吹き飛んだ自分の腕を拾って、当たり前のように持って進撃を続けた兵士がいたとか、そんなのがある」
「戦争のは、なんか映画で観たことがありますね」
「まぁそういう、自意識を外れた所で体が動く現象を自動人間というらしいよ。
【止血】とか【鎮痛】とかいう単語は、川原が生きながら気合で太腿に刃物をねじ込んだか、死んでから意思の力でねじ込んだかのいずれかを連想させるんだ」
「確かにそれならば可能かも知れませんね」
「彼はずいぶん【思い込み】に執着していたから、気合で気流や血流をコントロールしたのかも知れないな」
「後藤さん、お見事です。川原の記述はこうなんですよ」
「ん?」
【私は生きながら刃(やいば)で肉を掘る。私が途中で死んでも、刃は収まる場所へ進むのだ】
「そしてその先の棒線への記述は…」
【自分の気流を制御し、自分の体内から出し、今、自分の隣にいる者、それは物質化した霊魂であり、私の生霊でもある。私はその存在に「刺朗(しろう)」という名を付けた】
「つまり川原は自分の分身を作ろうとしたということか?」
後藤は聞いた。
「そうでしょうね。そしてそれがもし、成功していたら、表現がややこしいですが、川原は気力で気流をコントロールし、その気流に自分を殺させたという解釈になりますね」
「自分の生霊に自分を殺させる…つまり半自殺、半他殺か…」
「犯人の痕跡がないのは、犯人自身が気体だったからかも知れません」
「しかしだ、一体川原はなんのためにそのようなことをする必要があったんだ?
自殺ならもっと、すっきりした方法があったろう。結果は同じなんだから」
(それに、あの現象の目的も分からない)
後藤は、疑問が解決する度に、より難解な疑問に襲われていた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる